作品タイトル不明
24.旅のお供
「じゃあ、しゅっぱーつ!」
「アクセル全開ですね!」
「それは止めるのじゃ!」
準備を終えた私たちは、ようやく町から離れることになった。車内は明るい声が響き、ティナがアクセルを踏む。車はゆっくりと走り出し、どんどんスピードが上がっていく。
「今までは、町から森の少しの時間の運転でしたが、今日は町から村までの長距離運転ですね。運転出来て、とても楽しいです。どれだけ、スピードを出してもいいですか?」
「頼むから、スピードはあまり出さないでくれ。それで、わらわたちはどこに行くのじゃ?」
「この道沿いを進むと、一つの村があって、その奥に町があるみたい。村で一泊してから、町に向かおうと思うよ」
地図を見て、現在地を確認する。この国、ウベルスキレン王国の中央が現在地だ。だけど、ウベルスキレン王国が大陸のどこに位置をしているか分からない。だから、その情報を得るためには大きな町に行く。
「旅をするなら国を跨いだ方が楽しいと思うの。だから、他の国の情報も手に入れて、行く方向を決めるよ」
「他の国にいけるなんて、夢のようです。本で見た絵はとても素晴らしいものでした」
「楽しいのなら、それでいいのじゃ。行く町は大きいのか?」
「大きいらしいね。ウベルスキレン王国内で五指に入る大きな町だよ」
きっと、この町にいけば他国の情報が入ってくるに違いない。それを得て、諸国漫遊の旅を満喫しよう。
「じゃあ、ここからは楽しいドライブですね。でも、お二人は車内にいなくていいのですか? ここはただ座っているだけですよ?」
「景色を見るのも楽しいじゃろう」
「それに、ティナを一人でいさせるのは、寂しいしね」
「お二人とも……ありがとうございます。一緒にいられて、運転がもっと楽しくなりました」
やっぱり、みんなで一緒にいて会話を楽しみながらのドライブが楽しい。みんなで、何か一緒のものを楽しめればいいんだけど……。
そう思って、ネットショッピングを見てみる。旅にあったら楽しいもの……。そう思って色んなカテゴリーを見ていくと、あるカテゴリーに目が留まった。
「音楽配信……」
ネットショッピングでそういうのも買えるんだ。らしいといえばらしいけれど、異世界で聞けるものなの?
データで貰えるものなのだろうか? それとも、それとは別の何かの力で?
まぁ、大きな買い物じゃないし、ものは試しに買ってみよう。その中から好みの曲を選ぶと、即座に購入する。すると、新しい画面が出てきた。
「『接続できる機器があります。データを転送しますか?』……どういうこと?」
この異世界に音楽データを転送できるものがあるっていうこと? 一体、それはなんだろう?
とりあえず、転送してみる。どこに転送されたのかドキドキしてみると、キャンピングカーのセンターコンソールが起動した。
「えっ、嘘! 転送ってそこ!?」
「えっ? どうしたんですか?」
「なんじゃ、なんじゃ?」
「ごめん、説明はちょっと待って……」
ついているナビ画面がパッと点灯し、文字が浮かび上がる。それは先ほど買った曲の題名だった。
まさか、本当にここに転送された? 恐る恐る、ボタンを押すと――曲が流れ始めた。
「えっ? な、なんですか、これ!」
「なんか、音がし出したのじゃ!」
その曲を聞いて、二人はビックリした。それもそうだ。どこにも曲を奏でる楽師がいないのに、曲が流れているのだから。
「メル、どういうことですか?」
「えーっと、全部説明するのは大変で……」
「大変でもいいから、説明してくれ!」
困惑気味の二人は詳しい説明を求めた。なので、私は一から説明した。ネットショッピングで音楽を買ったこと。それがなぜかキャンピングカーと接続されて、音楽が流れたこと。それに、前世の音楽の事情など……。
「ようは、条件が揃ったから音楽が聞けるようになったって言うことですか」
「摩訶不思議な状況じゃが、こうして音楽が流れているのだから、信じるしかあるまい」
「私もびっくりしたけれど、出来ちゃったんだよねー」
まさか、ティナのキャンピングカーと接続可能だなんて。信じられないが、こうして出来たのだから信じるしかない。
「でも、この曲は良いですね。今まで聞いたことがない曲です」
「なんだか、ノリがいいのじゃ!」
「前世ではドライブ中は音楽をかけて、遠くまで行ったものだよ。それだけで、全然楽しさが違うからさ」
「分かります。音楽を聴きながら運転すると、もっと楽しくなります」
「なんか、気分が変わってくるな。これは、いいのじゃ!」
二人とも音楽が気に入ってくれたみたいだ。私も音楽を聞きながら旅が出来るなんて思ってもみなかったから、これは思わぬ収穫だ。
これで景色に飽きたら、音楽を楽しめばいいし、二人と音楽のことを話して楽しむことも出来る。やっぱり、娯楽は生活を充実してくれる素敵なものだ。
「私はもっとノリのいい音楽がいいです。もっと、大きな音を流しながら運転したいです」
「まぁ、そういう曲もあるね」
「わらわはもっと楽しくなる音楽がいいのじゃ! 踊ってしまうくらいに明るい奴が!」
「うん、そういうのもあるね」
二人ともすでに好みがあるようだ。大音量で運転するのは楽しいだろうし、踊れる音楽があれば体を動かして楽しむことも出来る。音楽一つで色んな楽しみ方があるなー。
「じゃあ、今日の夜はどんな音楽がいいか聞いてみる? ネットショッピングの画面から視聴が出来るみたいだから」
「えっ、いいんですか? わぁ、夜が楽しみになります!」
「夜まで待てん! 今、やるぞ!」
「もう、サリサは意地悪ですね! 私が運転しているからって、先に一人で楽しむなんて!」
「ティナはいいではないか。運転を楽しんでおるのじゃろう? 今のわらわにも、楽しむものは必要なのじゃ!」
自然と話が弾んで、楽しい気持ちになる。やっぱり、旅はこうでなくっちゃ!