作品タイトル不明
43.どんどん強くなる
「ブモォォッ!」
巨漢のオークが棍棒を振り下ろす。その棍棒を剣で受け止めると、ずっしりと体が重くなる。だけど、身体強化をしているから、問題ない。
「はぁっ!」
力いっぱいに剣を振ると、棍棒が弾かれ、オークが仰け反る。その隙をつき、飛び上がって首筋目掛けて剣を振るった。
スパッと首が切れ、オークの頭が飛ぶ。一瞬で絶命したオークは膝から崩れ落ちた。
「こっちは終わったよ、そっちは!?」
すぐに周囲の確認をする。視線を向けると、サリサが山と積まれたオークの上に立っていた。
「ふふん! わらわはこんなに倒したのじゃ!」
相変わらず、サリサの強さは圧倒的だ。本当に頼りになる。ホッとして他に視線を向けると、ティナが服の埃をほろっていた。
「こちらも問題ありません。見てください、火の魔法で一網打尽です」
ティナの後ろには爆発で頭を吹き飛ばされたオークの死体がたくさん積まれていた。ティナも大分戦い慣れてきて、危なげなく勝っている。
「二人とも凄いね。あっという間にオークの群れを倒しちゃうんだもん」
「そういう、メルだって凄いじゃないですか。次々とオークを切り伏せちゃうんですから」
「メルも戦い慣れてきたということじゃな。うむ、みんな強くなっていて頼もしいのう!」
私の周りにも切り伏せたオークが転がっている。以前と比べて、強くなっているのがよく分かった。
オークは中級冒険者が倒す魔物。それを、複数倒す実力がついてきたということは、そろそろ中級冒険者の中でも上位に入ってきたということだ。
最近、よく食べて、よく動いているからレベルも上がっている。サリサがレベル113、ティナがレベル31、私がレベル35だ。
ちなみに、ビックボアを食べた時に得たスキルはみんな『脚力強化』で、これで歩いたり走ったりすると足が全然疲れなくて良いスキル。
オークも食べていて、得たスキルはみんな『体力回復(小)』で、私たちの身体が強化された結果になった。
お陰で疲れは減ったし、元気に冒険者稼業が出来ている。それは、デルマたちも同じのようで――。
「おーい!俺たちも、とうとうオークを倒したぞー!」
「みんなで倒したんだよ! 凄いでしょ!」
「俺たち、強くなったよな!」
三人はオークを倒して戻ってきた。今、三人のレベルはデルマが18、ロロが15,スコットが16だ。みんな、一人前の冒険者のレベルになっている。
「ほう、そのレベルでよくオークを倒せたな! つい、この間までゴブリンで戸惑っておったはずなのに」
「自分でも驚いている。ただ、メルの食事を食べているだけなのに、こんなにすぐに強くなるなんて」
「私の料理が活躍してくれているみたいで良かったよ。今日、倒したオークもちゃんと料理にするから期待してて」
「ふふっ、それを聞くとお腹が減ってきました」
みんな、順調にレベルが上がってくれているみたいで嬉しい。このまま食べていけば、立派な冒険者になってお金を稼げるようになるはずだ。
「じゃあ、オークを回収するぞー」
すると、サリサが倒れたオークをアイテムボックスに入れ始めた。巨漢のオークが簡単に異空間に収納され、持ち運びが出来るようになった。
「こういう時のサリサのアイテムボックスって凄く便利だね。助かるよ」
「わらわのスキルはこういう時しか役に立たないからな、もっとたくさん使ってくれ!」
「普段でも頼りにしてますよ」
「そ、そうか? 改めて言われると恥ずかしいのう……」
私とティナのスキルばかり使っているように思えるが、サリサのスキルも重宝している。食材は腐らずに保管出来るし、大量の物を持ち運ぶ冒険者稼業にはうってつけ。やっぱり、この三人は揃うと最強だと思う。
「まだ戦いに行きますか? 探知魔法に反応があるみたいなんですが……」
「それはいいのう! たくさん戦えば、金ががっぽり稼げるのじゃ!」
「体力的にまだいけるよ。三人はどう?」
どうやら、近くに魔物がいるみたいだ。三人に確認すると、元気に頷いてくれた。
「俺、もっと強くなりたい。だから、もっともっと戦う!」
その中でもデルマの気合は一番強い。目を輝かさせて、戦う意欲に溢れている。
「凄いやる気だね。やっぱり、戦えるようになったから楽しいとか?」
「強くなったら、稼げるようになる。そうすると、テレセスが助かると思うんだ。いつも、俺たちのことで悩ませているから……」
デルマは少し切なそうに目を細めた。だけど、すぐに力強い目になる。
「俺、テレセスの力になりたい。いつも支えてくれているから、逆に俺が支えたいって思うんだ」
「へー。テレセスの事が好きなんだ」
「なっ!? そ、それは……!」
何気なく言った言葉にデルマがとても戸惑った様子だ。これはもしや、図星をついてしまったかな?
その様子にサリサがニヤニヤと笑い、ティナが興味津々と言わんばかりに目を輝かせた。
「ほほう。そんな邪な気持ちがあったとはな。だから、誰よりも食べて、誰よりも戦っておったんじゃな」
「だって、強くないと守れないじゃんか……」
「守りたいから自分が強くなるって、その発想がロマンチックですね! いつから、そう思っていたんですか!?」
「それは、気づいたら……」
その言葉に私たちはキャーッと騒ぎ出す。これは、興味深い話の種だ。
だけど、デルマの友達二人はそれを知っていたかのように、強く頷いていた。
「でも、その気持ちは全然届いてないんだよね」
「まー、十歳も年が離れているからなー」
「くっ、それは言うな!」
現実は厳しい。十歳差を覆すのは並大抵のことじゃない。
「よし! だったら、デルマを強化しよう! 今日は、戦って戦って、戦いまくる!」
「うむ、デルマの為にも、ひと肌脱ぐかのう!」
「頑張るチャンスですよ!」
「お、おう……。なんか、凄く気合が入ってねぇか?」
「そりゃあ、その話を聞いたからには、協力しないとねぇ」
私たちのやる気も上がってきて、これは良い機会だ。
「それでは、行きましょう。向こうに集団がいるみたいです」
ティナのその言葉に私たちは意気揚々と歩き出した。まだまだ、私たちは強くなれるみたいだ。特にデルマを中心に。