軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

脇役なんて言わせない-10

「メリーさんと油機さんは? なんかずっと二人ともカチャカチャとガラクタを弄っていたけど」

「これは初めてのパターンでよくわからんが、油機は商人、メリーは盗賊だったか? 油機に関しては……わかりずらいが、想像力を試されているのではないか? 物を生み出す力……それに関係しているはずだ」

アリスに促されてモニターを切り替え、今度はメリーと油機がガラクタの山が置いてある工房のような場所でガチャガチャと作業している光景を拡大表示する。

「メリーは……何やってるんだ? つまらなそうにガラクタの山をいじったかと思えば油機を警戒して、頬を緩ませたりと……大丈夫かあいつ」

「あれは簡単にわかる。心の動揺がありすぎるんだ。故にシステムがまずはどんな状況でも平常心を保てるように心の解放を促している。まあ……この二人は今の様子だと覚醒は難しいだろうな」

そのまま、これ以上見ていても仕方がないと、セイジはモニターをロイドとフローネが優雅にこたつに入りながら過ごしている光景へと移す。

「ロイドとフローネは何してるんだ? 正直この二人が一番意味わからないんだが」

「フローネは呪術師、ロイドは勇者だったか? フローネは恐らく、タカコやメリーとほぼほぼ同じな気がするがな。呪術師とは本来性格がねじ曲がっている者が多い。だが、フローネは俺が見る限りかなりの常識人だった……つまり、己を理性でコントロール出来ているのだろう。それが邪魔になっていると考えるべきだな」

「フローネが裁縫道具で縫い物をしているのもそれが関係しているのか?」

「元々好きだったのだろうな。人前でやることで少しずつだが羞恥心をシステムがほぐしているのだろう」

言われて一同がモニターを見ると、ロイドにジーッと見つめられて頬を紅潮させながら、チクチクと糸を縫ってぬいぐるみを作っていた。

「フローネさん……なんか、ちょっと可哀そうだね」

その光景が少しかわいそうに見えたのかアリスがそう言って同情する。

「ていうかロイドは……何やってるんだ? あいつフローネを見ているだけなんだけど?」

「恐らくだが、もう覚醒を完了している」

ハッキリと告げたセイジの言葉に、アリスは顔をパアッと明るくさせ、鏡は心底驚いた表情で首をグリンッとセイジへと向けた。

自分があれだけ苦労して覚醒させたのに、それを気付かない内に、それも一瞬で覚醒させてしまったロイドが信じられなかったからだ。

「一体いつ覚醒したんだ⁉ ずっとお茶を飲んでるだけだったぞ⁉」

「元々、覚醒一歩手前だったのだろう。自分に足りないものにすぐに気付いて覚醒を完了させたといったところか……あの落ち着きようはそれ以外に考えられん」

「どんだけ天才なんだよ……あいつって役割勇者だろ?」

「鏡……お前が努力の化物だとするなら、ロイド……あいつは才能の化物だ。あいつはまだ会ったばかりの俺でもわかるくらいに恐ろしく感じられる。お前の次くらいにはな」

鏡が初めて苦戦した相手なのもあって、セイジのその言葉を鏡は受け入れて納得した。

「自分を客観的に見て、今の自分に何が足りないのかにすぐに気付けるくらいだ。心、技、体……その全てが揃っているまさしく勇者らしい勇者だな」

それを聞いてモニターに映るロイドに全員が視線を向ける。そこに映るロイドは平和の象徴そのもので、とても優雅にお茶をすする姿は鏡に迫る実力をもった化物とは思えなかった。

「レックスとフラウは何をしているんだ? レックスは何かとずっと戦ってるみたいだけど……あのお姫様、さっきからレックスを応援してるだけで何もしてないぞ」

そこで、モニターで少し見た内容から気になっていたのか、鏡がセイジに次を映すように促す。指示を受けてモニターをレックスとフラウの二人へと移すと、そこにはひたすらに広く長い通路の奥へとモンスターを倒しながら突き進むレックスの姿があった。

その背後では、ひたすらレックスが戦うのを応援しているフラウの姿がある。

「焦りが見えるな……無意識の内にこの敵に勝たなければ、自分はもう駄目だと追い込んでしまっているのではないか? その結果、余裕がなくなり、気付けることにも気付けなくなっている」

その姿から、一瞬で鏡も熟知しているレックスの欠点を言い当て、鏡は「よくわかったな」とセイジに感心して言葉を返す。

「……出てくる敵が全て、レックスの実力より上と思える相手だからだ。確か……レベルは216か? その境地に至るまでに格上を相手にし続けてきてはいるのだろうが……それでも、絶対に勝てないと思える相手に出くわした場合。恐らく奴は挑めない。強さをもとめるということは、強い相手に恐怖しているということにもなるからな、あがけばあがくほどに泥沼にはまっているのだ……クラスチェンジには一番ほど遠い」

「フラウよりもか?」

「フラウ……ヘキサルドリア王国の第二王女に関しては、精神的に成熟してなさすぎて見込みがまるでない。あのメリーとかいう少女よりもだ。どうあがいてもクラスチェンジには辿り着けないと判断して、レックスと同じものを見せている……『なんで妾だけ⁉』と騒がれても面倒だったからな」

少なくとも、レックスに対しては嫌味で言っているわけではないのがわかり、鏡は複雑な表情を浮かべる。同時に、フラウに対する行動には「賢い選択」と呟いて称賛を送った。

そして、言葉通りの懸念を鏡も抱いていたため一瞬不安な顔をみせたが、すぐに心配はないと切り替えて笑顔を浮かべる。

「どうした? 何故そんなに笑っていられる? 忘れているのかもしれないが、この中で五人以上がクラスチェンジしなかった場合……お前たちには諦めてもらうことになるんだぞ?」

「何も心配してないさ」

むしろ甘いくらいだと、鏡は言葉を付け足して不敵な笑みを浮かべる。

「あんたは俺の仲間を侮りすぎだ……レックスに関しては特にな」

「なんだと?」

「確かにあいつはちょっとアホだし、抜けてるところもあるし、先走ることもよくあるけど」

「ティナさんがいたら絶対に鏡さんにだけは言われたくないって言ってそう」

「ちょ、アリスちゃん。今ね? 俺、真面目に話そうとしてるからさ」

ここぞとばかりに言いたい放題の鏡に、アリスがジト目で見つめる。一旦アリスの頭を撫でて落ち着かせると、鏡は再びきりっとした真面目な顔になってセイジに視線を合わせた。

「とにかく、レックスを甘く見るなよ? あいつは誰よりも、仲間のこと……そして自分のことを考えている。どうするのが一番なのかって……いつだって悩んでる」

「悩むのが必ずしも良いとは限らないぞ?」

「答えが出なければな。あいつはいつも悩んではちゃんと、自分なりに答えを出して前に進んでる。もしも……あいつが抱えている大きなコンプレックスが今回のクラスチェンジを邪魔しているんだったら。絶対にこれまでの旅でそれについての答えを求めて悩んでたはずだ……きっと、また自分なりの答えを出して前へと進むさ」

「どうしてそう言い切れる?」

「一番……俺を敵視していたあいつが、一番俺を慕ってくれるようになったからさ。俺を師匠なんて呼びだしてまでな……それも、誤解が解けたらすぐにだぜ? それだけ、あいつは進めばいい道を間違えることなく進んでいける男なんだよ」

昔のことを思い出してか、鏡は安心したように微笑する。

「最初は勇者って役割に酔ってるめんどくさいやつと思ってたが、今は違う。俺はあいつを誰よりも頼りにしてるし……信頼してる」

「見物だな」

鏡の言葉から考え直したのか、セイジはモニターの拡大表示をそのままにして、腕を組みながら注視する。対するアリスと鏡は顔を見合わせて頷き合うと、何も心配していないのか堂々とした表情でレックスたちの行く様を見届けた。