軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五話:スライムはスーパースラちゃん2になる

ゴーレム馬車でミラルダ共和国へ向かっていた。

あれ以来追っ手は来ていない。

あいつらがゴーレム馬車に追いつけたのは短距離で馬に無理をさせていたからだ。

一度距離をとってしまえば持久力と通常運転時の速度で勝るゴーレム馬車には追い付けない。

グランファルト王国領なら、関所などに待ち伏せもさせられるが、他国では不可能だ。

「ぴゅぴゅー♪」

「スラちゃん、機嫌良さそうだね」

「ぴゅいぴゅい!」

かゆそうにのたうちまわっていた成金デブ公爵のことを思い出す。いい気味だ。

娘たちを怖がらせた成金デブ公爵に仕返しをしてやれた。

あいつらを襲った”通りがかりのスライム”には感謝しないと。

日が暮れ始めた。

やっとアッシュレイ帝国の国境を超えるこができた。

そろそろいいだろう。

「ぴゅぴゅーーーーーー」

俺は叫ぶ、何事かとオルフェたちがこちらを見る。

その答えはすぐ目に見える形で現れた。

馬車が揺れる。

キング偽スラちゃんが着地したのだ。キング偽スラちゃんは、小さな偽スラちゃんたちに分裂して窓の隙間から入ってくる。

「あっ、小さなスラちゃんたちだ」

「ごくろうさま。おかげで助かった」

オルフェとニコラが彼らを出迎える。

この、通りがかりのスライムのおかげで俺たちが手を下さずに成金デブ公爵一行を撃退できた。

いくら正当防衛とはいえ、俺たちが手を出していれば大問題になっていただろう。

「ねえ、ニコラ。ちっちゃいスラちゃんたち可愛いね」

「一緒に寝てあげたいかも」

オルフェとニコラが偽スラちゃんを抱っこしたり撫でたりしている。

偽スラちゃんたちは嬉しそうにぴゅいぴゅい鳴いて甘えている。

「ぴゅむむむむむ」

面白くない。

オルフェとニコラに甘えていいのは俺だけだ。

「ぴゅっぴゅぴー、ぴいー!!(たるんどるぞ貴様ら。いつまで遊んでいる!」

「「「ぴゅひぃぃぃぃぃ(ボス、申し訳ございませんんんん)」」」

偽スラちゃんたちが俺を見て頭を下げる。

口を大きくあける、偽スラちゃんたちが次々に口へと飛び込んでくる。

やってしまってから罪悪感が込み上げてきた。

偽スラちゃんたちは俺たちのために頑張ってくれたのに褒めるどころか、嫉妬して怒鳴るなんて。

スライムになり、感情の抑制が難しくなったからと言って、これでは大賢者失格だ。

「あっ、もしかしてスラちゃん嫉妬したの?」

「ぴゅい……」

「ふふ、スラちゃん。心配しなくても一番はスラちゃんだよ」

オルフェがぎゅっと抱きしめてくれる。

温かい、柔らかい、いい匂い。

「スラは心配しすぎ」

ニコラが小っちゃくて冷たい手で撫でてくれる。これはこれで。

「ぴゅふぅー」

最高だ。

偽スラちゃんたちには悪いが、やっぱりこの幸せは誰にも渡せない。後で謝っておくつもりだが、これからも独占しよう。

スラすりすり。

俺たちの旅は続く。

急いでいたので、食料はろくに補充できておらず現地調達がメインだ。

幸い、山や森は多いので肉や山菜はオルフェの狩りで手に入る。ゴーレム馬車には非常食が常備されているので主食はある。

オルフェは水属性の魔術が使えるので飲み水に困らないのも大きい。

俺が以前に作ったお風呂があるので旅の途中に入浴できる贅沢もある。

と、着の身着のまま飛び出した旅とは思えない充実した日々を過ごしていた。

「ニコラ、ミラルダ共和国にはどれぐらいで付きそう?」

「あと二日ほど」

「やっぱり遠いね」

「ゲオルギウスがあれば一瞬だったのに」

ニコラは海に沈んだゲオルギウスを思い出し遠い目をしていた。

竜に追いつくために作り出されたゲオルギウスは【嫉妬】の邪神との戦いで海に沈んだ。

あれのコアは作るのに数年かかる。ニコラと言えど、一から作り直すことはできない。

「ニコラ、いつか作り直すんだよね。そのときは私も手伝うから」

「ん。コアの調整は腕のいい魔術士がいると助かる。頼りにしてる」

姉妹が仲良くしているのを見るのが一番好きだ。

そんなことを考えているときだった。

馬車が大きく揺れた。

「なに、これ」

「魔物。それもかなり大きい」

窓から外を見る。

大きな川の近くを走っていたのだが、その川から巨大な白い大蛇が現れていた。

タイラント・スネーク。

竜種に近い凶悪な水蛇の魔物。

そのタイラントスネークがゴーレム馬車に突っ込んできた。魔法金属でできているゴーレム馬車は壊れはしないが、激しく横転する。

「きゃあああああ」

「んっ」

俺は【収納】していた偽スラちゃんたちと合体し、巨大化するとスライムボディでオルフェとニコラを飲み込む。

馬車は三回転した。

馬車が壊れなくても、これだけ派手に壁や天井にたたきつけられれば、ただじゃすまない。

ぎりぎりで間に合った。

「ぴゅげっ」

容赦なく、全方向に叩きつけられる。だが、二人は無事だ。

馬車の回転が止まってから、オルフェとニコラを吐き出して外へと飛び出す。

「ぴゅいっぴゅぴゅ!(危ないだろうが、娘が怪我をしたらどうする!)」

うちの娘を襲うとはいい度胸だ。文句を言ってやる。

「シャアアアアアアアアアアアアアア」

タイラント・スネイクは、反省するどころか殺意を込めた目で俺を見てくる。

そして、水のブレスを放った。

ただの水と侮ってはいけない。超高圧、超高速の水のレーザー。

俺のスライムボディに大穴が空いた。その余波でドーナッツのようにわっかになる。

水のレーザーは大地深い穴をうがち底が見えない。

さすがは竜種に近いと言われるだけのことはある。

「ぴゅふふふふふふふ」

なるほど、そっちがその気ならこっちもその気だ。

おそらく、普段のままなら勝てないだろう。

タイラント・スネークは圧倒的なステータスを持つ。

だから、切り札を使う。

あまりの強さに習得したものの一度も使わなかった技だ。

【収納】していた偽スラちゃんを片っ端から取り出し、合体!

数百体のスライムと合体したことで、その大きさはタイラント・スネイクを超える。

タイラント・スネイクがぎょっとする。

今の俺はスーパースラちゃんだ。

「ぴゅおおおおおおおおおおおお」

これで終わりではない。圧縮だ。元のスラちゃんサイズに戻る。

見た目は変わらないが、密度が圧倒的に違う。

あまりの魔力に周囲の景色が歪み、スパークする。

さしずめ、今の俺はスーパースラちゃん2と言ったところだ。

「ぴゅう、ぴゅいぴゅ(さあ、行こうか)」

スライム跳びをした。

一瞬でトップスピード、音速を超えた一撃を叩き込む。

「グガアアアア」

奴は悲鳴をあげるが容赦しない、【飛翔Ⅱ】を発動。

スライムウイングを得る。

スライムウイングは羽ばたいて揚力を得るわけじゃない、魔力を推進力に変える。

だから、スーパースラちゃん2となり圧倒的な魔力とステータスをもった今、圧倒的な速度で空中で加速し続けることが可能。

タイラント・スネイクは水のマナを吸収して力に変える力を持つ。湖から引き離せば、能力は激減する。

「ぴゅいいいいいいいいいいいいいいい」

連続体当たり、空中で加速しながら、何度も何度もぶつかり、上へ上へと持ち上げていく。蛇は暴れまわるが、小さく高速で動く俺を捉えられていない。

ついに巨体が宙に浮いた。

空に浮いた。タイラント・スネイクは悪あがきで水のブレスを連射する。

直角で曲がる変態機動すら可能な俺に当たるわけじゃない。

さあ、ケリをつけよう。

水を得意とするのはお前だけじゃない。

渾身の力で体当たりをぶちかまし、高く高く上空へと弾き飛ばした。

そして、下から狙う。

全身をポンプに変形。

さらに、【風】と【水】の二属性の魔術を同時使用。

【収納】していた大量の水に金属粉を混ぜ、水の魔術で圧縮し、さらに風で加圧した。

複合攻撃スキル。

「ぴゅーーーーーーーーーいぃぃぃぃぃ(超スラビーーーーーム)!」

すべてを貫く必殺技が発動する。

タイラント・スネークは水に対する絶対の耐性がある。

だとしても、破壊力と貫通力と切断力だけで打ち倒す。

輪切りになったタイラント・スネークが落ちてくる。

「ぴゅいっぴゅ!」

大勝利。

全魔物の中でも上位クラスの力を得たというのはうぬぼれじゃないようだ。

スーパースラちゃん2は完璧に使いこなせていると言えるだろう。今度は、瘴気の力を試したい。おそらくスーパースラちゃん2状態で瘴気の力を上乗せすればスーパースラちゃん3へとなれる。

だが、今は……。

「ぴゅふぴー!(おるふぇー)」

たくさん、オルフェに褒めてもらおう。

すべてはそれからだ。

その後、タイラント・スネイクを食べる。

強い魔物だった。大幅なステータスアップとレアスキルがゲットできるだろう。