軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それが、僕の答え-2

「正直……無理なら無理で、それでいいんです」

「何を言っておる……お主、ここに来る前にあの村人に任せろと言っておったじゃないか」

「クラスチェンジは容易ではないと言っていました……実際、そのための試練がこれです。現れるモンスターに対して逃げるのが最善の状況です」

「……そうじゃけど!」

「通路の奥にあるクラスチェンジのための方法があるのだとしても、恐らく辿り着くことなんて出来ませんよ。こんな様じゃ……ね」

「やりもしないのに何を言っておる! いいから隠れて奥へ進むんじゃ、モンスターなんて一々相手にするでない!」

その提案に、レックスは首を左右に振って「断ります」と言い切る。

「何故じゃ……何故そうまでして」

「ただ前に進むだけじゃ見えないものがある……師匠はそれを教えてくれたんです」

そう言いながら、ある程度の傷を癒せたのか、レックスは立ち上がって突き立てた剣を引き抜いて歩き出す。それに、フラウは心配そうな表情のままついていった。

しかし、その表情はすぐに青褪める。

先程倒したばかりのドラゴンが、再び出現して目の前に現れたからだ。

「に、逃げるぞレックス!」

「仮に……もしこれが逃げられない状況ならどうします?」

「そりゃ戦うしかないじゃろうが……今は戦わずに済む選択肢があるであろう! ごちゃごちゃ言ってないでとっとと逃げるぞ!」

フラウの言葉とは裏腹に、レックスは剣を構える。

「何をしておる⁉」

「昔の僕なら、迷わず逃げてました。でも、今はそれじゃあ駄目なんです、むしろ逃げられる状況だからこそ……勇気をもって立ち向かわなければならない」

「意味が分からん! お前は命が惜しくないのか⁉」

「戦わずに済まない時が来た時、生き残れるかどうかは……己次第。逃げられる時に逃げていたら……そのいざが来た時、僕は後悔する」

「……お主」

「僕はずっと後悔してきました。師匠と出会ってからはそれを実感し続ける毎日だった。合理的だと信じてきたやり方で強くなったと思っていたのはただの勘違いで、その癖が抜けずに僕はいつも遅れをとる。レベル214になった今でも……まだ」

剣を構えると、ドラゴンは咆哮を上げてレックスに向かって一直線に突進を仕掛けてきた。それを、レックスは跳びあがることで回避し、その瞬間にドラゴンの片目に向かって斬撃を与える。

「強くなれる時に強くなっておかないと後悔する。そうだ……強さとは、一朝一夕で手に入るものじゃないんだ! 一週間や二週間思い悩んで努力したくらいで……手に入るものじゃない!」

その反動で地面へと転がり落ちるが、すぐさまレックスは切り返して体勢を整える。

「たとえその連続が無謀だったとしても、勝てる見込みがあるのであれば……僕は挑みたい。まだ逃げられる状況のうちが華だと思って……!」

「絶対に勝てない相手を前に、逃げられない状況であれば……レックス! お前ではなくあの村人とロイドとかいうお前と同じ勇者がなんとかするじゃろ?」

「その二人でも勝てない相手だったら? 僕が加わることで勝機を掴めていたとしたら? その時、僕は一生後悔することになる。そして……これからの戦いは一人一人の力が大事になる戦いです! 師匠……いや、鏡浩二だけではどうしようもない戦いになる!」

レックスはそのまま勢いをつけてドラゴンの背後へと回り込んで挑発すると、再び跳びあがる。その挑発にのったドラゴンの尻尾が先程までいたレックスの位置に降り注ぐが地面を破壊するだけで何も起こらず、その瞬間にレックスはもう片方の目を斬りつけて視界を奪う。

「確かに僕は……師匠たちから見ればただの役立たずにしか見えないかもしれない。いや見えない。ハッキリと……言い切れるくらい情けない自分を自覚している」

「自覚してるじゃと? 何を根拠に言っておる? お主は充分に強いじゃろうが! そもそも自覚があるならどうして認めずに今ここで試練なんかに挑んでおるんじゃ! 矛盾しておるじゃろ!」

「根拠ならありますよ……僕は、師匠と出会ってからずっと……ずっと自分の無力さを実感してきた。師匠と出会ってから……自分の力不足を考えなかった日はない!」

視界を失ったドラゴンは、レックスを近付けさせまいと激しく暴れ狂う。尻尾が壁を叩きつけ、鉄をも切り裂くであろう爪が空気を何度も切り裂いてく。しかしレックスはそれをかいくぐって竜鱗の少ないドラゴンの元へと駆けた。

しかし、攻撃は寸でのところで当たらず、レックスはフラウのいる場所の近くの壁へと叩きつけられ、血反吐を地面にぶちまけた。

「……あの村人に出会って変わったとでも言いたいのか? 確かにお前は強くなったが……充分じゃないのか?」

「充分じゃない……それがハッキリとわかるから、僕は……無様に今もあがき続けている。今この場に立っている。強くなったのかはわからない……わからないからこそ、もっとあがく必要がある」

フラウの治療を受けながらレックスはそう呟くと、再び立ち上がってドラゴンへと立ち向かっていく。しかし、やはり攻撃をかいくぐれずに壁へと叩きつけられ、血反吐をぶちまけてしまう。

それを何度も、何度も繰り返した。死を恐れず、その先に活路が必ずあると信じているかのように。その戦いにある、誰かの影を追うかのように。

「くく……ふはは、痛い……辛い……そして、怖いな。己の力でなんとかしなければならないという意志が……ここまで辛いとは、あの時の師匠は……きっとこんな気持ちだったのだろうか?」

剣を握る力が残っていないのか、レックスは息を乱し、かすれた声でフラウの治療を受け続ける。幸いなことに、ドラゴンは視力を失っているため離れた場所にいるレックスを追ってはこず、また、フラウの僧侶の役割のおかげか治療によってすぐに復帰することができた。

「すみませんフラウ様。僕の我儘に付き合っていただいて」

「それは構わんが……まさかお主……あのドラゴンを利用してレベルアップを図ろうとしている訳じゃあるまいな?」

「そんなつもりはないですよ。僕が今あれに挑んでいるのは……自分の中にある不要な考えを取り除くためです」

「不要なものじゃと? 何を今更……何をとろうとしているかはわからんが、一朝一夕で克服できるものでもないじゃろう?」

「わかっています……そして、それを克服するための時間も……デミスと戦うまでの時間も残されていないことも。だから……これを最後のチャンスだと思って挑んでいるんです」

「その最後のチャンスで変われるとでも?」

「…………気付いたことが……あるんですよ。だから、試さずにはいられない」

ある程度回復したからか、レックスは剣を突き立てて起き上がる。すると、すぐさまドラゴンへと向かって一直線に向かい。猛攻撃をかいくぐり、遂にその胸元に剣を突き立てることに成功する。

しかし、レックスは再び壁へと吹き飛ばされ、激突する。ドラゴンを倒すや否や、また新たに、それも今度は二体同時にドラゴンが現れたからだ。

一体でも苦戦する相手に対し、今度は同時に二体。勝算は少なく、フラウは恐怖に肩を震わせるとレックスを揺すり起こして逃げるように提案する。だが、レックスは逃げようとはせず、再びそのドラゴンに向かって立ち向かった。