軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

151.【sideフェリクス】愚者の歩み

ノヒタント王国へと侵攻したフェリクス・ルーツ・クロイツァーは、ルガウにてラザレス・エディントンと賠償などについての話をしたあと、大急ぎで帝都へと帰還した。

帝城の中を歩いている彼の表情は、見る者を畏怖させるほどに怖いものだった。

そのまま早足で城の奥へと進んでいき、目的の部屋の扉を勢い良く開ける。

その部屋の中では、帝国の現皇帝であるヘルムート・ルーツ・クロイツァーと、皇帝直轄である魔導兵器開発室に 二年ほど前から(・・・・・・・) 室長となったオズウェル・マクラウドが会話をしていた。

その二人が扉の方へと視線を向ける。

「殿下、ここは皇帝陛下の執務室ですよ? ノックも無しに入るのは、いくらご子息だとしてもいただけませんねぇ」

部屋に入ってきた人物を確認したオズウェルが苦言を呈する。

「オズウェル? 何故いつも研究室に引きこもっているお前がここに居る?」

「引きこもっているなんて心外ですね。俺は日夜この国のために働いているというのに。それに俺だって外に出ますよ。現にこうしてここに居るじゃないですか」

「……今から父上と大切な話がある。席を外してくれ」

「お断りします。俺も今陛下と大切な話をしているところですので。ですよね?陛下」

「その通りだ。お前はいつからそこまで偉くなったんだ? それにルガウへの侵攻はどうした?」

オズウェルの言葉に同意した皇帝が、険しい表情でフェリクスを叱責する。

「……無礼であったことはお詫びします。しかし、話というのはまさにそのルガウへの侵攻の件です」

「はぁ……。やはりオズウェルの 言うとおり(・・・・・) になったか……」

フェリクスがルガウへの侵攻について口にすると、皇帝が深いため息を零した。

「誠に遺憾ながらそのようですね。陛下、いかがいたしましょうか」

「ま、待ってください! 一体何の話をしているのかは分かりませんが、俺の話を聞いてください!」

皇帝とオズウェルの雰囲気から、状況が自分にとって分の悪い方向へと進んでいることを察したフェリクスが、焦りながらも口を開く。

「陛下、この者の話を聞いてはいけませんよ。言葉に耳を傾けた瞬間に寝首を掻く算段かもしれません」

「な、なに、を……。っ! オズウェル! 父上に何を吹き込んだ!!」

「人聞きの悪いことを言わないでくださいよ。状況が悪くなったら、次は俺を悪者に仕立て上げるつもりですか?」

「ふざけるな! 悪者も何も、お前がこの国に来てからだろ! 父上がこのようになってしまったのは!」

「言いがかりですね。それにその発言は陛下への侮辱になりますよ? あぁ、陛下を殺そうとしている殿下にとっては関係が無いということですね。いやはや、ここまで増長してしまうとは。これは、西の大迷宮を攻略して天狗になっていた殿下を諫めることができなかった我々の責任でもありますね。陛下、申し訳ありません」

「お前が謝ることではない。愚息の心が未熟であっただけの話だ。フェリクス、最後の温情だ。オズウェルに誠心誠意謝りなさい。そうすればお前を軟禁することで、先ほどの無礼の数々には目を瞑ろう」

「なっ!? ……本気で言っているんですか? 父上、よく思い出してください! コイツがこの国にやってきてから推進してきたこれまでのことを! コイツは、……ぐっ、なんだ、急に――――」

懸命に皇帝に言葉を投げかけていたフェリクスが、突然顔を顰めながら頭を押さえ始める。

その直後、魔力が尽きた魔導具のようにプツンと意識を失って倒れた。

「……よくやった、 フィリー(・・・・) 」

いきなり意識を失ったフェリクスを見た皇帝が、彼の意識を刈り取った人物に労いの言葉を掛ける。

すると部屋の隅の空間が揺らぎ始め、【 潜伏(ハイド) 】で身を隠していたフィリー・カーペンターが姿を現す。

「勿体なきお言葉に存じます、陛下」

「これでコイツは余の忠実な 僕(しもべ) になったのか?」

「いえ、今は眠らせているだけです。これから洗脳を施して陛下の命令を実行するだけの人形に仕立て上げますので、少々お時間をくださいませ」

「良いだろう。お前に任せる」

「ありがとう存じます」

「ひとまず作戦は成功ですね、陛下。これで反乱を企てていた不穏分子の筆頭を排除しつつ、最強の手駒を手に入れることができました」

皇帝とフィリーの会話がひと段落ついたところで、オズウェルが満足気に口を開いた。

「あぁ。それにしても、その洗脳の異能は便利だな。これからも余のために力を尽くしてくれ」

「当然でございます。この力がヘルムート様の覇道の礎になれることこそ、わたくしの至上の喜び。これからも貴方様は 愚鈍な(その) まま覇道を突き進んでくださいませ」

皇帝の言葉に首を垂れるフィリーが口を開く。

その伏せた顔に、悪意に満ちた笑みを浮かべながら。

「当然だ。この大陸を統一するまで止まる気は毛頭無い」

《シクラメン教団》に唆された帝国の凶行は、まだ始まったばかりであった――。