作品タイトル不明
37.お小遣いと噂
「ふー、食った食った!」
「メルの料理も美味しいですが、町の料理も素朴で美味しいですね」
「私も久しぶりに誰かが作った料理を食べれて嬉しいよ。町に着いたら、こうして食べ歩きをしようよ」
「それは名案じゃ!」
「そうですね。いつも料理はメルに頼りきりでしたから、メルに休んでもらいたいので、町で食べられる時は食べましょう」
町を歩き回って色々食べた。焼き菓子、フルーツ飴、味のついた野菜チップス、串焼き。食べ歩きならではの料理ばかりで、食べて歩き回るのがとても楽しかった。
「これから、どうするのじゃ?」
「しばらくはここを拠点にしてお金を稼ごう。お金がいっぱいあれば、ネットショッピングで気になった商品をたくさん買えるしね」
「私……車関係のアクセサリが欲しいです。だから、稼いで稼いで、稼ぎまくります!」
隣ではティナがやる気で燃えていた。自分の好きな物には熱中するタイプらしい。普段はお淑やかだから、このギャップにビックリする。
「わらわも気になったものがたくさんあるのう。食べ物もそうだし、面白いおもちゃがあったのに興味を引かれたぞ」
「そっか、ティナもサリサも自分の欲しいものがあるんだ。だったら、今度から稼いだお金は食費と生活費を抜いた分はそれぞれのお小遣いにする?」
「な、なんじゃと!? 個人のお小遣いじゃと!?」
「い、いいんですか!?」
「うん。少しは自由になるお金を持っていた方がいいと思うんだよね」
そう言うと、二人はパァッと嬉しそうな顔をした。本当に嬉しそうにしていて、なんだか可愛い。
「急に自分の好きなものが買えると思うと、動揺してきたのじゃ! 手当たり次第に買わねば!」
「それだと、お小遣いがすぐになくなっちゃいますよ! ちゃんと厳選して買わないといけません」
「厳選している内に買う気が無くなったらどうするんじゃ!? その時の気持ちで買うのもいいと思うぞ?」
「そ、それは……。うぅ、どうしましょう……」
嬉しそうにしていたのに、あっという間に悩ましく頭を抱えた。まさか、お小遣いでこんなに態度を買えるとは……。
食費と生活費をちゃんと考えて、しっかりとお小遣いを残しておかないと。
そんな風にお小遣いのことで頭を悩ませながら歩いて行くと、冒険者ギルドが見えてきた。
「とにかく、冒険者ギルドでどんなことが出来るか調べてみよう」
「そうじゃな。金策は必要じゃ! お小遣いのために!」
「お小遣い……しっかり稼ぎます!」
目的がお小遣いになっている。そんな二人を微笑ましく見ながら、冒険者ギルドに入った。すると、広いホールにたくさんの冒険者の姿がある。
やっぱり、西側で一番大きな町だ。規模も人も大きすぎる。その中を歩いて行くと、依頼書が張られているボードを見つけた。
そこに駆け寄って見てみると、色んな依頼書が張られてあった。
「どんな依頼が受けられるかな……」
「特殊個体の依頼はないかの。あれを倒せば、金ががっぽがっぽじゃ!」
「私たちに出来そうな依頼はどれでしょうかね」
三人でジッと依頼書を見ていた時――。
「お、おい」
後ろから声が聞こえた。振り向いてみると、そこには大柄なおじさんの冒険者が立っていた。
「お前たち、見ない顔だが……。まさか、依頼を受けるのか?」
「うん、そうだよ」
「金を貯めなければ生活が出来ないからのう」
「頼れる人がいないので、依頼を受けないといけないんです」
「な、なんてこった……。今すぐ、孤児院に行って保護してもらえ。そこでなら、寝る場所と食べるものはあるから。な?」
そのおじさんはショックを受けたように顔を覆い、切実な顔をして訴えてきた。これ、門の所でも同じやり取りをした。
「大丈夫だよ。こうみえても、ちゃんと冒険者でお金を稼いできたから。ほら、冒険者ランクもEランクだよ」
「わらわは特殊個体を倒したから、Dランクじゃ!」
「ちゃんと、戦えるスキルも魔法もあるので安心してください」
「ほ、本当だ……。じゃあ、あの子たちよりは戦えるってことか? いやいや、まだこんなに小さな子たちが冒険者っていう辛い役目を……」
ちゃんと説明したのに、そのおじさんは悩まし気にぶつぶつと言い始めた。この人は門兵の人と同じで、私たちの事を心配してくれていたのが分かった。
始めの町、次の町であまり良い思いをしてこなかったから、この優しさは心にくるものがある。まだまだ、この世も捨てたもんじゃないな。
「ともかく、あの子たちに比べたら強いっていうことは分かった」
「あの子たちって?」
「あぁ。教会の孤児院に住んでいる子供たちだよ。最近、支援金が減った影響で冒険者になって、日銭を稼いでいるんだ。お前たちのような子供が外で怖い思いをしながらな」
なるほど。噂で聞いた教会の孤児院の子供たちの事だったんだ。子供が冒険者をしてお金を稼ぐのは大変だ。私たちはスキルのお陰と、サリサの強さで何とかなっているけれど、その子たちは大丈夫なんだろうか?
「何か、戦えるスキルとかあるの?」
「それがないんだよ。神の祝福の儀式で得たスキルはどれも戦闘系のものじゃない」
「……だったら、冒険者稼業をするのは辛いよね」
「あぁ、そうなんだ。その子たちとお前たちが同じだと思ったら、つい声をかけちまったんだ。気を悪くしないでくれよ」
「ううん。ここに、私たちのことを心配してくれる人がいてくれて嬉しいよ」
「そうか? 何か困った頃があれば、ギルド職員にでも俺たち冒険者たちにも声をかけてくれ。出来る限り協力させてもらうよ。じゃあな」
それだけをいうと、そのおじさん冒険者は離れていった。
「ほほう、ここには気のいい奴がいるもんだな。前の町とは大違いじゃ」
「なんだか、やりやすい町ですね」
「そうだね。ここだったら、安心して活動出来るかも」
気にかけてくれる人がいるってだけで、心の重みが軽くなったようだ。それにしても、私たちのような子供がスキルもなしで冒険者稼業をするなんて……本当に大丈夫なんだろうか?
不安げに俯いていると――。
「なんじゃ、メルはその子たちの事が気になるのか?」
「えっ……バレてた?」
「メルのことですから、気にしているんじゃないかなって思ってました」
「あはは、そうなんだ。なんか、辛い目に合っているって思ったら、心が痛くなってね」
二人に自分の気持ちが筒抜けだなんて思いもしなかった。正直な気持ちを吐き出すと、二人は優しく微笑んだ。
「メルらしいの。何、困ったことがあれば、協力すればいいことじゃ」
「そういう優しさなら、気にしないで差し伸べればいいと思います」
「二人とも……そうだよね。うん、そうしよう」
二人の後押しに心が温かくなる。もし、自分に出来ることがあれば、協力すればいい。