軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

絶対的な強さの壁-11

その瞬間、減速して飛行するラストスタンドの横を鳥が通り過ぎ、メリーは今まで感じなかった違和感に襲われ、一滴の冷や汗を垂らした。よくよく考えれば、それは明らかにおかしいことだったからだ。

人間は、地下に逃げ込まなければ生き残る術はなかった。そうしなければいけない脅威が居たからだ。なのに、地下に逃げ込まなかった動物たちは、普通に大昔から現代に至るまで生き延びている。それは、どこか矛盾していた。

「確か……タカコの推測だと、獣牙族や喰人族じゃない敵がいるって言ってたな」

「……それを確認しに来栖のとこに行くんだろ? この世界が異種族のせいで滅ぼされたってのは来栖の嘘だったんだからな」

一瞬、その奇妙さに臆しそうになったが、鏡の言葉でメリーは「そ、そうだな」と気を取り直す。

「今度こそ……全て話してもらう。メノウが殺されなきゃいけなかった理由。俺たちをこの世界に呼んだ本当の理由。あいつらがやろうとしていることのその全てをな」

「その理由が納得のいかないものであれば……どうするつもりでござるか?」

希望だけを語り、その結果について語ろうとしない鏡に釘を差すように、朧丸が鏡の頭の上に突如姿を現す。そしてその朧丸の問いかけに、鏡は無言のまま表情を険しくさせた

「あ、朧丸いたんだ」

「ずっとご主人の頭の上にいたでござるよ? 精神を集中するために気配と姿を消して瞑想をしていたでござるよ……しかし、どうして見つけた瞬間に某を掴むでござるかアリス殿」

「ピッタちゃんがここを出る前に、朧丸は油断すると姿を消したまま暫く出てこないから掴んでおくといいよって」

「いや、それピッタ殿が某を玩具にしようとするから普段隠れているのでござってな?」

ピッタよりも握る力が強いのか、いつも以上に青ざめながら朧丸は鏡に助けを乞う。その瀬戸際にアリスは意味ありげなウィンクを鏡に見せた。

「鏡さん、変に悩む必要なんてないはずだよ? ボクたちは、ボクたちの目的のために突き進むだけ。……いつだってボクたちはそうしてきたはずだよね? サルマリアでの戦いの時も、クルルさんを助けに行った時も」

「そうだな……でも今回は色々と事情が違う」

「どういうこと?」

「今までは、それが絶対に正しいって確信が俺にはあったんだ。だから……それに向かって全力でぶつかっていけた。でも今回は見えていないことが多すぎる……いや、そうじゃなくて」

鏡の言わんとしていることがわからず、アリスだけではなく、メリーも首を傾げる。

「それをこれから知りに行くんでしょ? それを知ってから、鏡さんが正しいと思った選択をすればいいんじゃないかな?」

「簡単に言うでござるな。アリス殿は?」

「どういうことさ?」

「ふぐぅ⁉ 握る力を強めるのはずるいでござる! もっとちゃんと某と会話して!」

何もわかってないと言われたような気がしてアリスは少し不機嫌になりつつも、その真意を確かめるために掴んだ手を放して朧丸を開放する。

「ふはは! 馬鹿め!」

直後、朧丸は再び透明化してその場から消え去った。

「ああ、逃げた!」

「ふはははは! 油断したでござるなアリス殿! 某を苦しめたバツでござる! そのまま意図がわからないことに悩まされるがよい! ふふ……ふーはっはっはふがぁ⁉」

音の発信源へとにじり寄ったメリーは、「声で位置がもろばれだぜお前」と、透明化した朧丸の胴体を鷲掴む。元々レジスタンスの奪還班として、音や気配を頼りに外で戦ってきたメリーにとってこれくらいのことは朝飯前だった。

「放してやれ。朧丸も朧丸なりに、俺のために言ってくれたんだ……多分な」

「さ、さすがご主人でござる。某のことをよくわかっている」

ようやく解放され、朧丸は再び鏡の頭の上へと乗って一息つく。

「いいでござるかアリス殿? 納得いかないものであればぶっ飛ばせいいなんて、ご主人の悩みはそんな簡単なものじゃないのでござるよ」

「じゃあなんなのさ!」

自分よりも朧丸の方が鏡を理解している。そんな言い回しに聞こえたのか、アリスは頬を膨らませながら鏡に視線を向けて答えを問う。だが、鏡は難しい表情のまま何も言おうとはしなかった。

「鏡さん……?」

「ご主人の中でもまだ答えが出ていないのであろう……そっとしておくでござる」

だがその瞬間、メリーが再び朧丸の身体をガッと掴み、「お前が無駄に意味深発言したから気になってんだろうが、何に悩んでるかくらい言え」と睨みつけた。

「ぐ、ぐぁぁぁ! か、仮にでござるが……来栖の言い分に正当性があった場合。貴殿らはどうするでござる? 納得したのであれば、それからどうするでござる?」

「どうって……」

それを聞いて、メリーは鏡が何に悩んでいるのかを理解すると共に、表情を険しくした。「どうする?」と聞かれて、「何を?」とはならなかった。何を言わんとしているのか、瞬時に理解できたからだ。

その後、一旦の休憩場所が見つかるまでの間、二人は険しい表情を浮かべて思い悩んだまま、一言も言葉を発さなかった。

そんな二人をただ一人アリスだけが、どこか悲しげな表情を浮かべて見つめていた。

「行くぞアリス……おらぁぁぁぁあ!」

「メリーさん、はしゃぎすぎだよ。あ、ほらぁ……濡れちゃったじゃないか!」

「その割にはうれしそうな顔してんじゃねえか」

日本海を越えた先にある街のビルやマンションなどの建築物に囲まれた場所に、遠くを見渡せるほどに広い噴水のある広場を発見し、一同はその場所へと一度降りて、休憩を挟むことにした。

大理石で作られ苔や雑草の量が周辺よりも少ないそこは、中央にある噴水から湧き出た水が広がった泉で、どういう仕組みで動いているのかはわからなかったが、数分に一度、泉の所々から中央の噴水と同じく水が噴き出し、周辺に虹を作り出す神秘的な場所だった。

その広さから敵に突然襲われる心配もなく、アリス、メリー、ペスの三人は悠々と湧き出る水に足を着けてはしゃいでいた。

「レックス、ミロ、ワザを覚えタ。ドウだ? ピューって水ガ出るンダ。ウチはこれを水鉄砲と名付ケタ。ドウだ? 凄くないか?」

「いいことを教えてやろうかペス? 僕はな? お前のせいですでにかなり疲れてるんだ」

そんな中、レックスとタカコと鏡の三人は、この場からどう動くかを相談し合っていた。