作品タイトル不明
向き合うこと、それが始まり-7
全力で、王城に向けて投げ飛ばした。
「ええ!? な、何やってるの鏡さん! お父さんが!」
「アリスも行ってこぉおおおい!」
「え? ちょ? えええええええええぇぇ……!」
そして続いて、鏡はアリスを優しく抱き上げると、魔王と同じようにして王城にめがけて投げ飛ばす。
そして、投げ飛ばされた二人は兵士達に邪魔されることなく、綺麗に放物線を描きながら飛行すると、あっという間に王城へとたどり着いた。
「ちょぉおおお! 魔王さんは別にいいですけど、アリスちゃんは投げちゃダメでしょ! 怪我をしたらどうするつもりなんですか!」
「次は君が飛ぶんだよ?」
「っへ? え?」
「これが作戦Bだから」
「え? ちょ! 作戦Bってなんですかぁぁぁぁぁぁ…………!」
次に、鏡はティナの背負っている大きなリュックサックをガッチリと掴むと、優しい笑顔を浮かながら王城へと投げ飛ばす。
「ぶ、ぶつかるぶつかぁぁぁあああ!」
ティナは悲鳴を上げながら、同じく綺麗な放物線を描いて王城へと到達する。
ティナは投げられた勢いでそのまま王城の壁に激突してしまうのではないかと肝を冷やしたが、王城に辿り着くと同時に風のような黄緑色の輝きがクッションとなり、壁にぶつかることなくゆっくりと降ろされた。
「だ、大丈夫ティナさん?」
「し、死ぬかと思いました。あの人……いつか絶対殴ります」
鏡が魔王を最初に投げたのは、魔王の魔法でいくらでも受け止められる手段があると判断してだった。実際、その考えは当たっており、魔王は最初に風を操る魔法を駆使して着地すると、そのまま同じ原理でアリスを受け止めた。
「あ……また飛んできました」
暫くして、ティナとアリスが飛ばされた位置とほぼ同じ場所にデビッドとメノウが飛来してきたため、魔王は同じようにして魔法で受け止める。
そして最後にタカコが飛来したが、何故かタカコだけ自分達とは違う王城の壁へと飛んでおり、そのまま城壁へドガァッ! と大きな音をたてて激突する。
「あれ……絶対鏡さんわざとですよ」
「多分そうであろうな。ヴァルマンの街でタカコ殿に見当違いな場所へ投げられたのを鏡殿は相当怒っていたからな。さすが鏡殿……こんな状況で復讐とは」
そして、その光景を目の当たりにして、遠い目をしながらティナとメノウはそうつぶやく。
実際、鏡はタカコを投げ飛ばす瞬間、「タカコちゃんさようなら!」と、いつぞやタカコに吐かれた言葉を吐き返していた。
一応、タイミングを誤ったが魔王は同じように風を操る魔法をすんでのところで展開していたおかげか、城壁に激突したタカコはダメージを一切受けていないかのようにピンピンした様子で城壁から這い出るとすぐさま魔王達と合流する。
「いやー……すまんすまん。手元がくるった」
そして全員を投げ飛ばし、一人になった鏡は、その圧倒的な身体能力を駆使して兵士達を蹴散らして進み、すぐさま王城の前に待機する魔王達と合流して何喰わぬ表情でそう言った。
「んふふ……いいのよ? 手が滑っちゃったなら、仕方がないわよね?」
対するタカコは笑顔だった。それを見て、一同は直感的にこの醜い争いは今後も続くのであろうなとなんとなく予感する。
その後、一同は城内へと突入した。城内では、騒ぎを聞きつけてあらかじめ来るのを予測していたのか、多くの兵士達が既に待ち構えていた。
要塞のような広大な城の中をあてもなく探していれば、いずれ自分達が危機に陥ると危惧した鏡は、特に城内に詳しいデビッドに、クルルとレックスがいる可能性のある場所へと案内してもらっていた。
既にクルルとレックスがいる可能性のあった牢屋や私室には向かったが誰もおらず、他に可能性があるとすればこの城の最上階、王の間しかないということで、現在、外での状況とほとんど変わらず逃げながら王の間へと向かっている真っ最中である。
「はぁはぁ……、ヘキサルドリア王国の初代王は絶対アホです……こんな馬鹿みたいに長い階段を使って王の間に謁見させに行くとか……アホです。アホとしか言いようがありません。普通謁見しやすいように一階に作るでしょう」
王の間は、城の最上階に存在しており、各階層全てに繋がる円形に渦巻く螺旋状の階段を上る以外に辿り着く方法はない。
螺旋階段の中央は昇降路で移動するように大きく穴が空いており、一階から最上階までを見渡すことが出来るが、あまりにも果てしなく長いその階段を見て、体力に自信のないティナが青ざめた表情を浮かべたのが丁度今から数分前の出来事である。
「普段であれば、螺旋階段の中央部分にある昇降路で魔力さえ持ち合わせていれば移動できるのですが……やはりこの状況、その昇降路そのものの機能が停止させられていましたからな。ここは根気よく昇っていくしかありません」
「くぅ……昇降路を止めたやつを殴りたいです……!」
ティナは既に体力の限界が近付いていた。ただでさえ普通に昇るのにも根気が必要な道のりにも関わらず、王の間に近付けば近付くほどに、敵対することになる兵士達の実力も上がっていたからだ。
今では、平均レベルが80を越える能ある役割を持つ兵士達が大量に立ち塞がり、鏡達は苦戦を強いられていた。
「うぇぇ……まだ来るか」
げんなりした表情で鏡はそうつぶやく。
足場の悪い螺旋階段の上では、身体能力の高い鏡も身動きがとりにくかった。というのも、階段の進む道を遮るように兵士達が配置されているため背後に回ってスタンバトンを当てるという手段が使いにくいからである。
「鏡殿! 前方から大量に押し寄せて来ているぞ!」
「鏡様。下からも大人数が押し寄せて来ています! どうされますか!?」
そして、一度引こうにも背後からも敵が押し寄せて来ていたため、更に戦いにくい状態となっていた。
「このままじゃ挟み撃ちだよ! どうするの鏡さん!」
タカコの背に隠れて守られながら移動していたアリスも、さすがにこの状況がまずいと思ったからか、取り乱してそう声をあげる。
さすがにこの状況で誰も殺さずに押し通るのは難しい。そう判断した鏡も、気難しそうな表情で瞼を閉じると、立ち止まって一考し始める。
「……タカコちゃんはいけるとして、メノウ、デビッド、魔王! この螺旋階段、ショートカットしながら進むことはできるか?」
するとすぐに鏡は何か思いついたのか、目を見開かせながらそう叫びだす。
ティナとアリスには、鏡が何を言っているのか理解できなかったが、メノウとデビッドと魔王はその意図を理解したのか、即座に真剣な表情を浮かべると軽く頷いた。
「よし……それじゃあタカコバズーカだ! いや、俺が投げるから鏡バズーカだな」
そして思いついたのは作戦Bだった。
「ちょっと待ってください。それ誰が飛ばされるんです?」
「ティナたんとアリスたん」
「お断り致します。大体にしてこの螺旋階段のどこに投げるんですか」
「階段の柵から身体を出して、垂直に真上に投げ飛ばす予定。ティナとアリスたん以外は自力でショートカットして突き進むからこの状況でも手早く移動できる」
ティナとアリスは思わず、「この人何言ってるんだ」と言いたげな歪んだ表情で絶句する。