軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

脇役なんて言わせない-9

「何が起こっているのか……全くわからないんだけど」

目の前に表示された五つのモニターを前にして、鏡がアホ面で「ほあー」と呟く。

覚醒の試練に挑んだ一同をベッドへと運んだあと、再び鏡、アリス、ダークドラゴン、セイジ、ディルベルトの5人は王の間へと戻ってきていた。そこで、セイジの管理者権限を使って覚醒の試練へと送り込まれた仲間たちの光景を悠々と眺めていた。

「皆、何かと一生懸命に向き合っているみたいだけど……ボクたちには見えないものが多いね」

それぞれが苦悩した様子で試練へと挑んでいる様子に、アリスが成功を祈って手を合わせながら見守る。

『精神世界だ……それぞれで見えているものが違うのだろう』

「ほーん、そういうもんなのか。いや……でも心当たりはあるな」

ダークドラゴンの見解を聞いて、同じような状況に陥ったことを思い出して鏡がなるほどと納得した様子で頷く。

「己が精神世界で自分と見つめ合い、新たな自分の可能性を見つけ出す……美しい」

既にその世界を経験して乗り越えているからか、ディルベルトが余裕の表情で玉座に座りながらワインをあおる。そんなディルベルトに鏡もアリスも冷たい視線を向けた。

「危険性はないが、本人たちはこれでもかというくらい過酷な思いを今頃しているだろう。場合によっては見たくはないものを見せられていたり、無駄と思えるようなことを何度もやらされているはずだ」

「どうして?」

セイジの解説を聞いて、その理由をアリスが首を傾げながら問いかける。

「覚醒をするということは、本来その者があるべき姿に還るともいえる。それに気付くまで……もしくは諦めるまで続くように作ってあるのさ」

思っていたよりも過酷な試練にアリスは「……そんな」と不安そうにモニターを見つめる。パルナやクルルに至っては、それに気付くまでは、永遠に敵と戦い続けることに繋がったからだ。

「あるべき姿に還るって……じゃあ今のあいつ等は本来の自分とは違うってことか?」

「難しいところだな、本来あるべき姿というのが形容しがたい。今の自分自身を変えてしまうこともあるが、そうでないケースもある。元々きっかけがなくて気付けてなかっただけの場合だと、大きな変化なく覚醒することができる」

「いや、さっぱりわからん」

「本来あるべき姿から大きく変わってしまっていた場合。極端に自分を変える結果に繋がるということだ。お前なら、その感覚がわかるんじゃないのか?」

そこまで言われて、鏡はようやく納得した顔で「……ああ」と呟く。憎しみに囚われていた鏡は覚醒することで本来の自分を取り戻した。その感覚に似ているのだろうと自己解釈する。

「それってつまりさ……覚醒することで、変に悪い奴になったりする可能性もあるってことか?」

「そいつの本質がそうならそういうことになるな。まあ……記憶が無くなるわけじゃないから、突然襲い掛かってきたりするようなことはないとは思うが」

「どういうこと?」

親しい仲間に襲われるかもしれないと聞いて怖くなったのか、アリスが不安な顔でセイジにその意味を聞き返す。

「仮に、人を殺すのが溜まらなく好きで、それがその者にとっての本質であった場合。それを抑え込んでいたタガが外れて快楽殺人者になってしまう可能性もあるということだ。本来持っていたその殺人による技術を目覚めさせたうえでな」

必ずしもメリットだけとは限らないという真実に、鏡もアリスも表情を曇らせる。

「たとえの話だ……心配そうな顔をするな。今見た感じ恐らくだが、その可能性のある者はこの中には誰もいない……いや、タカコとやらは怪しいかもしれんが」

「わかるのかよ?」

「今までに何度か見てきたパターンから推察してな。そうだな……一つ一つ説明するとだな」

そう言いながら、セイジは五つあるモニターを一つ一つ拡大して表示させていく、最初に表示されたのはタカコとティナが挑んでいる精神世界だった。

「タカコ……こいつの場合は、冷静さ……つまり、大人の対応力、常識、総じて理性が邪魔をしているパターンだ」

「んな⁉ タカコちゃんと言えば一番頼りになる冷静沈着な相談役だろ? むしろ……それが長所じゃねえのか?」

「見ればわかる。壁を殴ったと思えば突然手を止めているだろう? あれは恐らく、自分の理性が働いている証拠だ。その理性が邪魔をしている……ということなのだろう」

よくよく考えると、なんだかんだでタカコは手が早く、鏡もちょっとしたことで何度もボコボコにされていたり、デビッドの前になるとタガが外れたかのように暴れていた。それを思い出して、セイジの解釈もなくもないのかと納得してしまう。

案外、今タカコが見ている何かも、デビッド絡みじゃないのかと、鏡は嫌な予感を抱きながら同じモニター内に映るティナへと視線を向けた。

「ティナは? なんかずっと動かずにボーっとしているけど」

「少しわからないが……恐らく、過去を見ているのだろう。選択を迫られている……そういったところか? どちらをとっても不幸になるような……そういう選択だとは思う」

「あんた……人間観察が趣味なの?」

「研究者に吐く言葉ではなくないか?」

どこか納得のできる解釈に、鏡は素直に感心した。そして次にモニターを切り替えて、パルナとクルルが戦っているモニターを拡大して表示する。

「ずっと戦ってるみたいだけど……なんなのこれ? たまに俺とかアリスとかみたいな見た目の奴も出てきてるし」

「戦うことでその真意を問われているのだろう。何を求められているのかはわからないがな……しかし、答えは必ずしも戦うことで見つかるとは限らない」

「もう全然言っている意味がわからん。ダークドラゴン。わかりやすく解説して」

『我が人間の本質を一々解説できるわけがなかろう? 我は一応モンスターだぞ?』

そもそもヘキサルドリア王国に所属するダークドラゴンにわかるはずもなく、ダークドラゴンは困った顔で『我を見るな』と冷たく突き放す。