軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第198話 神兵級部隊3

安産祈願のお守りに込められた魔法により生まれた周囲に広がった青白い光。

それによって、ぼくとシャ・ラウに迫る粘糸がちからを失い、左右に散ってしまう。

だがレジェンドも、このお守りの効果を見るのは二度目だ、ある程度想定していたのだろう。

上半身が人間で下半身が蜘蛛のモンスターは、すぐにもう片方の手をひらく。

もう、ぼくたちにお守りはない。

それがわかっているのだろう。

でも、敵の一発目を退けたことで、わずかに余裕ができた。

だから……。

「アクセル」

ぼくは意識を加速させる。

周囲の空気が、急に粘性をもって身体を縛る。

ぼくは歯を食いしばり、スロー再生されたようにのろのろと動くレジェンド・アラクネの動作を観察する。

チャンスは、一度きり。

レジェンドの伸ばした手から、ぼくめがけて鋼糸が噴き出す。

よし、いまだ!

「リフレクション」

ぼくはシャ・ラウの毛から手を離し、前方にバリアを張る。

虹色の結界が、レジェンドの鋼糸を弾き返す。

跳ね返った鋼糸は、レジェンドに突き刺さることなく、左右に割れた。

そうなんだよなあ、こいつに自分の糸はきかないんだ。

ちょっと残念ではあるが、いたしかたなし。

で、シャ・ラウから手を離したぼくは空中に弾き出される。

意識の加速が消えた。

ぼくはくるくる回転しながら、宙を舞う。

皆の戦闘するエリアの上空へ。

結果的にぼくは、必死で戦う仲間たちを、俯瞰的に眺めることになった。

シャ・ラウがレジェンドを一時的に戦域から押しだしたことで、戦況は大きく動いている。

まず、援護のなくなったノーライフ・キングが桜と啓子さんの前後からの刺突によって串刺しとなった。

ほぼ時を同じくして、アリスとたまきがメキシュ・グラウの首を刎ね飛ばす。

ここで、白い部屋へ。

レベルアップしたのは、たまきとミアだ。

「カズさん、なんか上の方に飛んで行ったけど、だいじょうぶ?」

「ちょっと目がまわってるけど、たぶん平気だ」

心配してくれるたまきの頭を撫でる。

ぼくたちは最低限の打ち合わせだけで、もとの場所へ戻った。

たまき:レベル40 剣術9/肉体7 スキルポイント7

ミア:レベル40 地魔法7/風魔法9 スキルポイント7

戦闘再開。

ぼくはまだ、くるくると独楽のように回転している。

なんとか制動をかけている間に、結城先輩が残る一体のメキシュ・グラウの剣を持つ腕を撥ね跳ばす。

アリスとたまきが、そのメキシュ・グラウに攻撃を仕掛ける。

桜と啓子さんは、シャ・ラウがぶっ飛ばしたレジェンドを追った。

シャ・ラウがレジェンドの鋼糸を避け、距離を取る。

「エレクトリック・スタン」

ようやくシャ・ラウを排除したレジェンドに、ミアの狙い澄ました雷が命中した。

一瞬、その動きが止まる。

そこを見逃す桜たちではない。

啓子さんが白い剣を振り、衝撃波を飛ばす。

桜がコマンド・ワードを唱え、槍の先から太いビームを発射する。

レジェンドは、その両方を食らって吹き飛ばされる。

あとは、簡単だった。

最後に残ったメキシュ・グラウとレジェンド・アラクネは、ほぼ同時に討伐された。

メキシュ・グラウを仕留めたのはたまきで、レジェンドの胴体を真っ二つにしたのは啓子さんだった。

この戦域に攻めてきた神兵級部隊は、こうして全滅したのである。

なお、ノーライフ・キングが変化した宝石の色は、ほかの神兵級と同じ黄色だ。

やっぱりこいつも、神兵級なのか……。

で、最後のメキシュ・グラウを倒したところで、ぼくたちはまた、白い部屋へ。

レベルアップしたのは、ぼくである。

なんとか、全滅させた。

四体のメキシュ・グラウ、二体のレジェンド・アラクネ、そして隠れていた一体のノーライフ・キング。

普通の兵士たちが相手であれば一体で一軍を壊滅させることができるような神兵級を、合計で七体。

見事な戦果であるといえる。

なによりいいのは、こちらの被害がゼロであったということだ。

全員が死なず、経験値を得てより強くなる機会を得た。

こうしてひとつひとつの戦いを乗り越えていくことで、ぼくたちはいっそう、この戦争を有利に展開できるようになる。

「それにしてもさ。ぼく、前に『結城先輩や啓子さんは雑魚を相手にできても強い敵には不利』とかいっちゃった気がするけど」

「いやー、啓子さん強いわ」

たまきが笑う。

うん、もう笑うしかない。

かく乱だけじゃなくて、神兵級にトドメまで刺せちゃうんだもんなあ。

実際のところ、結城先輩はまだ、剣術スキルを持ってるからわかるんだけど。

啓子さん、武器スキルがないんだよな、あれで。

「合気道という武芸を極めているのですね」

ルシアが納得顔でうなずく。

いや、違うんだ、合気道はそういうモノじゃないはずなんだ。

彼女のせいで合気道という単語がゲシュタルト崩壊しそう。

「これはわたしの推測ですが、彼女が習得した合気道という武芸は暗殺のため進化した技でしょう」

「え……そ、そうなのか」

「彼女の軽い身のこなしとマナを自然に身にまとう技術は、そういった方面でもっとも活躍するものです」

え、なんかいま、さらっとヘンなこといわなかったか。

「マナをまとう技術?」

「はい。……そういえば、カズ、あなたがたの世界には魔法がなかったのでしたね」

「うん、そうなんだけど……無意識にやってそうだなあ、あのひと」

忍者だからなあ。

あそこまでむちゃくちゃだと、もう忍者だから、で納得するしかない気がする。

和久:レベル49 付与魔法9/召喚魔法9 スキルポイント3

強化召喚1(使い魔強化1、使い魔同調1)

事後処理は兵士たちに任せ、ぼくたちはマナ・ストーンだけ拾って、森の転移エリアで待っていてくれたリーンさんのもとへ帰還する。

リーンさんは、ひとつ吉報を持ってきてくれた。

羊皮紙でつくられた本を二冊、ぼくに渡してくれる。

「さきほど、他国の者と交渉し、借り受けたものです。とある神殿に保管されていたという、高位の使い魔と専従契約するための儀式が記されています」

「二冊ってことは、使い魔が二体、ですか」

「はい。儀式ののち、原本は返却するよう求められました」

儀式が終わってしまえば、あとはこの本に用がない。

その条件でノープロブレムだ。

問題は、一回の儀式に一時間くらいかかることなんだけど……。

「儀式についてはこちらである程度、補助をいたしましょう。ですが、まずはカズが本の内容を熟読しなくてはなりません」

「あー、そうですね。またどこかで経験値を稼いで、白い部屋にいったあとかなあ」

「そうなさるのがよろしいでしょう。幸いにして、ほどなくわたくしの使い魔が幽雷湿地の深部に辿りつきますので」

あ、デパート……じゃない、テパトの寺院ってところだっけ。

そこに魔王の手がかりがあるかもしれない、って話か。

そりゃもちろん、ぼくたちが行くしかないよなあ。

「ちなみに、この本、どんな使い魔なんですか」

「征龍王カナーグと天亀ナハン、とのことです。どちらも有名なおとぎ話がありますので……」

リーンさんは、ルシアをちらりと見た。

ルシアは、任せておけとばかりにうなずく。

「はい、白い部屋で語り聞かせましょう」

「頼む、ルシア」

長い話には、それが一番だよな。

それにしても、ドラゴンと亀か……。

「征龍……なんか禁止になりそう」

「おまえはナニをいってるんだ、ミア」

「なんとなく、ボケなきゃいけない気がした」

誰にもわからないボケは、ただ寒いだけなんだけどなあ。

いつものように眠そうな目でこっちを見ているこの少女の考えることはよくわからない。

それにしても、ドラゴンを使い魔にできるのか……。

この世界のドラゴンってどんな姿をしているのか知らないけど、夢が広がるなあ。

もう片方が亀ってのは、なんかこう、どう反応していいかわからないんだけど。

「ともあれ、しばしの休憩を」

「そうですね。今回、MPはそれほど使ってませんが……さすがに身体は休めたいです」

MPの消費は少なくても、気力とか体力は使ってるからなあ。

ぼくたちはほかの兵士たちの邪魔にならないよう、いちど木の下に降りて、大木の隅で腰を下ろす。

ぼくはサモン・フィーストでお菓子を召喚した。

「うわー、これいいわねー。お菓子大好きよー」

啓子さんがとても喜んでくれた。

ルシアが相変わらず、目の色を変えてケーキに突撃していったけど……うん、見なかったことにしよう。