軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

37.フェニックスの結界

俺はフェニックスホーンをまじまじと見つめた。

そして、クリスに聞いた。

「これはどういう効果があるんだ? 神具っていうからにはすごい効果があるんだよな」

『うむ、人間どもが泣いて喜ぶほどのものだ』

「へえ」

『それをすりつぶして体内に取り込むといい』

「食べろって事か?」

『うむ』

俺は驚き、目を見開いて首をかしげた。

神具と聞いて、「使う」か「身につける」を想定していたけど、まさか食べろって言われるとは思いもしなかった。

『その通り。くはははは、一本丸ごと行かねば効果は無いぞ』

「何がどうなるんだ?」

『不死になる』

「なに!?」

『厳密には、一回分の死を帳消しにするというのが現象としては正しいな』

「……フェニックス」

俺はそうつぶやいた。

なるほど、と思った。

神の子、フェニックス種。

死んでも炎の中から復活する種の特性。

その特性から来る特殊能力ってわけだ。

「……」

俺は持っているフェニックスホーンをじっと見つめた。

『安心しろ、見た目はこれでも味は相当のものだ。珍味レベルではあるがな』

クリスはそう言って、また「くはは」と笑った。

「ああ、そうじゃないんだ。別に味とか、見た目がグロいから食べられない、とかそういうことじゃないんだ」

『うむ? ではなんだ』

「これ、一つしかないんだよな」

『うむ』

「一本丸ごといかないとダメなんだよな」

『その通りだ』

「クリスはいらないとしても、四本は欲しいな、って」

ルイーズにコレット、エマにユーイ。

四本は欲しいよなあ……。

『……ぐわーはっははははは』

クリスは天井を仰いで、大笑いした。

いつにない馬鹿でかい声で大笑いした。

あまりの声に、天井が一部崩れてきた!!

「ちょ、ちょっとクリス! 押さえろ押さえろ」

『くははははは、すまんすまん。あまりにも愉快だったのでな』

「なにが?」

『いや、そこはさすが我が心友ってところか。ドラゴン・ファーストは伊達ではないというわけだな』

「はあ……いや、今までもそうだっただろ?」

何を今さら、って感じだった。

俺がルイーズらドラゴンのほうを優先するのは今に始まったことじゃない。

クリスもそれを見て来てるはずだ。

『うむ、そうであるな。しかし「不死」を目の前にしてそれが出来る人間がいようとは思いもしなかったぞ』

「ああ、そうかもなあ……」

なんとなく、クリスの言うとおりだと思った。

フェニックスホーン。

これとともに、クリスは多くの不死や永遠の命を追い求める人間を見て来ただろうな、ってことか。

『おもしろいものを見せてもらったわ』

「そりゃどうも」

『楽しませてもらった礼だ、心友のわがままを叶えてやろう』

「わがままって」

俺は微苦笑したが、直後、表情が一瞬で変わってしまう。

なんと、クリスが自分の前足を口で噛んで――そのまま前足を引きちぎったのだ。

「なっ! 何をする!」

『くはははは、案ずるな。我は不死、この程度怪我の内にも入らん』

クリスが愉快そうに笑った直後、引きちぎった前足の断面が燃え上がった。

再生の炎に包まれて、前足が一瞬で再生した。

さすがフェニックス種――って所か。

『心友よ、そっちを我に貸せ』

「え? ああ」

俺は言われたとおりに、フェニックスホーンをクリスにさしだした。

クリスは自分の引きちぎった前足、そしてフェニックスホーンを前足の二本――人間で言うところの両手で持った。

そして――光が溢れる。

光が左右に持っているものから溢れて、やがてそれは一つになった。

光が収まった後、クリスの手の中にあるのは「一本」の角だった。

白く光り輝く、フェニックスホーン。

「これは……」

『名前はない……が、人間どものセンスに照らせば、真・フェニックスホーンといった所か』

「真……」

どういう事だ? と俺はますます首をかしげたのだった。

ボワルセル郊外、元荘園の、新しい本拠の敷地内。

竜舎と家がほとんどできあがっているそこで、俺はクリスと二人で向き合った。

「どうすればいいんだ?」

『うむ、ここが中央だから、ここにそれを突き刺すといい』

「はあ……」

やっぱりよく分からないけど、俺は言われたとおりにした。

クリスが言う「中央」に、渡された白く輝く……真・フェニックスホーンを地面に突き立てた。

突き立てたあと、手を離して距離を取る。

「で?」

『くはははは、すぐに分かる』

クリスがそういったから、俺は黙って、様子を見守った。

しばらくすると――変化が起きた。

真・フェニックスホーンがまた光を放ちだした。

顔をそむけ、目を覆う程のまばゆい光。

光は数十秒間続いた。

それが収まった後、俺は恐る恐る目を開けた。

すると――フェニックスホーンを突き立てたそこに、巨大な円柱ができていた。

円柱は炎。

「こ、これは?」

『名前はない。人間どものセンスでは――極・フェニックスホーンというところか』

「いやそういうのはいいから」

さすがにつっこんだ。

ここでつっこまないと際限なくバリエーションが増えて、最終的にとんでもないことになりそうだ。

「これでどうなるんだ?」

『うむ、心友の望み通りだ』

「俺の?」

『この拠点の中にいる限り、心友配下の竜は死なぬ』

「本当か!?」

『くははははは。うむ、危なくなったら引きこもるようあいつらに言っておくといい』

「それはすごいな……ありがとうな、クリス」

『くはははは』

クリスはまた天を仰いで笑った。

さっきよりも更に楽しげだったが、今度は屋外だったから天井が落ちてくることはなかった。

俺は円柱を見あげた。

フェニックス種の力、神具の更に進化したもの。

それで、ここにいる仲間のドラゴンたちを守ることが出来る。

いざとなるときに、ここにいれば命の危険は無い。

つまり本拠地では絶対に死なないということ。

新たに手に入れた本拠、そして本拠についた力。

「無敵」の力。

この力が、俺とドラゴンたち。

ドラゴン・ファーストを、更に飛躍させる力になるのだった。