軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

これが本当の後の祭りってね!

「「「いただきますっ!!」」」

みんな揃ったところで、一斉に食べ始めた。

「どうやって食べるんですの?」

「もちろん手づかみで!!」

「まあ、素敵!」

ザリガニの頭はエビみたいに簡単に取れる。もぎ取った瞬間、すかさずちゅうっと啜れば、ミソの美味しさに脳みそが痺れた。もちろん、ケイジャンスパイスの複雑な風味もあるのだが、舌がピリピリするくらいのアミノ酸がガツンと脳をぶん殴ってくる……!

「うっま……!」

「お嬢、身が取れましたよ」

笑顔になった瞬間、すかさずザリガニの身を渡された。

隣を見ると、ヴァイスがせっせと殻を剥いている。

「えっ、ママ……?」

「人を母親にしないでくれますか」

「むぐっ……」

調子に乗って茶化すと、口にザリガニの身を突っ込まれた。

扱いがひどい! 非難がましい視線を送りながら、もぐもぐと咀嚼する。

「ぶりっぶりだ! 美味しい! ヴァイスも食べてみなよ」

「あ、いけますねこれ」

「味も面白いよね。ロブスターを薄くした感じ。エビっていうよりカニ……?」

淡泊な身にケイジャンスパイスがよく染みている。ハーブ類の複雑でいて食欲をそそる香りと、唐辛子のヒリヒリ焼け付くような辛み。嫌がらせってくらいにまぶしてあるニンニクの強烈な刺激。胡椒で舌が痺れた頃に効いてくる、ザリガニのうま味……!

「ビール!」

「お嬢、どうぞ」

キンキンに冷えたそれを一気に呷れば、もうたまらん。

「合うわあ……」

スパイスのせいで熱を持った体に、ビールは劇的に効いた。気分は南米のビーチ。体が水分を求めているのだ。ぐいぐい飲むのが止められない。だって辛いからね。舌と喉を癒やすためにも、ここは飲まないでいられるかってんだ!

「まあ。まあまあまあ! ザリガニもですけれど、お野菜も美味しいですわね……!!」

「ルシル様、スパイスとザリガニの出汁が染みたジャガイモ、すっごい美味しい!」

「ソーセージもいいのう。ほんのり感じる肉の脂が、味の深みを増しておる。ハイボールがほしくなってきたわい……」

「ごはん! タレが染みたご飯も美味しいよう!」

「お代わりする人いるー?」

「「「はーい!!」」」

ケイジャンクローフィッシュは、孤児たちにも好評のようだった。

大量に獲ったザリガニがどんどん減っていく。残されたのは大量の殻だけ。

私たちは満足感でいっぱいだった。

「この調子で獲っていけば、いい感じに駆除が進むんじゃないでしょうか」

「簡単に獲れて美味しいのに、なんだかもったいないですわね……」

「でも、生態系をめちゃくちゃにしてしまいますからね。食用に養殖するつもりなら、他に影響が出ないように環境を整えないと危ないと思います」

「そうですわね~。結果的に他の生き物を駆逐してしまったら元も子もありませんものね。まあ、生態系が元に戻るまでの副産物だと思えばいいですわね!」

「ですです。アメザリくん、きっと町の人たちも気に入ると思うんですよね。獲れなくなってしまった魚の代わりに売ってみたらどうですか? 塩ゆでにしてもいいし、脱皮したてのザリガニは素揚げにしても美味しいですし」

「まあ……! それは素敵ですわね。金! 金の匂いがしますわ~!!」

ルシルはウキウキで金勘定を始めている。なんにせよ一段落ついたようだ。これで、神殿に暮らす子たちの生活が脅かされる可能性は低くなっただろうし、この世界の生態系もアメザリの手から守られるはずだ……。

よっし! 私ってば頑張った。ご褒美に今日は飲むぞ……!

――そう、思っていたのだけれど。

「お嬢、 とりあえず(・・・・・) ここの調査はおしまいですね」

「とりあえず? ヴァイス、それってどういう……。ここでおしまいでしょ?」

「なにをおっしゃいますやら。アメリカザリガニが、神殿の周囲にだけ転移してきたとは限りませんよ」

――なんだか嫌な予感がする。

たらたら脂汗を流していると、ヴァイスはどこまでも笑顔でこう続けた。

「アメリカザリガニ駆除のノウハウも確立できましたし。国内全域への調査員の派遣、および地元民への駆除方法のレクチャー、捕獲したザリガニの消費方法の伝授や販売先の斡旋……いやあ、明日から忙しくなりそうですね。お嬢!」

「な、ななななな、ななななななな!?」

「生態系を破壊する危険な生き物ですからね! やると決めたらやりましょう……!!」

「い、いやああああああああ……!!」

せっかく仕事が減ってきたと思っていたのに!!

みずから首を突っ込んだせいで、また仕事が増えてしまったようだ。

「どうして。どうしてなの……! 休暇を満喫したいだけなのに!!」

「あらまあ! さすが次期王妃様。国のために大変な苦労をされていらっしゃるのね。水の女神アクアとアイシャ様に心からの感謝を……!」

「ルシルさん、ルシルさん違うの……」

「うふふ。なにも違わないと思うんですの! 謙遜しないでくださいませ~」

私が未来の王妃と疑わないルシルは、褒めるばかりで嘆きに耳を貸してくれない。

うっかり仕事を増やしてしまった私は、しばらく絶望に浸った後――

「わかった。わかったわよ。やってやる。そのかわり、終わったらキャンプに行くんだからねーーーー!!」

怒濤の勢いで各種手配をする羽目になったのだった。