軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二百六十三話 フォンステ国王の選択

長く続いた戦争も一息ついたところで、ドゥルバ将軍とノネッテ国の軍隊はもと居た場所――カヴァロ地域へと戻すことにした。

一方で俺はというと、まずルーナッド地域へ寄った。

王都を攻め落とした際に王族を土地から追い出したことから、統治者不在な状況なので、代理の領主――代官を任命するためだ。

代官といっても、新たな領主を立てるまでの場繋ぎなので、順当にルーナッド地域に詳しい人に任命することにした。

「いままで通りで大丈夫だから、しばらくよろしくね」

「短い間になるでしょうが、それまで、懸命に務めさせていただきます」

代官の任命を終え、次に向かったのはフォンステ国。

『聖約の御旗』と事を構えることになった原因の国なので、ここまでの顛末を愚痴りにいくことにした。

フォンステ国の王都に入ると、すぐにフォンステ国王と面会することになった。

今回は玉座の間ではなく、王の執務室――いわば私室に案内された。

どうしてだろうと内心で首を傾げていると、フォンステ国王がいきなり頭を下げてきた。

「我が国を発端として、ミリモス王子には多大なるご迷惑をおかけした。王という立場ゆえ、公式な場所では謝罪できぬため、こうして部屋に呼びつけたことも合わせ、謝罪する」

唐突な謝罪には驚いたけど、俺は笑顔で言葉を受け入れることにした。

「確かに騒動が起こりましたが、終わってみれば、ノネッテ国にとって悪い結果にはなりませんでした。フォンステ国王が直に謝罪してくださいましたし、ノネッテ国とフォンステ国の間に禍根は残らないと、明言いたします」

「おおッ! そう言ってくれると、胃に詰まった石が取れた心地だ」

ひどく安心した様子のフォンステ国王の様子に、俺は首を傾げてしまう。

「そんな安堵するようなことでしょうか?」

「当然だとも。ノネッテ国には、先の一騎討ちだけでなく、砂漠の通商路でも世話になっているのだ。そして今や、ノネッテ国は大国の仲間入りを果たしている。機嫌を損なわせようものなら、我が国など経済と武力で灰燼に帰してしまう」

「ご冗談が上手ですね。ノネッテ国は大きくなりましたが、騎士国や帝国に比べて国土は半分にも満たない大きさです。大国なんておこがましいにもほどがありますよ」

「国土の多少はあれど、小国の身から見れば、三国とも同じ大国に見えるとも」

冗談を交換して軽く笑い合ったところで、フォンステ国王は真面目な顔に戻った。

「ミリモス王子。この後のノネッテ国は、どのような方針で政を行うか、教えていただきたい」

「俺が知っている国の舵取りのことは少ないですよ? 具体的に、どのあたりのことを知りたいんですか?」

「我が国が属する、大陸中原。ノネッテ国は、いま以上に進出する気があるかどうだ」

難しい質問に、どう答えたものかと考える。

その後で「これは俺の考えですが――」と前置きしてから、予測を語ることにした。

「度重なる戦争で国費を使いましたし、新たに領土に編入した土地の治安回復作業もあります。数年間は、戦争はしたくありませんね」

「ノネッテ国は大陸中原に対し、大した興味はないと?」

「そもそも、攻め入る理由がありませんよ。今回の戦争だって、先ずは援軍を要請されたから出張って、それからなし崩しに状況に飲み込まれただけですしね」

「それは言い換えれば、火の粉が飛びかかってきたのなら、逆に火元まで飲み込む用意があるということか?」

「さて、どうでしょう。その火の粉を払う軍の手が動くかどうか。『空の倉庫を崩したとて黄金が生まれ出るわけではない』ですし」

『ない袖は振れない』と同じ意味の慣用句を伝えると、フォンステ国王はしたりと頷いた。

「資金や食料が欠けては、軍は満足には動かぬよな。これは少し、困ったことになるやもしれないな」

「何かしらの懸念があるので?」

「ああ。ミリモス王子が『聖約の御旗』を潰したことで、周囲にある小国たちの動きが活発になり始めたのだ――小国の連合など組んだところで、意味はない。周りの国を吸収して大きくならねば、生き残ることはできない。とな」

「つまり、小国間での戦国状態が加速したと?」

「端的に言えばな。そしてその波乱は、我が国にも押し寄せようとしているのだ」

フォンステ国は、砂漠の通商路による交易で、多大な利益を上げている。

そしてフォンステ国の兵は弱い。

金持ちで防衛力が弱い国なんて、周りの国にしてみたら、美味しい餌としか思えないだろう。

事実、ルーナッド国や『聖約の御旗』も、そう思って戦争を仕掛けてきたわけだしね。

「なるほど。またすぐに戦争になるかもしれないから、ノネッテ国の動向を知りたがったわけですね」

「ノネッテ国が中原へ進出する思惑があるのなら、牽制材料となったのだがな」

「さっきも言いましたが、数年間は援軍を求められても、満足な支援は行えないかもしれませんよ」

「分かっている。だからこそ、悩ましいのだ」

フォンステ国王は目を瞑って考えに耽り、やがてゆっくりと目を開けた。

「我がフォンステ国も、ノネッテ国に下ることにしよう。受け入れてくれるかね?」

「チョレックス王に伝えれば、受け入れてくれるでしょう。でも、いいんですか?」

「このままでは、他の国に攻め滅ぼされる未来しかないのだ。いまノネッテ国に下れば、国名は失えど、人々の命と暮らしは守れる」

「そしてノネッテ国の一部となったら、周りの小国から攻撃される確率は減りますし、実際に攻められたら防衛にノネッテ本国から軍を差し向けないといけませんしね。たとえ国庫が空であってもです」

休息な国土の拡大で、新たに領地となった場所には、多少なりとも不満が残っている。攻撃された地域を見捨てるような真似をしたら、各地で一斉に民が蜂起するかもしれない。

そんな真似を許さないためにも、ノネッテ国は新たに支配した地域も、他の地域と同じように防衛する用意があると、示さないといけないからな。

「言っておきますけど、ノネッテ国の一部になったからって、他の小国に喧嘩を売るような真似は止めてくださいよ」

「分かっている。我とて母屋に迷惑をかけたくはない。印象を悪くすれば、一領地などどうとでも料理されてしまうと理解している」

それならと、俺はフォンステ国王から、ノネッテ国への編入を要請する書状を受け取った。

そして、それをチョレックス王へ手渡すために、一路ノネッテ本国へと向かったのだった。