軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それは、その一瞬でしかなくて-6

その時ペスの視界に、数十体の変異体に囲まれて追いかけられるラストリボルトの姿が映る。

過去の人類の知性を身につけた敵も馬鹿ではなく、真っ先に倒さなければならない敵を理解しているのだろう。それをすぐさま察したペスは、ウルガと同じように小隕石を蹴りつけて反動をつけると、ラストリボルトの加勢をし始めた。

『っと、助かったよ、ありがとうペスっち!』

油機の感謝の言葉を聞いて、ペスは変異体を蹴り飛ばしながら親指を立てる。

ペスの加勢によって余裕が生まれた油機は、すぐさま標準的な片手剣を取り出して、片端から近くにいる敵を斬り倒し始めた。

ラストリボルトの中で、油機の背後に座っているメリーもペスの加勢で少しだけ安堵する。

『おいおいしっかりしろよ? お前がしくじったら私まで死ぬんだからな?』

ラストリボルトの操縦自体は油機に任せているため、メリーは少し不安になりながらも敵に照準を合わせて引き金を引いた。

『おお…………おおお! 妾でもばっさばさ倒せるぞ! ミリタリアの近く限定じゃけど』

油機たちから少し離れた場所では、フラウとピッタ、ミリタリア、シモンとそれぞれのラストスタンドが、お互いを守り合うように戦っていた。

『フラウ姉……あまり無茶しないで欲しいです。庇いきれないです』

『う、うるさいわ! お主は操作してないからわからんのだろうが、ラストスタンドの操作は難しいのだぞ!』

『誰でも扱える設計って…………バルじいが言ってたです』

『う、うるさいうるさい!』

敵の位置や実力を把握しきれていないのか、闇雲に突っ込んで大胆に攻撃を仕掛けるフラウに、ピッタが不安そうな顔を浮かべる。

『……フラウ様は私と王の傍を離れないよう、お気を付けください』

『う、うむ……わかっておる!』

ピッタが抱く不安と同じく、誤って身体能力低下のスキルの効果が及ばない位置に突っ込んでしまわないか心配で、ミリタリアも念を押した。

しかし、念を押されて身体が硬直したのかフラウとピッタの搭乗するラストスタンドの動きが鈍くなる。その隙を三体の変異体がついて、一気に接近し始めた。

だが、その三体の変異体は、いち早く気付いていたアリスの爆破魔法によって駆除される。

「反省はいいけど……手は止めちゃ駄目だよフラウさん! ピッタちゃんも乗ってるんだから気を付けてね!」

『アリスお姉! 助かりました……です!』

「ううん、仲間なんだから当然だよ。ピッタちゃんはボクが守るから安心してね」

そして、いつもの優しいはにかんだ笑顔を浮かべながら、アリスは親指を立てた。

だが、返事をしている一瞬をついて、アリスの身体にデミス細胞が纏わりつき、左右から変異体が襲いかかる。

「そうおっしゃるアリス様も、手を止めてはなりませんよ。こちらは生身なのですから」

だがすぐさま、エステラーが魔法ではなく魔力を帯びさせた手刀でアリスに襲いかかったデミス細胞の核と、変異体を素早く切り裂いた。

「とかいうエステラーさんも、危ないところでしたよ……」

直後、ティナの声が聞こえると共にエステラーの背中に衝撃が走る。

何事かとすぐに確認すると、変異体が手を突き出して内蔵を抉り出そうと攻撃を仕掛けていたのだ。

ティナのスキルによって守られたことをすぐに理解すると、エステラーは再び変異体を切り裂いて「すまない、助かった」と感謝を述べた。

「ところで……お前は大丈夫なのか? 顔色が悪いが……もうへばったのか?」

ディルベルトの背中に乗るティナの顔がどこか浮かず、エステラーは心配して声をかける。

ティナは「いえ……まだまだいけますよ」と、全然いけなさそうに返事をすると、目の前のディルベルトに視線を向けた。

ディルベルトは消耗の激しい「エクゾチックフルバースト」の使いどころを考えながら接近戦を主体に戦い、敵に攻撃を加える度に「ん~あっは、んふ~!」と謎の声を上げている。

「私の今の心境聞きたいですか?」

「いや、やめておこう」

むしろ気にする方が酷だと、エステラーはティナから視線を外すと再び敵の対処に向かう。

「おっと? ティナ君、どうやら来たみたいだよ! 準備はいいかい?」

そうこう言っている間に、ミリタリアの能力が厄介と判断したのか、百体くらいはいるだろう変異体が一同の周囲を取り囲み、手あたり次第に攻撃を仕掛けてきた。

だが、ティナのスキルの力によって、ダメージはほとんど通らず、余力のできた各々は自力で周囲の変異体を薙ぎ倒していく。ディルベルトも、ティナがスキルの発動をしているのをいいことに、自分自身の周囲に爆破魔法を放って変異体たちを吹き飛ばした。

爆破魔法によって引き起こされた爆炎が沈まると、そこには何故か筋肉を主張するポーズを決めるディルベルトと、げんなりした顔のティナの姿が現れる。

「ビックリしたぁ! でもボコボコにされたけど、ティナさんのおかげで全然痛くなかったよ!」

「それは……良かったですね」

すかさず守ってくれたことにアリスが感謝を述べるが、ティナからの返事は薄い。

ふと「いつも筋肉質な人の背中にいるよね」と言葉が出かかるが、ぐっとこらえてアリスは再び戦いに身を投じた。

『ティナちゃんの力を借りずに全部避けきったあたし……凄くないメリーちゃん⁉』

『いや、ライアンが作ったこの機体のおかげだろう。つまりライアンが凄い』

『酷くない⁉』

唯一ラストリボルトだけは、ティナのスキルに頼らず百体にも及ぶ変異体の襲来をとっつかれずに捌ききっていた。その動きにティナも「私のスキルが間に合わない時もあるかもしれません。自分で避けられるならそれにこしたことはないです」と称賛する。

油機も、メリーには褒められなかったがティナに褒められたことで満足すると、再び星の数ほどいる敵の下へと向かい、ラストリボルトの機動性を活かして素早く斬りつけていく。

「人の王よ、その機体を通じて技を使うことはできるのか?」

その時、一人別の場所で奮闘していた魔王が接近し、シモンの乗るラストスタンドの頭部へと降り立って問いかける。

『何故そんなことを聞く?』

「デミス細胞とやらの核は、魔法だと潰しにくい……私に力を貸せ」

『……いいだろう』

意図を理解したのか、シモンはラストスタンドがもつ巨大な剣、エッケザックスを腰元へと構えて待機する。すると、魔王は目の前に大きな魔法陣を生成させた。

理解したのか、説明されるまでもなくシモンはエッケザックスで魔法陣を斬りつける。すると、斬撃によって生成されたエネルギーが魔力によって形となり、網目状の斬撃となって前方へと直進した。

『……魔王よ、やりすぎではないか? 仲間に当たったらどうする?』

「それくらいは見ている、もっと私を信用しろ」

デスペラード。それは、触れた者全てを切り裂く無法の技。

デスペラードの軌道上にいたデミス細胞たちは、液体状の身体を核毎切り裂かれ、次々に絶命していく。無論、デミス細胞だけではなく、変異体と触手までもが細切れとなって息絶えた。

『いいぞ! 確実に数を減らせている……とは言っても、無限湧きに近い敵だが、こちらの被害は限りなく少ない、消耗も少なく済んでいる……この調子でいけば!』

状況は、想像していたよりも圧倒的に優勢だった。

敵の数は多くとも、それを圧倒するだけの攻撃手段、そして防御手段を兼ね揃えているからだ。

変異体が徒党を組んで襲いかかろうが、一度に戦闘を行える数は限られている。となれば、お互いを守り合う形で背中合わせに戦えば、一方的に攻撃を受けることもなく対処可能。

『エクゾチックフルバースト』を使われても、それに対抗する手段も存在する。あとはどれだけの時間、耐えられるかが問題、そう考え始めた矢先――

『モンスター……だと』

デミスの体内から新たな戦力が現れる。

それは、アースクリアの出身者であれば見慣れた存在。それは、これまで戦ってきた人の形をした紫色の変異体とも違う、人間ではなく、様々な生き物を媒体にした化け物たち。

『モンスター退治ならお手の物だよ! アースクリアでどれだけ倒してきたと思ってるの!』

無論、そのモンスターを討伐して強くなった者たちが、今更その相手を恐れるわけがなく、ラストリボルトを筆頭に、攻撃を仕掛けようとする。

『待て!』

だが、言いようのない嫌な予感を感じ取り、セイジは咄嗟に静止をかけた。

その直後、ラストリボルトのすぐ真横を魔力弾よりも早く、高い熱を秘めたまさしく光線と呼ぶにふさわしいエネルギーの塊が通り過ぎる。セイジの静止を聞いて立ち止まらなければ、確実に命中しており、その時の悲惨な光景を思い浮かべて油機は額に汗を垂らす。

『気をつけろ……見たことのないのが混じっている』

そこにいたのは、太陽のように全身から炎を噴き出す謎の生命体。

虫ともドラゴンともとれる、過去のアースにいたどの生物の形状にも似ていない不気味な化け物。

その他にも、以前の戦いでは姿を見せなったセイジも見たことのないモンスターたちが現れた。

『まさか……アース以外の星で生み出したのか?』

デミスは、アースを襲う以前も存在しており、宇宙空間を徘徊していた。

アースと同じように被害にあった星が存在しても不思議ではなく、人類が変異体になってしまったように、そこで生み出された存在がいるのはおかしなことではない。

『前回の戦いは……出すまでもなかったということか? どうやらこっちも一筋縄ではいかないようだな……いつまで耐えられるか』

しかしそれは、出さざるを得ないくらいにデミスが追い込まれていることを証明していた。

新たに現れたモンスターが、どれほどの脅威なのかはわからなかったが、セイジは少しずつ、勝利へと向かって進んでいるのを実感し、不敵な笑みを浮かべる。

『來栖……頼んだぞ』

人生で、最も尊敬した軽蔑すべき男を信じて。