作品タイトル不明
脇役なんて言わせない-4
「お前たちの中の……そうだな、五人だ。五人でも覚醒することが出来れば……後にデミスとの戦いに参加するであろう者たちにも覚醒が可能だという証明として認めてやる。俺も戦いに参加するものとして、お前たちに協力しよう」
「仮に……五人覚醒することが出来なければ?」
「全てが終わるまで、アースクリアに居てもらう。仮に覚醒を果たしたとしてもデミスに勝てる可能性があるだけで勝てるわけじゃない……俺はこれ以上誰も犠牲にするつもりはないんだ……来栖、そしてお前たちには悪いが、リーシアを諦めることになったとしても協力はしない」
「つ……ま……り、今回はお前たち次第ってことか、俺は信じてるぜ? お前たちならやってくれるってな」
何も心配していないのか、鏡は満面の笑みを浮かべながら親指を立てて一同に向けた。
「任せてください! 必ず……立派にやり遂げてみせます!」
その期待を裏切らないとクルルが拳を握り締めてやる気を見せる。
「任せろ師匠。僕は必ず……いや、なんでもない」
同じくレックスも必ずやり遂げてみせると、言葉で語るよりも結果で見せつけると言わんばかりに熱い眼差しを鏡へと向けた。
「なんかこういのって緊張するわね。自分次第ってのはこんなにも重荷に感じるものなのね、たまには鏡を労わってあげないとって思っちゃうわ」
「思っちゃうだけじゃなくて、実際に労わってほしいんだけど」
言葉ほど緊張していない様子でパルナが背を伸ばしながら、「ま、私にはあんまり期待しないように」と笑みを浮かべる。逆に何の心配もしていないのか、鏡はその様子に軽く鼻で笑うと「任せた」と言葉を添えた。
「まあ力を持った者の責任というものでしょう。とにかく安心してください。ガーディアンの代表としてロイドさんは勿論。私も立派にやり遂げますので」
それを任務として数えているのか、どこか業務的な物言いをしつつもやる気満々にストレッチを始めるフローネ。
「駄目な気しかしない……本当に大丈夫なんでしょうか?」
その隣で、既に諦めているのかげんなりした様子でティナが呟いた。
「ティナたんなら大丈夫だろ。なんせレアスキル持ってるんだし」
「いやいや……私のスキルとか一人で持っていても仕方がないでしょう」
「それなら安心しろ。今回はペアを組んで試練に挑んでもらう。仲間がいることで覚醒するというケースもあるのでな」
「え、じゃあ私。タカコさんと組みたいです」
「あら? いいわよ? 私もティナちゃんとなら大歓迎だわ」
ラストスタンドの戦いのとき、鏡でさえ畏怖したコンビを見て「このペアに敵とかいんの?」と、鏡は逆に不安を覚える。
「言っておくけど……私に期待するなよ? レベル1に何が出来るんだって話だからな」
「大丈夫! きっと皆、言われなくても期待してないと思うよ! 勿論私にも期待しないでね!」
「それはそれで腹が立つな」
鼻から諦めているのか、メリーはやる気なさそうに「そもそも魔力銃器もねえのに何が出来るんだ」と、一人疎外されている感じがしたのか口を尖らせる。
「それなら安心していい。覚醒は低レベルでも可能だ……単純な身体能力の高さが関係しているわけではないからな。まあ……レベルが高い方が覚醒する可能性が高いのは間違いないが」
「なるほど……ならば妾にもワンチャンスあるということじゃな? レックスよ、妾とペアを組むが良い。いざという時に守ってもらえそうな者がいないと困るのでな」
「僕ですか? まあ……構いませんが」
フラウの強引な決定に、パルナが少しだけしょんぼりとする。レックスも、昔からの関係上で断れないのか、邪魔になるだろうことを考慮しつつ、邪魔がいるくらいで果たせないようでは鏡の役にはたてないと承諾した。
「じゃああたしはクーちゃんと組んじゃお」
レックスが素直に受け入れてしまったことにどこか不満に感じながら、当てつけるようにパルナはクルルの腕にしがみつく。
「ボクも頑張るね! 絶対に覚醒して鏡さんの役に立てるようになるから!」
「悪いが、覚醒は魔族には出来ない。人間にだけ与えられた力だからな」
その展開を予想していなかったのか、最もやる気に満ち溢れていたアリスから、「え?」と心外と言いたいかのような声が放たれる。すぐさまアリスがクルルへと視線を向けると、クルルは何故か「お留守番ですね」と勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「じゃあアリスは俺とお留守番だな。皆が頑張ってる姿を一緒に見ようぜ」
「え、一緒に? うん! そうする!」
だがその笑みは、すぐに崩れた。
「しかし、覚醒している間にも六大大陸の古代兵器が稼働してしまう……なんてことになりかねないのでは?」
そこで、一人思案顔を浮かべていたロイドがセイジに問いかける。六大大陸の古代兵器は既に稼働を始めているため残された時間も少なく、それに対して覚醒するために挑む試練がどれくらいの時間を必要とするかわからなかったからだ。
「覚醒のための試練はそんなに時間が掛かるものではないが、不安なら覚醒のための試練が終わるまでは、六大大陸の古代兵器の稼働は止めておいてやる……約束だからな」
それを聞いて、ようやくロイドはホッと安堵する。
「それは助かります……が、具体的に覚醒の試練というのはどういうものなのでしょうか? そもそも、覚醒とはどういった条件で発現する力なんですか?」
試練を受けるにしても、何を試されるものなのかが気になり、ロイドは問いかけた。他の一同も同じく気になっていたのか、耳を傾ける。すると、セイジは顔つきを変えて心に訴えかけるような眼差しを向ける。
「己の本来あるべき姿を見つけ、それを引き出すことで覚醒は完了する。そうだな……自分との戦いとでも言うべきか? どうありたいか、どうあるべきなのか、自分とは何なのか、何を欲しているのか、何を見失っているのか……それを見つけ出せ。そして気付け、自分のあるべき姿に」
「それは……どうい…………う?」
言葉の真意がわからず、再びロイドは問い返そうとするが、その途中で足元を崩して地面へと倒れてしまう。
「皆⁉ 一体どうしたの⁉」
アリスの叫び声が兵士たちの休憩室に木霊する。ロイドが膝元を崩すとほぼ同時に、鏡、アリス、ダークドラゴン、ディルベルト、そしてセイジを除く全員が、まるでこと切れたかのように地面へと倒れたからだ。
「おいおいおい……大丈夫なのかこれ?」
あまりにも突然なことに、鏡がツンツンとティナのほっぺたを突きながらセイジに問いかける。
「心配するな。連中を試練の間へと送り込んだだけだ。アースクリアのシステムを利用してな」
「システムって言っとけば何でも済まされるみたいになってない?」
「ここはアースクリア……そもそもの肉体のない仮想世界だ。不思議な話ではないだろう? 覚醒を人為的に引き出せるようになったのも、俺の長年の研究の成果をシステムに組み込んだからだ……アースクリアのシステムと言わずになんと言えばいい?」
「まあそうだけどさ……皆の身体はここにあるけど、送り飛ばしたってのが意味わからんって言うかなんというか」
「覚醒は肉体の影響ではなく精神の影響によって開花する。故に肉体は不必要なんだ。今頃……奴らは向き合わなければならない心の壁と向き合っているのだろうさ。鏡……お前がその壁と向き合ったようにな」
言われて、鏡はほんのニ週間前、ガーディアンで戦った時のことを思い出す。今へと繋がる道は苦しく、そして険しかった。大事なものを見失って、復讐心に飲まれそうになった。でも大切な仲間たちのおかげで、自分の中に眠る感情よりも、もっとずっと大切にしたい者があったことに気付けた。
「こりゃ……確かにきつい試練かもしれないな」
そこに至るまでの日々を思い出して、鏡は暗い表情を浮かべる。
「わかったらさっさと運ぶのを手伝え。こんな場所に放置するのもなんだからな、ディルベルト、それとダークドラゴンも手を貸せ」
「お任せください。私が美しく、華麗にお運びいたしましょう」
『……仰せの通りに』
以外にも気を遣ってくれていることに鏡とアリスは顔を見合わせて「本来は良い奴なんだろうな」と苦笑し、手分けをして地面へと倒れた仲間たちの身体を王城内にある仮眠室へと運ぶ。
「皆……頑張って」
そして、パルナの身体を持ち上げながら、アリスは願うように小さくそう呟いた。