作品タイトル不明
ぶっ倒して終わりだろ?-12
『よくぞ……全ての試練を乗り越え、我がもとに辿り着いた』
仄かに青緑色の光を放つ壁に包まれたドーム状の広大な空間。真っ白に輝く床の光を光沢のある黒い身体で鈍く反射させている巨大なドラゴン。脈のように全身に巡らせた青紫の光が妙な神々しさを放つその存在は目の前に降り立った8人を見据えると、重々しい声色を脳内に直接響き渡るように言い放った。
『……随分とボロボロだな、道中にいた試練のモンスターに余程苦戦したように思える』
「あ、いえ。このボロボロ加減は大体タカコさんのせいなのでお気になさらず。まあ、道中のモンスターも強かったですけど」
ティナはげんなりとした表情で、ツインテールをがっくしと垂れ下げる。
アリス、メノウ、レックス、クルル、ティナ、パルナ、デビッド、タカコの8人が聖の森の中心部で、このダークドラゴンの住まうダンジョンへと向かおうとしてから一週間が経過していた。
一同はティナの回復魔法のおかげで傷こそないが、何故か纏っている衣類から背負っているリュックサックにかけて、ボロボロの状態となっていた。
そうなってしまったのもタカコの新たなスキルのせいだった。
スキル……気合噴火
効果……体内に眠る生命エネルギーの力が、己が意志により流れ込んで爆発を巻き起こす。
一見、体内に眠る生命エネルギー、『気』と呼ばれている力を自在に扱えるようになるスキルに見えるがそうではなく、タカコが放つ全ての攻撃が例え空振りでも爆発が伴うというスキルだった。無論、力をこめていない軽いビンタやチョップなどに爆発は伴わないが、タカコが少しでも気合を入れて拳を振るったりすると、気合を込めた部位から爆発が発生してしまう。
タカコ自身も全然コントロールが出来ておらず、ここに来るまでの道中でモンスターと味方問わずに大きなダメージを与え続けてきた。
敵にタカコの殴打が命中した時は、『浸透する破壊の衝撃』による防御力無視と気合噴火による爆発で粉砕してとてつもなく頼もしかったが、タカコの攻撃が外れた時は勢い余って爆発が味方にも当たるため、結果的に一同はこうしてボロボロになっていた。
『そこの……金髪の者は一体何があったのだ? 特に酷いが……』
「よく気付いてくれた。もっとこいつらに僕の扱いが酷すぎる件について言及してやってくれ」
8人の中で、ボロボロを超えて焦げ焦げになっているレックスを見て、ダークドラゴンが少しだけ困惑した表情を浮かべた。
タカコを戦いのメンバーから外そうにも、パーティーの中で最も強いタカコを外すと苦戦を強いられ、一歩間違えれば死の危険性もあったためそれならまだ爆発の方がマシと一同はタカコを戦闘に参加させた。だが、タカコの爆発は近距離で喰らわなければ大きなダメージにはならないとはいえ、離れていても軽く吹き飛んでしまうくらいの威力はあり、出来ることなら回復の手間を省くために防ぎたいとタカコを除く全員が考えていた。
そこで活躍したのがレックスだった。レックスがレベル100になった時に新たに覚えたスキルとレベル200になった時に覚えたスキルが、タカコのそのスキルとの親和性が高かったからだ。
スキル……スーパーアーマー
効果……地に足を己が意志により固定させることが出来る。
ダメージを防ぐことは出来ないが、どんな衝撃が起きても吹き飛ばずに耐えぬくことが可能なスキル。
スキル……リベンジ
効果……受けたダメージを蓄積させ、己が力を発揮すると共に上乗せる。
という、受けたダメージを蓄積させておくことが出来る。どんな強敵相手にも生きてさえいれば逆転勝利を狙える如何にも勇者らしいスキルを持っていたことにより、一同はレックスを盾にしてタカコの爆発を防ぐ手段へと出た。
近距離で爆発してもレックスは吹き飛ばないため盾として安定性もあり、受けたダメージはそのまま戦闘に使えるという一石二鳥。無論全ての爆発をレックスを盾にして防ぐことは出来なかったが、おかげで一同は服をボロボロにするだけで楽にこのダークドラゴンの間へと来ることが出来た。
『ふぉっふぉっふぉ! ベストパートナーですなぁ!』
『デビッドさん、なんでちょっと嬉しそうなの?』
まるで自分を受け入れるかのようなスキルを持ち合わせたレックスに対し、タカコが熱い視線を送っていたのを見て、遂数時間前にデビッドが嬉しそうな表情を浮かべていたのをティナは今も覚えている。
実際、このダンジョンに来れたのも二人のおかげだった。リベンジによる力でダメージを蓄積するためにクルル、パルナ、アリスが放った魔法をレックスは痛みを顧みずにその身で受け、再度三人とメノウがこのダンジョンに繋げるための穴に魔法を放った後、叫ばなくても使える技、『真・剛天地白雷砲』に受けたダメージ分の威力を上乗せして放ち、最後にタカコがチャージブロウをスキルの力と共に地面に放つことで、土塊が再生しきる前にこのダンジョンにまで通ずる穴を開通させたのだった。