軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

百四十四話 新たな戦の予感

俺は、ロッチャ地域の治安維持をドゥルバ将軍に、運営をホネスにお願いしてから、ヴィシカに会うためアンビトース地域へ出かけることにした。

同行者は、おなじみのパルベラとファミリスだ。

「冬の砂漠は厳しいって言うし。二人はロッチャ地域で待っていてくれても良かったんだよ?」

女性は体を冷やすと体調が悪くなると聞くと心配したのだけど、二人は首を横に振ってきた。

「防寒対策は完璧ですし、神聖術を使えば寒さも和らぎますから、心配しないでください」

「神聖騎士国の騎士は、この程度の寒さで参るような鍛え方はしていませんので」

「二人が良いならいいけど、寒気を感じたら、早めに言ってよ」

そんなことを俺が口にしてはいるけど、二人が――特にファミリスが来てくれることは、正直言えば有り難かった。

それはなぜかというと、ヴィシカからの手紙の所為だった。

「まさか、砂漠の商業路を掌握するための戦争の指揮を、俺に取って欲しいだなんてなぁ……」

一つの戦争が終わったら、また次の戦争がやってくるなんて、今世の俺の人生は騒乱に愛されているらしい。

実は、俺って異世界に転生したんじゃなくて、修羅道に落ちたんじゃないだろうか。なんてことを考えたくなる。

つい漏らした俺の愚痴が聞こえたのだろう。パルベラが微笑みを向けてくる。

「アンビトース地域の方々がミリモスくんの手腕を望んでいると、手紙にあったのですよね。民に望まれるなんて、統治者として嬉しいことではありませんか」

「でも俺は、ロッチャ地域の領主であって、アンビトース地域の統治者じゃないんだ。領主のヴィシカ兄上を差し置いて、しゃしゃり出るような真似は間違いじゃないかって気になるんだよなぁ」

「でも、当のヴィシカ王子が、ミリモスくんが指揮することを待ち望んでいるのですよね?」

「そこが分からないんだよなぁ。なんでこっちに話を振ってきたんだか」

得意な人に仕事を任せること自体は、有意義な行いだと分かっている。俺だって、ドゥルバ将軍に軍事を、ホネスに領地経営をお願いしているしな。

でも、それは二人が俺の部下――役職的に自分の手足だからこそ問題がないのだ。

俺とヴィシカの関係は、兄弟であると同時に、別々の領地地を治める領主である。

そんな別地域の領主に自領地の兵力の指揮を預けようなんて、俺がちょっと気の迷いを起こしたら、ヴィシカが窮地に陥るような蛮行と言える。

だからこそ、俺はヴィシカの考えが分からないのだ。

せめて、ヴィシカが戦争で 責任者(トップ) を張り、俺が 参謀役(アドバイザー) とするのなら、分からないわけじゃないんだけどなぁ。

そんな風に理解できないでいると、ファミリスが呆れ顔を向けてきていた。

「アンビトース地域という地を、ヴィシカ王子に押し付けた当人であるミリモス王子が欲するなんて、道理が通りません。だから、指揮を渡しても安心だと考えたのでは?」

「確かに、領地が広くなると運営が煩雑になるから、アンビトース地域を欲しくはないんだけどね。というか、アンビトース地域の民が、俺を望んでいるって点も納得がいかないんだよなぁ」

「アンビトース地域の方々が歓迎していると、手紙にあったのでしょう。ということは、アンビトース王族を打倒したミリモス王子こそが統治者であり、ヴィシカ王子はその代役だと思っているのでは?」

「それが本当なら、ヴィシカ兄上の統治に支障がでていそうだから、それはそれで問題なんだけど」

「ともあれ、詳しいことは、ヴィシカ王子に直接聞くしかないでしょう。ミリモス王子もそう考えたからこそ、こうしてわざわざ足を運ぼうと考えたのでしょう?」

「手紙で何度もやり取りするぐらいなら、直接向かって問いただせば話が早いからね」

そんなことを話しているうちに、ロッチャ地域とアンビトース地域の境についた。

ファミリスは愛馬のネロテオラに乗ったままだけど、俺はロッチャ地域から乗ってきた馬から、ヒトコブラクダとダチョウを掛け合わせたような鳥である、砂漠の行程に適したカミューホーホーに乗り換える。ロッチャの馬だと、砂に足を取られて危ないからだ。

騎馬を変えて、気分一新して砂漠を進み始めたところで、俺はハタと思い出した。

今回の件は、砂漠の商業路についての事態が大元だ。

そして、その商業路の確保は、スポザート国との共同事業だったはず。

手紙にはスポザート国のことは一切書かれていなかったし、戦争先の相手のことも書いていなかった。

「いや、まさかね……」

スポザート国には、長姉のソレリーナが嫁ぎ、その子供まで住んでいる。

仮にアンビトース地域とスポザート国が国策で折り合いがつかなかったとしても、ソレリーナとヴィシカが話し合いをすれば戦争までは至らないはずだ。

俺は考えすぎだと首を振ると、不安を払しょくするためにも、アンビトース地域の中央都へ向けて、カミューホーホーの足を速めたのだった。