軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

百二十九話 父としてのテレトゥトス・エレジアマニャ・ムドウ

ガンジャグとの模擬戦を終えたところ、騎士国の重鎮たちの俺を見る目が、また変化していた。

的確な表現は難しいけど、俺の将来に期待しているようであり、ライバル視に近い感情を持ったようでもあった。

負けた試合で、どうしてそう思わるのか不思議だったけど、気にし続けることはできなかった。

なにせ、騎士王が重鎮たちへ向けて声を出したからだ。

「もう、良いであろう。皆、下がるがいい」

騎士王の言葉に、重鎮たちは一礼し、ささっと聖堂から去り始めた。

ここまでの謁見で、俺の何を見定められたのだろうと、ちょっとだけ心配になりつつも、彼らが去るのを待った。

そうして聖堂に残ったのは、俺と騎士王、そしてパルベラ姫とファミリスだけとなった。

「ここからは、ざっくばらんに話すとしよう。パルベラと騎士ファミリスも、立つと良い」

「はい、御父様」

「はい、騎士王様」

そんな騎士王の言葉を受けて、パルベラ姫とファミリスは立ち上がると、俺の両隣まで歩いてくる。

ここで俺は、いったいどんな話をする気なんだろうと、気持ちを引き締めることにした。

そして口火を切ったのは、再び騎士王からだった。

「ミリモス王子には悪いが、先に家族の話をさせてもらう。パルベラ」

「はい、御父様」

「お前のミリモス王子への気持ちは、黒騎士からの報告で伝わってきている」

気持ちって、パルベラ姫が俺のことを好いてくれているってことだよね。

なんでそんなことを、騎士国の黒騎士が報告しているんだよ!

内心の焦りで脂汗が浮かぶ俺とは違い、パルベラ姫は毅然とした態度を崩していない。

「御父様。ミリモスくん――いえ、ミリモス王子は面白いお方だとは思いませんか?」

「パルベラが惹かれることも、分からんではない。して、心変わりはないのだな?」

「はい。 私(わたくし) はミリモス王子を、お慕いしております」

真っ直ぐな告白に、俺の背中に気恥ずかしさと嬉しさが混ぜこぜになった感情が駆け抜け、体が痒くなった錯覚が。

顔の表情は平然を保っているはずだけど、ファミリスから小睨みが来ていることから、あまり取り繕えてないかもしれない。

そんな俺たちを余所に、騎士王とパルベラ姫の会話は続いていく。

「ミリモス王子に嫁ぐのだな?」

「はい、御父様。願わくば、そうしたいと思っております」

「神聖騎士国から嫁ぐからには、簡単に別れることは許さぬぞ」

「構いません。ミリモス王子こそが、私の夫ですので」

「それほどまでに覚悟は決まっているのならば、問答は無用か。孫の顔は見せにくるように」

「はい、御父様。産まれた暁には、お見せします」

二人の話が一段落ついたところで、騎士王の顔がこちらを向いた。

「ミリモス王子に質問する。パルベラと添い遂げる気はあるか?」

そう率直に言われると返答に困っちゃうのだけど、既に恋人のような関係ではあったんだし、ここは覚悟を決める場所だと踏ん切りをつけた。

「はい。パルベラ姫と、結婚をさせてください」

「結婚だけでは、駄目だ」

「はい。末永く共に暮らすと、誓わせてください」

「そうか。それで、パルベラのどこを気に入った?」

そんなことまで聞いてくるかと、ちょっと焦りながら、素直に心の内を詳らかにすることにした。

「パルベラ姫と会話すると楽しいですし、なんといっても笑顔が素敵なんですよ。見ていて飽きないというか、また見たくなるというか、そういう笑顔なんです」

「そうか、笑顔を好いたか。ならば、パルベラが笑顔で居続けることができるよう、心掛けて欲しい」

「もちろん。結婚するからには、相手を幸せにする気でいますとも」

断言に近い形で請け負うと、俺の隣――パルベラ姫が真っ赤な顔を俯かせていた。

「そんな風に言って貰えると、あの、その、は、恥ずかしい……」

パルベラ姫が赤い顔を隠すように手で覆うと、騎士王は朗らかな笑顔になる。

「この様子では、幸せにしろというのは、要らぬやもしれぬな」

どう返答したらいいのかわからず、俺は苦笑いで対応するしかなかった。

パルベラ姫が落ち着きを取り戻してから、話は再開する。

「ミリモス王子。貴殿がパルベラと婚姻を果たした場合、帝国がなにやら言ってくる可能性が高いことは、承知しておるな?」

「それはもう。帝国にとっての敵国が、隣国のノネッテ国と縁続きになるわけですから」

帝国から見れば、ノネッテ国は騎士国の陣営になったように映るだろうし、喉元に迫る敵の刃のようにも見えなくはないだろう。

その危惧を払しょくするために、帝国がノネッテ国にちょっかいをかけて、その反応を伺うようになることは予想し易い事柄だった。

でも、俺はあまり心配していなかった。

「帝国への対応は、上手くやります。少なくとも、パルベラ姫を危険に巻き込むような真似は起こさないと約束します」

「仮に口だけであろうと、そう言って貰えると心の重りが軽くなる」

騎士王はほんの少し苦笑いして、すぐに表情が王らしい物へと戻った。

「聞くべきことは聞けた。そして、騎士ファミリスに改めて命じる。パルベラの支えとなれ」

「ハッ! 王命、承りました!」

ファミリスの敬礼姿を見てから、騎士王は再び俺に、そしてパルベラ姫に視線を向ける。

「大陸中央部からここまで、長旅をしてきたのだ。今日明日ぐらいは、城でゆっくりとするがいい。無論、使用する部屋は一つだけで構わぬな?」

最後の最後で、騎士王から茶目っ気のある言葉をかけられて、油断していた俺とパルベラ姫は盛大に顔を赤らめさせることになってしまったのだった。