軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

『ふーん』って感じ-7

「なんだその顔は……まるで妾が見当違いなことを言っているみたいではないか」

「その見当違いなんですよ……お姉さま」

そこで背後から、フラウの肩にポンッと手を置きながら、呆れた表情をクルルが姿を見せる。

護衛の兵を下がらせて、その隣にはパルナともう一人、金髪の編み込まれたおさげをハーフアップにしたフラウと同じく気品の漂う大人びた女性が立っていた。

「フラウ……人の心の揺れを餌に楽しもうとするのは下賤の輩がすることだ」

「ぐ……しかし姉さま。王族だからって別に、恋バナくらいしたって……」

「私に意見するのか?」

「スミマセンデシタ」

先ほどまで傲慢な態度でレックスに詰め寄っていたフラウは、大人びた女性に一睨みされると、小動物かのように縮こまって大人しくなり、口を噤む。

その様に、パルナが隣で必死に笑いを堪え、今にも爆発しそうな勢いで震えていた。

更にその光景を視界に、レックスとティナが「新しいおもちゃを見つけてしまったか……」と、パルナに冷めた視線を送る。

「こちらの方は……?」

新たに現れた気高い女性を前に、ティナはこそこそとレックスに耳打ちする。女性は、クルルとフラウとは違って子供っぽさがなく、どこか規律に厳しそうな威厳のある顔立ちをしていた。唯一共通点があるところは、フラウとクルルと同じく美麗な容姿を持っているという点のみ。

「第一王女のニニアン=ヘキサルドリア様だ……現在の女王陛下だな」

「あー……シモン様に王の座を押し付けられた可哀そうなあの……」

「案外あの言葉は嘘じゃないと思うがな。あの方は元々王政に興味を持たれていた……聡明ですこぶる真面目な方だ。フラウ様と違ってな」

「レックス。お主……今何か言ったか?」

「フラウ様がどれほど聡明な方なのかを説明しておりました」

綺麗に出来上がっているヒエラルキー図、その底辺にいるレックスにティナは憐んだ。

「しかし……ニニアン様までどうしてこちらに? 勝手に抜けたら、お城の大臣たちが大騒ぎしますよ?」

「無論、何も言わずに出てきているわけがなかろう。私がこんなところにまで出張ってきたのは、鏡という男に会うためだ」

「師匠と……? またどうして?」

「私は王……管理者だぞ? 世界の命運を預けられた男に一目会ってみたいと思うのは変か?」

「ちょ……いいんですかこんな場所でそんな話をして、何も知らない一般人に聞かれたら」

「構わんだろう。どうせ、始まってしまえば勝っても負けても全てが終わり、アースクリアは外に戦える者を外に出す必要もなくなってしまうんだ。それならば、バレてもいいからその戦いに勝利できるよう、少しでも事情を知ってる人物を増やして戦力を整えるべきだと私は思うがね?」

結果的に、バレてもバレなくても、來栖は必ず未成熟でも構わないから戦力を増強するためにアースクリアから人材を募る。それを見越して公共の場にも関わらず、淡々と何食わぬ顔で話すニニアンに、レックスは引きつった顔で「さすがですね」と称賛の言葉を送った。

「そういえばさっき……フラウ様が色々と事情を聞いていると言っておりましたが、同じ理由でフラウ様にもアースのことをお話されたのでしょうか?」

「いいや? フラウが勝手に聞き耳を立てていただけだ。気付いてはいたが、まあ近々どうせ話すことになるだろうということで放置した」

「さすが……相変わらずの肝の太さで」

「父上も惜しいことをしたな。管理者という苦しみから良くも悪くも必ず解放されるだろうこのタイミングで王位を譲るなんて……これでは、ただただこの国の権力だけを手に入れてしまったようなものだ。ちなみに先に言っておくが私はきたるデミスとの戦いには参加せんぞ? っふ……ふふ、おっと、笑いが止まらん」

そして、微妙にゲスな思考も出来ることを知って、ティナは安心した顔を見せた。

「なんでお前そんな安心した顔をしてるんだ」

「いや私、真面目で威厳があるだけの人が苦手で……目的一直線みたいな人……例えばバルムンクさんとか、ミリタリアさんとか。適度に子供っぽいか、アホか、下心を丸出しの人とか、変にゲスだったりとか、なんか弱点がないととっつきにくいんですよ」

言われて、レックスは思えばティナも魔王討伐を志していた頃の昔の自分に対しては、妙によそよそしく、言われたことは素直になんでも聞き入れていたことを思い出す。

そしてすぐさま気付いてしまったのか「僕は……真面目で威厳だけしかないよな?」と、ティナが挙げた何かに該当していないかを確認するが、ティナは視線を合わそうとはしなかった。

「とにかく、そういうわけでヴァルマンの街までの護衛を頼むぞレックス、そしてその仲間たちよ。では城門前に馬車を待機させているから向かうとしようか」

「あ、お待ちくださいお姉さま」

用件だけを伝えるとニニアンはそそくさと移動を開始、その後にクルルがパタパタとついていく。面倒なことになったとレックスも苦い顔をしながらも、レックスも二人の後を追った。

苦い顔になったのも、レックスの中では鏡は失礼の塊という認識があるからだ。一体どれだけ気を遣わなければならないのかと、レックスはこの先を想像してげんなりとする。

「結局……クルルの奴は誰が好きなのじゃ? レックスもクルルに興味が無くなっていたように見えたが……のう、そこの乳でか女、パルナといったか? お主何かわかるか?」

「あらぁ~フラウ様ったらおませさん。さっき女王陛下に怒られたばかりじゃないですかぁ。他の人のプライベートを覗こうとするのは品がないと思いますけど?」

「き、貴様なんじゃその態度は⁉ 無礼であろう! 妾を馬鹿にしておるのか⁉ レックスとクルルの友人だからと大目に見てやるつもりだったが今のは我慢ならん! 打ち首にされたいか⁉」

「いいのかしら~? 私、アースで戦うことになる戦力の一人なんだけど。あなたの勝手な独断で打ち首にしちゃったりして大丈夫なのかしら~? あーあ、デコピンあと一発でデミスを倒せそうなくらいまで追い詰めれても、フラウ様が私情で戦力を削ったせいで負けちゃうなー。女王陛下はなんていうかしら?」

「っぐ……お、おのれ!」

「まあそれに、私たちがこの世界で犯罪者になっても。アースに行けばいいだけの話だし。アースは別にフラウ様が統治してるわけじゃないものねぇ?」

「ず、ずるいぞ! 妾もまだ知らないアースの地に逃げるのは卑怯じゃ!」

早速パルナの玩具にされているフラウを見て、ティナは「うわぁ」と驚嘆の声をあげる。

「でもさすがに可哀そうだから教えてあげると、クーちゃんが好きな人は別にいるわよ。いつも、もっとガンガン攻めなさいよってじれったくなるくらいだから、相手が誰なのかは見てればすぐわかるわ」

「そ、そうか! ふむ……勇気を出せずにいるわけだな? っふ……仕方ないのぉ! 妾がじきじきにクルルの奴をサポートしてやるとするか」

必要な情報をとりあえず得たからか、パルナとの相手は分が悪いからかはわからなかったが、フラウはそれだけ聞くとそそくさと先に行った三人の後を追う。

直後、ティナは無表情でパルナを見上げ、服の裾をクイクイッと引っ張った。

「パルナさんのこと棚あげ魔女って呼んでいいんですか?」

「ん~どういう意味で言ってるのかしら? ……あら?」

そして、パルナの手元に魔力が籠められると同時に、突然クルルたちが先に向かった大通りが騒がしくなる。ニニアンとフラウを護衛するために同行していた兵士たちが次々にガシャガシャと鎧が擦れる音を鳴らしながら、ニニアンとクルルを守るべく前の方へと走り出す。

何事かとレックスとティナが後を追うとそこには、兵士たちが囲んだ大通りの中心に、二体のケンタ・ウロスに引かせた馬車の上に立って、両手に鞭を持って仁王立ちする筋肉質な大女の姿があった。