軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

絶対的な強さの壁-12

「固いコトを言うナ。ト言うヨリ……今からそんなコトでドウスル? 戦イはコレからだゾ?」

「ペス。悪いが今大事な話をしている最中なんだ。向こうでアリスたちのこと見てやっててくれないか?」

「む、ワカッタゾ」

「ちょっと待て、どうして僕の言うことは聞かないのに師匠の言うことはそんなに素直に聞くんだ」

「獣牙族たる者、ボスの言ウコトは絶対」

「納得はしたが、なんか腹立つな」

そこで、不服そうにトテテとアリスたちの元へと向かうペスを見つめるレックスに、鏡は「カリスマ」と、意味ありげな笑みを浮かべてポンッと肩を叩いた。

「とりあえず大陸を渡れたわけだけど。どこまでラストスタンドで進む予定なのかしら鏡ちゃん? レジスタンスの子達にもらった地図によると……今、大体この辺りだけど」

話を進めようとタカコが地図を広げて一点を指差す。現在鏡たちは、広大なロシア大地の南端に位置するウラジオストクと記された場所へと訪れていた。

現在の場所に至る通りにも点々と噴水が設置された美しい場所で、かつてここを通り歩いていた人類がいたのだと想いを巡らせると、どこか切なくなってしまう。

「ていうかロシア広すぎだろ……日本の何倍あるんだよ。こっから目的地のモスクワまでどれだけの距離があるんだ? 自分の足で行こうと思うと気が遠くなるな……まあそれを半日で移動できるラストスタンドがあるからいいけどさ」

「これだけ広いと、迂回して偵察する意味もあまりないように思えるわね。私たちは向こうの状況を一切知らないわけだし……どこからが、見張りの届く範囲かもわからないじゃない?」

「確かにな……いっそのこと一度ラストスタンドで相手の基地まで向かって、どんな場所なのか偵察してから行くか? どうせノアと同じく地下にあるんだろうし……最初に上を通って様子を見るくらいどうってことないだろ」

その鏡の提案に、タカコとレックスは頷いて答える。

「よし、そうと決まれば出発しよう。食料も三日分も載せてないし……偵察して慎重に動くことも考えて、早めにモスクワに向かわないと」

「ちょっと前にここに着いたばかりじゃない。もう少し休憩させてあげましょう? もしかしたら……これから休憩する暇なんて与えられないかもしれないじゃない?」

「ん~……まあそうかもしれないけどさ……」

休憩と聞いて鏡はチラッとアリス、メリー、ペスの三人へと視線を向け、体力を使い果たさんとばかりにキャッキャと水しぶきをあげてはしゃぐ三人を前に「あれ休憩っていうの?」と、渋い顔を浮かべた。

「…………ッ?」

その瀬戸際、アリスとメリーに混ざって水を掛け合っていたペスが、何かに気付いたように耳をピクピクと動かし、周囲をキョロキョロと見回す。それを見ていたタカコと鏡とレックスの三人は、ペスが獣牙族であることから即座に何かが接近しているのだと判断し、各々身構えた。

「異種族か? タカコちゃん……そっちなんか見えるか?」

「見る限りでは何もいないけど……レックスちゃんはどう?」

「いや、僕もだ。獣牙族が検知出来る気配の範囲は知らないが……すぐに襲い掛かってくる心配はないんじゃないか師匠?」

「いや、もしかしたら異種族じゃない可能性もある。姿と気配を消すスキルを持つ連中がいるくらいだ……ペスが反応したってことは気配があるんだろうけど、用心に越したことはない。むしろ、まだ敵のいる場所から遠く離れてるからって油断しすぎてた」

とにかく、姿が見えない相手だった場合、無防備に遊んでいるアリスとメリーが危ないと判断し、タカコはメリーの元に、鏡はアリスの元へと瞬時に移動し、その身体をひょいっと持ち上げる。

「お、おいタカコ⁉」

「ちょ、どうしたの鏡さん⁉ 何かあったの⁉」

「いいから、大人しくしてろ! 最悪、ラストスタンドに逃げ込むんだ!」

唐突な行動に二人は困惑するが、すぐさま真剣な表情から何かが近付いて来ているのだと察し、口を閉じて二人とも身を任せた。

「ペス、今何に反応した? 敵はどこから来ている? どの方面を警戒していればいい?」

鏡とタカコがアリスとメリーの身を確保している間に、レックスがペスの元へと近付いて何に反応したのかを確かめようとする。

ペスは、北西の空をジーッと見つめていた。ジーッと見つめて耳をピクピクと動かしていた。

「多分……モウ遅イ。ウチも……想定外」

「なんだと?」

既に手遅れという言葉と、頬に汗を垂らして不安そうに立ち尽くしているペスを見て悪寒を抱き、レックスは「何がどう手遅れなんだ?」と真意を確かめようとする。その直後――、

「全員伏せろ!」

鏡の叫び声が聞こえると共に、それは現れた。

鏡たちのいる上空を思わず屈んでしまうほどの突風を巻き起こしながら通り過ぎ、空中でU字にターンして戻ってくるとそのまま上空でピタリと停止する。

それは、銀色の身体を持ったラストスタンドだった。だが、ここに飛んでくるまでの最高速度は明らかに鏡たちが乗っていたラストスタンドを凌駕していた。瞬時に鏡たちは、バルムンクが乗っていた他のラストスタンドよりも性能の高かったものを脳裏によぎらせ、かなりヤバい状況にあると頬に一滴の冷や汗を垂らした。

狙いを定められないようにすぐさま草むらの影か、屋外の影に隠れたかったが、視野の広い場所で休憩していたのが仇となり、一同は蛇に睨まれた蛙のごとく、突如現れた銀色のラストスタンドがどう動くかを黙って見続けるしか出来ない状態となる。

「何だ……?」

しかし、銀色のラストスタンドは品定めするかのように上空で鏡たちを見下ろすだけで、何も仕掛けてはこなかった。

「こ、このラストスタンド……う、動かねぇ!」

そしてそのまま緊迫した空気が漂ったまま、数十分にも感じられる数分の時間が流れる。一同は派手に登場するだけ登場して何も仕掛けてこない意味深なラストスタンドに悩まされていた。

「え、え? どういうこと……?」

「いや……俺に聞かれてもわからん。最悪、制限解除をしてから猛ダッシュしてアリスだけでも逃がそうと思ったけど、何? 何なのこれ、相手は一体何がしたいの?」

どう攻撃を仕掛けようか悩んでいるのかと思いきや、銀色のラストスタンドは上空からゆっくりと降下し、鏡たちの目の前へと降り立つ。

そこから暫く、まるで攻撃してこいと言わんばかりに無防備な姿をさらしたままラストスタンドは何もしないまま動かず待機し続ける。

そして何がしたいのかわからないまま数分が経ち、鏡に抱えられたアリスのお腹がぐ~っと情けない音をたて、アリスが恥ずかしそうに徐々に顔を赤くさせた頃、銀色のラストスタンドの操縦席の装甲が『ガシュッ』と音をたててゆっくりと開かれた。

「いつ攻撃を仕掛けてくるのか待っていましたが……どうやら戦って勝つことよりも、仲間を守ることを大事に考えている方のようですね……リーダーとしては30点。人柄は100点……と、言ったところでしょうか?」

まるで、試していたかのような言葉を吐きながら、黒髪のポニーテールを左右に揺らし、美麗な容姿ながら、規律に厳しそうなお堅い表情の女性が操縦席から姿を現す。遥か昔に存在した軍人を連想させるペレー帽と制服を身に纏った若い二十代前半の女性で、女性は姿を見せると頭に被せていたペレー帽を取って頭下げる。

「初めまして。私はロシアの地下施設ガーディアンに所属するアースクリア、フォルティニア王国出身……フローネ・バイルシュタインと申します」