作品タイトル不明
40.教会
町の一角にある敷地。その中に足を踏み入れると、林の中に古びた教会が見えてきた。その教会の前では一人の子供がソワソワした様子で歩き回っていた。
「おーい、帰ったぞ!」
「あっ! デルマお兄ちゃん!」
デルマが声を上げると、その子がパッと顔を上げて、どこかに走り去っていってしまった。一体どこにいったのだろうか? そう思っていると、教会の裏からシスターの恰好をした女性が走ってきた。
「デルマ! ノノ! スコット! 大丈夫ですか!?」
その女性はデルマの近くまで駆け寄り、しゃがんでその体を確かめた。
「……怪我はありませんか?」
「ちょっと、擦りむいちゃった」
「本当にちょっとだけな!」
「……もう、危険なことは止めなさいと、あれほど……って、あら? その人たちは?」
シスターは私たちの姿を見て、不思議そうな顔をした。
「この子たちにちょっと助けてもらったんだ。それで」
「助けてもらったって、やっぱり危険だったんじゃないですか! やっぱり、冒険者なんてなるものじゃありません!」
「こ、これからは大丈夫だよ。この子たちが協力してくれるって言っているから」
「協力って……この子たちも同じ子供たちじゃないですか。数が増えても、危険が無くなるわけじゃないんですよ。それに」
「シスター! とにかく、この子たちの話を聞いてくれ!」
説教を始めようとしたシスターの言葉を遮り、デルマたちは私たちを前に出させた。すると、シスターはやわらかく微笑んで話しかけてくれる。
「この子たちを助けてくださりありがとうございます。私はこの教会、孤児院のシスターをしてします、テレセスと申します」
「私はメル。この子がティナで、この子がサリサだよ。あの、お節介かもしれませんが、私はこの子たちに協力したいと思っています」
そういうと、テレセスは不思議そうな顔をした。
「デルマたちに、ですか? 申し訳ありませんが、冒険者稼業は危険だから止めて欲しいと思っています。このたちは守られて当然の存在。それが、自ら危険を冒すなんて……」
「そんなこと言っても、支援金が減らされた今、生活なんて出来ないじゃないか。シスターも夜に一人で嘆いていたじゃないか……。もう、食べる物が買えないって……」
「み、見ていたんですね……」
デルマの言葉にテレセスは申し訳なさそうに俯いた。食べ物を買うのにも困窮していたなんて……。どうにか、今の状況を好転させたい。
「だから、俺たち……強くなりたいんだ。メルが作る料理を食べて」
「料理を食べて強くなる? それはどういう意味ですか?」
「これはここだけの話にして欲しいんだけど、私の作った料理を食べると、レベルが上がったり、能力が付与されるの」
「そ、そんな凄い能力が!?」
私のスキルの話をすると、テレセスは驚いた様子だった。普通に考えて料理を食べるだけではレベルアップはしないし、能力だって付与しない。
「だから、この子たちに私の料理を食べさせて、強くなって、それで自分たちで稼げるようになったら良いんじゃないかって思って」
「そ、それは……でも、危険で……」
そう話すが、テレセスは戸惑った様子だった。
「危険かどうかは、私の料理を食べてから決めて。ティナ、お願い」
「はい。これも秘密でお願いします。キャンピングカー!」
ティナがスキルを発動すると、目の前にキャンピングカーが現れた。
「こ、これは!?」
「じゃあ、私は料理を作ってくるから、後は説明をお願い」
「分かりました」
私はサリサからイーデルスイーパーの赤い実を受け取り、キャンピングカーの中に入って行った。
キッチンへ向かうと、すぐにネットショッピングを開く。これから作るものは、すぐに食べられるスムージーだ。
無糖のヨーグルト、はちみつ、牛乳を購入。調理台に現れると、今度はまな板と包丁を取り出す。
そこで赤い実の皮を剥き、実を一口大に切る。それをミキサーの中に入れ、買った材料と氷を入れる。
ミキサーを起動すると、中身が切り刻まれ、混ざり合っていく。十分に混ざり合ったところでミキサーを止める。
蓋を開けると、赤い実の甘い匂いが漂ってきて、とても美味しそうだ。それをコップに注いで、またスムージーを作っていく。
そうして、人数分のスムージーが出来上がると、お盆に乗せてキャンピングカーを出た。
「おっ、出来上がったか!」
「はい、みんなでどうぞ」
「わぁ、甘い匂いですね」
私はスムージーの入ったコップをみんなに配った。すると、美味しそうな匂いにみんなが歓声を上げる。
「じゃあ、飲んでみて」
そういうと、みんながコップに口を付けた。私も飲むと、芳醇な甘さとスッキリとした味わいが口いっぱいに広がった。
「うん、美味しい!」
「美味いのじゃ!」
「最高の味わいです!」
サリサもティナも気に入ってくれたみたいだ。デルマたちの様子を窺うと、とても美味しそうに飲んでくれた。
「こんなに美味しい飲み物は初めてです。とても料理がお上手なんですね」
「ありがとう。これで、レベルが上がったはずだし、もしかしたら能力が付与されているかもしれないよ」
「ほ、本当に?」
まだ信じられないといった様子のテレセス。なので、まずは私たちからステータス画面を開いて、能力を確認する。
すると、そこには――『自然回復(小)』のスキルが付与されていた。
「私は自然回復(小)だったよ」
「わらわも同じじゃ! 回復系の能力が来たか! これは役に立つぞ!」
「私も同じです。これで、怪我をしても治りが速くなりますね」
どうやら、今回はみんな同じ能力らしい。ということは、この能力がデルマたちにも付与されたと思う。
すると、デルマたちはステータス画面を開き、声を上げた。
「すげー! 本当にスキルがついている!」
「ほ、本当!」
「こんなことってあるんだな!」
どうやら、こちらもちゃんと能力が付与されたらしい。テレセスを見てみると、ステータス画面を確認しているところだった。
「ほ、本当です……。スキルが生まれています」
「言ったでしょ? 私の料理にはこういう力があるんだよ」
「疑ってすいませんでした。本当に能力の付与が出来る料理だったんですね」
「まぁ、魔物を食べているからっていう条件も含まれているけれどね。この料理の力でデルマたちを強くして、自分たちで稼げるようになれば助かるんじゃない?」
そう伝えると、テレセスは戸惑った表情をした。力が付くと思っても、子供なのには変わりない。きっと、デルマたちの事を心配しているのだろう。
だけど、その表情が突然引き締まった。
「……お願いします。この子たちを強くしてくださいますか?」
「任せて! みんなで一緒に強くなっていこう!」