作品タイトル不明
『ふーん』って感じ-12
『ふむ、ここならばよいだろう』
30分後、王都を出た一同は、王都を出てすぐの場所にある平原にまで来ていた。どこまで歩いていくのかと先導するダークドラゴンを追っていた一同も、ダークドラゴンが立ち止まると合わせてその場に立ち止まる。
直後、ダークドラゴンは身体に光を纏わせてその身体を徐々に元の竜の姿へと戻していった。
「やっぱりその姿の方が俺は好きだな。なんか落ち着く」
『お主を絶命寸前にまで追い込んだ姿だというのに、相変わらずおかしな奴だ。いや……最早臆すことないほどの力を得ているということか? 今戦えば……どちらが勝つかわからんな』
「わかるのかよ」
『わかる。この国を覆うほどの魔力を持ち、システムとして最強の力を与えられたはずの我が脅威と感じているからだ。我が魔力に飲まれることなく押しのけている唯一の存在……こんな状況でもなければ、戦ってみたいものだ』
お互いの力を認め合っているのか、鏡とダークドラゴンは視線を合わせると不敵な笑みを浮かべる。同時に、王国の書物にも世界最強のモンスターと謳われているダークドラゴンにそうまで言わせていることに、鏡の実力を実際に見ていないニニアンとフラウは驚いた顔を見せた。
「お主……本当にとんでもないのじゃな。最初に見た印象はただの冴えない男じゃったのに」
「鏡さんは僕たちフォルティニア王国に所属するレベル200を超える精鋭中の精鋭1万人を相手にして勝った男ですからね。間違いなく人の中では最強でしょうね。僕もレベル450を超える勇者ですが、彼には到底かないませんので」
「レベル450の勇者じゃと⁉ レックスが霞んで見えるの」
ロイドと比較され、フラウに言われたい放題だったが、王女相手には何も言い返せないのかレックスは遠い目をしながら空を見つめ始める。
「しっかし……随分と大所帯だな。城の兵士まで見送りにくる必要あったのか?」
「一緒にいすぎて忘れておるやもしれぬが、クルルはこの国の第三王女じゃぞ? むしろ妾たちもいるのにこの数の兵士では足りぬくらいじゃ!」
言われて鏡は兵士たちの数に目を向ける。兵士は少なくとも二十人以上は護衛としてついており「これで足りないって……一体どんなモンスターに襲われる想定なんだよ」と、顔を歪めた。
「それではダークドラゴン。我が妹たちのこと……よろしく頼むぞ」
『うむ…………んん?』
改まって頭を下げるニニアンに対し、ダークドラゴンは間の抜けた声で返答する。
「今、妹たちって言わなかったかこの姫様? 私の聞き違いか?」
「ううん、間違いなく妹たちって言ったよ。メリーちゃんとあたしの耳がおかしくなってないならだけど」
同じく聞こえてしまったのか、メリーと油機が呆けた顔でフラウへと視線を向けると、フラウは当然と言いたげな表情でいそいそとダークドラゴンの背中に登ろうとしていた。
「え、フラウ様も来るんですか? ええ? フラウ様ってレベルはおいくつ何ですか? そもそも役割は何なんですか?」
「ふふん……聞いて驚け。レベル21! 役割はなんと僧侶じゃ! どうじゃ! 妾も密かに鍛錬しておったのじゃ! 頑張ったのじゃぞ?」
「レベル21ってスキルも持っていないクソ雑魚じゃないですかぁ! それに僧侶ならもう私で間に合ってるんで」
「な、なんじゃと⁉」
戦力としてはまるで役に立たないフラウにティナが率直な意見を素直に述べる。その傍らで、あまりにもストレートな物言いに思わず鏡が「ティナたんも言うようになったねぇ」と感動していた。
「これは困りましたね……世界の命運をかけた任務に変わりはありません。実力の伴わない方をお連れするのはちょっと」
「いいんじゃないのぉ? なんか賑やかで面白そうだし」
「あたしも別にいいと思うけどなぁ、だってそんなこと言ったらメリーちゃんなんてクソ雑魚中のクソ雑魚だよ? レベル1って逆に凄くない?」
「て、てめぇ……」
心配するフローネとは逆に、楽観視した様子でパルナと油機が同行を賛同する。
「クルル……お前知っていたな?」
「ごめんなさい。言っても聞かなくて、自分も世界の命運をかけた冒険に参加するんだって……その、あの、姉さまは昔から強引で……」
ジト目で見つめてくるレックスから視線を逸らし、クルルがげんなりとした表情でため息を吐いた。
「俺知ってるんだ。このパターンっていくら何を言っても絶対についてくる系のやつ」
そう言いながら鏡が視線をアリスとメリーに向けると、二人は白々しく口笛を吹きながら視線を徐々にそらしていく。
「まあいいんじゃないですか? 僕から見れば増えようが増えまいが対して変わらないと思いますよ。変に我儘を言われたり、勝手な行動さえ慎んでいただければ問題ないかと」
「お前いつのまに」
心底どうでもいいのか、ロイドはすぐにでも出発できるようにダークドラゴンの背中に搭乗しながら、いつも通りの爽やかな笑顔で「それより早く行きましょう」と一同を急かす。
言葉通り、ダークドラゴンと鏡のように強力な仲間がいる状況で今更一人、戦えない仲間が増えたところで影響は少なく、連れて行くか連れて行かないかで悩んでいる時間がもったいないと、一同は次々にダークドラゴンの背中へと搭乗していく。
「ふふふ……では行ってくるのじゃ! 姉さま! 城のことを頼んだぞ!」
「お前も、クルルの邪魔になるような真似はするんじゃないぞ。王族として品をもってな」
同行の許可をもらい。ご満悦の様子でフラウはダークドラゴンの背中へと飛び乗り、残ることになるニニアンと護衛の兵士たちへと手を振る。直後、ダークドラゴンはその巨体を動かして翼を広げ、空へと向かって羽ばたき始めた。
「ぬぉおおおおおお! す、すごいのじゃ! のぉクルル⁉ 凄いのぉ⁉」
そして、身体を宙へと浮かせると、ダークドラゴンは徐々に速度を上げてラストスタンドに引けをとらないスピードで空へと直進していく。
「え? あ、はい……凄いですねお姉さま。下にいる民たちはさぞ驚いているかと思います」
「ん? なんか反応がいまいちじゃの?」
普通の人間であれば絶対に体験できない空への散歩に、フラウは叫び声をあげて興奮するが、周囲を見てみると騒いでいるのは一人だけで、フラウは徐々にハムスターのように大人しくなり、三角座りで黙って眺められる絶景に視線を向ける。
というのも、フラウは初めての空の散歩だったため興奮したが、他の一同は全員ラストスタンドで一度空を移動しているため、フラウほどの感動がなかったからだ。
傍らで油機がメリーに、「メリーちゃんは、はしゃがなくていいのぉ?」とニヤニヤした顔つきで迫るが、メリーは頬を紅潮させながら無言で顔を逸らし続ける。
『念のため、我が背中から離れないように保護魔法を展開しているが、無暗に飛び跳ねたりはせぬように頼むぞ? そこまでは面倒見切れないからな』
「ううん、充分だよ! ありがとうダークドラゴンさん!」
そこで、ダークドラゴンのさり気ない気遣いに、鏡の隣で空を切る風を感じていたアリスが、満面の笑顔で感謝を述べた。
「どれくらいで着くんだ?」
空の移動にまるで興味がないのか、欠伸を漏らしながら鏡が問いかける。
『ふむ……ニ、三時間といったところか? あまり速度を上げすぎるわけにもいかぬのでな』
「あ、なら……移動している間に少し時間もらっていいかな? ダークドラゴンさんと話したいことがあって」
『我と?』
「ダークドラゴンさんはその……知ってたんだよね? 僕たちがアースクリアからアースに出る前から……ずっと、全てのことを」
ダークドラゴンは顔を見合わせることなくアリスが何を話したいのかを察すると、気難しい表情を浮かべて暫く沈黙する。
『そうだ……知っていた。全てを知っているうえで……お前たちを送り出した』
「やっぱり……そうなんだ」
『責めたければ責めるがよい。魔王の娘……お主にはその資格がある。気になってはいたが、姿が見えないということは…………そういうことなのだろう? それは、知りながらも送り出した我の責任でもある』
ダークドラゴンが誰のことを言っているのかを察し、アリスは表情を暗くする。だがすぐに、「責任を問いたいんじゃないんだ」と切り替えて、悲しそうな顔をしつつも笑顔を浮かべた。