軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ぶっ倒して終わりだろ?-13

『ボロボロであろうとここに辿り着いたという事実に変わりはない。だが、随分と大所帯だな……一人見知った顔がいることから察するに、かの村人の知り合い、それも正規のルートではない方でここに来たか?』

心を見透かすかのような視線をダークドラゴンはメノウへと向ける。するとメノウは嘘をついても無駄と早々に判断したのか、その問いかけに大人しく頷くとダークドラゴンは、『やはりか』とヤレヤレと溜息を吐いた。

「どうしてわかったんです?」

そう言ってティナは首を傾げる。

『簡単なことだ。かの村人との取り決めにより、魔王が倒されてここに誰かが訪れるであろう可能性は極めて低い。かといってこの場にいる人数分のチケットを手に入れるのはかの村人がいなくなった後の三年という期間では不可能だ。そしてそこに、三年前……私の前に姿を現した魔族の男がいる。これだけの情報があれば充分であろう?』

「確かにそうですが……随分と落ち着いてますね。てっきり不正をするなと凄く怒られるかと思ってドキッとしましたよ」

『かの村人が見つけ出したあのルートは相応の実力がないと切り開けぬ。少なくともこの場にいるお主達の内の何人かは優れた力を持っているのだろう? ならば我は認めよう。必ずしも正規のルートを通ってきたものだけにその資格があるとは限らぬことを我は教わったのでな』

その言葉が予想外だったのか、暫くダークドラゴンの圧巻の風貌を見て表情を強張らせていた一同も、ほっと息を吐いて胸をなでおろす。

『それに……お主達がいずれ来るのはわかっていたことだ』

「どういうことかしら? まるで私達の考えが全て分かっているかのような言い草ね」

ダークドラゴンの不可解な言葉に、タカコが腕を組みながら怪訝な表情を浮かべる。少なくとも、鏡の後を追おうと考えたのは、鏡がいなくなってからのことだ。それも、全員がそれぞれ違うタイミングで鏡を助けに行く意志を示した。アリスやティナやパルナに至ってはつい最近だ。それに対し、『わかっていた』という言葉はタカコ以外も不可思議に感じていた。

『無論、この日にお主達がやってくるということまでわかっていたわけではない。それに来ると予想したのも我ではない……かの村人だ』

「かの村人……鏡さんのことだよね? 鏡さんは一体何をダークドラゴンさんに言ったの?」

鏡という言葉を聞いて、真っ先に反応したアリスはダークドラゴンの元へと駆け寄る。

先程まで自分の風貌に戸惑いを見せていたとは思えない程に真っ直ぐな瞳で見つめてくるアリスを見て、ダークドラゴンは改めて、『あの男はやはり面白い』と、恐怖を押しのけてしまう程に思われている鏡の存在の大きさを確認した。

『知っているかもしれぬが、我の元に自力で辿り着いた者には願いを一つだけ叶える権利を与えている。そして我はかの村人にも同じように願いを叶える権利を与えた』

「鏡さんは……一体何を願ったの?」

『お主達がここに到着した時、仮にその手段が不正なルートであったとしても、全員を次のステージへと送りこむことを許可して欲しい……かの村人はそう願った』

その言葉に、一同はどうして鏡がそんな願いをしたのかわからず、困惑した表情を浮かべる。だが、その中でアリスだけ意図を理解したのか、嬉しさを抑えきれないかのように笑みをこぼしていた。

『もしも自分の帰りが遅くなった場合、お主達が必ず助けに来てくれるとかの村人は確信していたのだ。そしてその時はきっと自分自身も苦戦を強いられているはずだと村人は言っていた。故に、村人はお主達が来ることを強要しない形で願ったのだ』

三年前にそんなやり取りがあったことに素直に驚き、一同は息を呑む。するとダークドラゴンは、『かの村人から伝言を預かっている』と呟き、受け取った言葉をそのまま読み上げるように口を開いた。

『はよ助けて』

その言葉を耳にした瞬間一同は、『鏡らしい言葉だ』や、『三年も前にこうなることを予測していなんてさすが鏡さんだ』などの言葉は一切頭に浮かばず、唯々黙って胸の内から高まる熱い何かに心地よさを感じていた。

自分達のために何かをするのではなく、ただ単純に、鏡が自分達に助けを求めている。助けなんて必要ないと思える程に強く、いつも自分達を守って戦ってくれていた男が、自分達を頼りにしてくれている。自分という存在を求めてくれている。

共に戦いたい。その強さに少しでも追い付きたい。助けになりたい。鏡を知り、そう考えたことのある者にとって、本人がそう思ってくれていることに嬉しさを感じずにはいられなかった。

『だが、かの村人がまだ生きているかどうかは我にもわからぬ。もう三年も前のこと……生きている保証はどこにもない』

「ちょ、やっぱり次のステージって命の危険性があるんじゃない!」

死んでいるかもしれないと言われ、同じようにこみ上げてくる胸の熱さに酔いしれていたパルナも顔をぶんぶんと振り払い、冷静にそんな危険な場所にアリスを連れていくわけにはいかないと考え直す。

『当然だ。強き者を求めている……つまりはそうなる。もっとも、次のステージの事に関しては次のステージに赴いた者だけが知れることだ。何が待ち構えているかは我には言えぬ』

「大丈夫、鏡さんは生きてるよ」

すると、何の心配もしていないのか、相変わらずはにかんだ笑顔を浮かべたままアリスはパルナに言葉をかけた。

「なんでそう言い切れるのよ」

「あの人は死なないよ。ボク……鏡さんを信じてるから」

アリスから放たれたその言葉と笑顔を見て、パルナは仮に次のステージがどれだけ危険だったとしても、この期に及んでアリスを引き留めることは無理だと瞬時に悟り、軽くやれやれと溜息を吐くと少し微笑を浮かべ、「そうね」とだけ答え返した。