軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

再び-7

「説明はこれで終わりだ。あとは交代でここを任せたいんだが……問題ないか?」

中央に置かれた数十メートルはある巨大なコンピューター、そこから漏れでる仄かなオレンジ色の光が薄暗い空間を照らす広大な部屋。周囲には、同じようにオレンジ色の光を放つ無数のカプセルが置かれ、中央のメインコンピューターに向かって無数の管が伸びている。

アースクリアを管理し、アースクリアで住まう者たちの肉体が保管された場所に、アリス、セイジ、クルル、シモン、ミリタリア、タカコの6人が集まっていた。

「うん、バッチリだよ! こっちに来る意志を示してくれた人のカプセルを指定するのがこのタッチパネルで、この世界に適応させるための調整を施すのがこのボタン。調整が終わったらボクたちがエデン内部を案内すればいいんだよね?」

「そうだ。調整を施すための薬は限りがあるから、俺が選別した者が眠るカプセルにだけ反応を送る。あとはこっちの部屋で随時待機してくれると助かる。肉体の調整には時間もかかるし、個体によって掛かる時間にも差が出るからな」

6人がこの部屋に集められたのは、二日前に行われた鏡の演説を聞いて、デミスと戦う意志を示してくれた者たちの案内役として抜擢されたからだった。演説を終えて以降、鏡の志に多くの者が共感し、この世界に次々にアースクリア出身の冒険者たちが訪れていた。

今は演説を聞いたばかりで、まだこの世界に来る意志を示すか悩んでいる者が多いからか、セイジと元々ここで管理の手伝いをしていた者たちだけで回せているが、いずれ多くの者が雪崩れ込んでくるだろうと、人員の増強としてセイジがこの6人を抜擢し、地下施設であるエデン内の装置を扱いこなせるよう、説明を施していた。

「すまないな……さすがに寝ずに働き続けるのは俺もきつくてな」

「ワシは構いません。元々手伝えることがあるのではないかとこの世界に出てきた身、むしろ使っていただけることに感謝します」

「王に同じです。王が目指し、王が目的とすること全てが私のやるべきことですから」

申し訳なさそうに眼鏡を整えたセイジに、シモンとミリタリアの二人はむしろ光栄だとやる気を見せつける。

「しかし、ワシは構いませんが、ワシの娘……それにタカコにまでこの仕事をやらせなくても良いのではないでしょうか? 二人はまだ覚醒とやらで得た力を存分に扱いこなせていないはず、今後の戦いのためにもその力を試す時間が必要なのでは?」

「全くその通りなんだが……その、任せられそうな者が他にいなくてな。さすがに二人を抜いた三人だけでやってもらうには負担がでかすぎる。とはいえ、アリスとシモンとミリタリアよりかは短い時間を働いてもらうつもりだが」

その説明にシモンは一考すると、「ふむ……なるほど」と、納得した顔を浮かべる。

現在、エデン内部に滞在しているのは、ここにいるメンバーを除けば、鏡、レックス、パルナ、ティナ、ディルベルト、フラウの6名だけだった。

來栖、ウルガ、ピッタ、ペス、デビッド、バルムンクの6人はノアに、ライアン、油機、メリー、フローネ、ロイドの5人はガーディアンへと移動してそれぞれで活動を続けている。

「鏡は言うまでもなく今回の戦いの鍵となる男だ。今はエクゾチックフルバーストの力を高めるためにディルベルトと訓練することを優先しなくてはならない。同じ理由で、まだスキルの力を扱いこなせていないティナも訓練に専念してもらう必要がある」

「レックスさんとパルナさんは駄目なんでしょうか? 私とタカコさんが連れてこられているというなら、この二人にも声をかけても良かったのではないでしょうか……?」

疑問に思ったのかクルルは首を傾げる。同じことを考えていたのかタカコも「確かにそうね」と、手を頬において賛同した。元々強くなることに固執していたレックスはともかく、覚醒を終えていないパルナに声をかけなかった意図がわからなかったからだ。

「レックスは鏡……それにロイドに次いでこの戦いの主軸になってくれるだろう可能性を秘めている。俺がそう勝手に判断して声をかけなかった。そもそもの身体能力を上げる能力は、身体の勝手が変わる故に扱いも難しいだろうからな……特訓の時間が必要のはずだ」

「パルナさんは?」

いつも献身的に面倒見てくれるパルナが手伝いを断ったのが意外で、アリスが問いかける。

「パルナには声をかけたんだが……断られた。『それよりもやらなければならなことがある』と言われてな。恐らく、覚醒をしなかったことで、自分なりにどう役に立つべきか迷っているのだと思う。そのうち……手伝ってくれると思うが」

「……パルナさん」

話を聞いて、アリスは暗い顔で俯いた。

パルナは、本当なら覚醒できるはずだった。しかし、覚醒をしなかったのは、アリスを大切に想う自分が無くしてしまわないようにするためだった。

そのせいで力に思い悩み、苦しんでいるのであれば、それは結果的に自分のせいなのではないかとアリスは考えてしまう。

「その表情はパルナの前では見せないことだな。お前のために覚醒をしなかったのに、お前が落ち込んでいたのでは本人も浮かばれん」

「うん、そう……だね!」

だが、セイジの放ったその一言で、アリスは気を取り直して真剣な表情を浮かべた。

力では大きく役にたてない以上、アリスはサポート面で役にたつしかない。

それなのに、自分が不安そうな顔を見せることで、他の者たちの士気を乱していては、むしろ足を引っ張ることになると、考え直したからだ。

「ちなみにフラウも声をかけていない。その……父親の前で言うのは凄く心苦しいんだが」

「いえ、言わなくてもわかります。ワシがあなたの立場でも、フラウに手伝わせようと思いませんからな……むしろ、手伝わせた方が邪魔になるでしょう」

「フラウ様は昔から……めんどくさがりですからね。あと不器用ですし」

申し訳なさそうにセイジは言うが、シモンはむしろ当然といった反応だった。ずっと王家に仕え、幼い頃よりフラウのことを知っているミリタリアも、同じ意見なのか納得顔で伸びた髭を弄りながら頷く。

「っと、そうだ、一つ大事なことを伝えるのを忘れていた。俺も疲れているみたいだな……」

「仕方がないわよ……セイジちゃん、演説が終わってから今日まで働き詰めだったもの。ここの説明が終わったら一度私たちに任せて、休んで頂戴」

「すまないな。これが終わったら一時間ほど仮眠を取らせてもらう。で……言い忘れてたことだが、アースクリアから出てきた者たちに服を支給する時、これを渡してほしい。これ自体の在庫は、衣服を自動作成するショールームに置いてあるから」

タカコの気遣いに微笑を浮かべると、セイジは腕時計に似た銀色の装置を渡してきた。腕に巻き付ける部分は腕時計となんら変わりはないが、肝心な時計部分が、タカコたちには理解の及ばない複雑な旧文明の機械で作られている。

「これって……ボクたちにもくれた空間管理装置って道具だよね?」

「ああ、かつてリーシアと共に戦った超人たちも使っていた人類の英知だ。これがないと……戦いの最前線となるだろう宇宙空間で戦うことはできないからな」

それは、いつか訪れるデミスとの戦いのために、セイジが大量生産して用意していた道具だった。