作品タイトル不明
36.次の町
「あっ、見て! 町が見えてきた!」
道をキャンピングカーで進んでいると、遠くに城壁が見えてきた。
「ほう、昼前に着いてしまったな。本当なら、昨日着いていたんじゃな」
「昨日はネットショッピングに夢中でしたからね」
「夜も盛り上がったのじゃ」
そんなことを言っていると、どんどん城壁が近づいてくる。適当な所でキャンピングカーを止めると、三人で下りた。
「ここから歩くよ」
「仕方がない、動くとするか」
「私のキャンピングカー、しばらく休んでいてね」
サリサが背伸びをすると、ティナが寂しそうな顔をしてキャンピングカーをしまった。そうして、私たちは町に向かって歩いて行く。
「これから行く町はどんな町なのじゃ?」
「この国の西側の地方で一番大きな町らしいよ。人は多いし、物は溢れているし、賑やかなところ」
「じゃあ、何か珍しいものがありそうですね。町の中で買い物もしてみたいです」
「食べ物もあるかもしれんのう。そうだ! 買い食いというものをするのじゃ!」
「じゃあ、ちょっと町をぶらつこうか」
きっと、見たことのないものがいっぱいあるはずだ。それを思うと、心がわくわくする。
その町のことで話していると、あっという間に城壁の前までたどり着いた。すると、門兵の人がこちらに気づいた。だけど、すぐにその表情が驚きに変わる。
何だろう? と、思っていると門兵が駆け寄ってきた。
「君たち! 見たところ、子供だけのようだが……。もしかして、捨て子か?」
「えっと……捨て子って言えば捨て子だけど」
「やっぱり、そうか。孤児院のある教会に行くんだろう? 案内してやろうか?」
な、何だか話が飛んでいるような……。
「いや、その必要はないよ。宿を取るつもりだから?」
「えっ? でも、お金は?」
「あるよ。ほら、見て。私たちは冒険者だから、自分で稼げるんだよ」
不思議そうな門兵に冒険者証を見せた。すると、顔がグッと歪む。
「そんな体でこんなキツイ仕事をするなんて……。あの子たちと同じだ。宿に泊まるよりも、孤児院で世話になった方がいいぞ。その方が、仲間がたくさんいる」
「私たちの事を考えてくれてありがとう。でも、これでもちゃんと独り立ち出来ているんだよ。だから、世話にならなくても大丈夫」
「……その年齢で独り立ちをしているなんて、凄いな。なんだか、余計なお世話だったな」
「ううん、大丈夫。心配してくれて嬉しかったよ」
「君たちのように、あの子たちも独り立ちが出来ればいいんだが……」
そう言って、表情を暗くさせた。どうやら、この門兵はその孤児院の子供たちの事を心配しているらしい。その態度から、心が伝わってくる。
「呼び止めて悪かった。困ったことがあれば、俺に何でも聞いてくれ。それに、孤児院にはテレセスというシスターもいる。相談したら、力になってくれるだろう」
「色々と良くしてくれてありがとう」
「あぁ、気を付けて」
門兵はそう言って、私たちを笑顔で見送ってくれた。
「なんだか、良い人でしたね。私たちが孤児だって分かったら、親切にしてくれる人って中々いませんから」
「普通は孤児だと分かったら、鬱陶しがられるからね。親切にしてくれる人は貴重だよ」
「そういうもんか? 人間とは繊細じゃのう」
中々、あんな風に気にかけてくれる人はいない。それを知るだけで、少しだけ心の不安が消えるから不思議だ。
もし、この町の人たちがあの門兵のように親切でいたら、居着いてしまいそうだ。そんな風に思えるくらい、親切にしてくれる人がありがたかった。
門を通り過ぎ、町の中へと入る。すると、賑やかな通りに出た。人がたくさん行き交って、色んな音がする。
「わぁ、流石西側で一番大きな町だけのことはあるね。人が多い!」
「こんなに賑やかな場所、初めてきました。なんだか、いるだけで楽しくなりますね」
「こんな場所なら、さぞ、美味しいものもあるじゃろう。さぁ、美味しいものを求めて、行くぞ!」
サリサが先頭に立つと、ずんずんと進んでいく。その後ろを付いていくと、人通りの多さを肌で感じた。
「くんくん。あっちから良い匂いがするのじゃ! 二人とも、行くぞ!」
「「わっ!」」
突然、サリサが私たちの手を掴んで走り出した。人の間をすり抜けて、どんどん進んでいく。その先には、一つの屋台があった。
「ここじゃ! 店主! ここには何が売っているのじゃ!?」
「はい、いらっしゃい。小麦と玉子を混ぜた生地を焼いて、蜜をかけたお菓子が売っているよ。買っていくかい?」
「もちろんじゃ! 三つ、頼む!」
「はいよ」
私たちが言う前にサリサがお金を出して注文してしまった。すると、店主が出来よく鉄板で生地を流して焼いていく。
平べったく焼いていくと、良い匂いがしてきた。その生地をひっくり返すと、綺麗に小麦色に焼けた表面が見えてきた。
そのまま、ヘラで押して焼いていく。良い匂いがまたしてくると、表面に蜜を塗った。途端に甘い匂いが立ち込めてくる。
それが終わると、ヘラの先端で四等分に切り分けた。切られた四つの生地を一つに重ね合わせ、紙で包んで手渡してくる。
「お待たせ」
順番に手渡されると、私たちは屋台の横に移動した。
「「「いただきます」」」
指先で一枚の生地を摘まむ。それを口に入れると、サクッとした。表面がカリカリなのに、中身はフワッとしている。そして、何よりも蜜の濃い甘さ。
「んぅっ! これは、美味いのじゃ!」
「表面のカリカリも中身のフワフワも良いですね」
「蜜がとんでもなく甘いよね」
「素朴なんじゃが、癖になるのう。これはいくらでも食べたい!」
「一つじゃ足りませんね」
「ふふっ、二人とも食いしん坊だね」
サクサクと食べていくと、一枚、二枚と減っていく。そして、あっという間に食べ終えてしまった。
「これは手作りの美味しさがあるね。市販の奴にはない美味しさって感じ」
「その場で作ってもらうと、凄く美味しく感じますよね。どうしてでしょう?」
「まぁまぁ、そんなことはどうでもいいのじゃ。まだまだ、食べ歩くのじゃ! 二人とも、行くぞ!」
私たちが考えていると、サリサがまた手を引っ張って通りを進んでいく。これは、サリサが満足するまで、食べ歩きは続きそうだ。