軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

これ、なんですけど

イストファに、その手を振り払う理由は無い。

むしろ、自分がそうして求められているかのような行動が嬉しくて、しかし握り返せば拒絶されるのではないかという恐れが「そのままついていく」というだけの選択をイストファにとらせてしまう。

ケイからしてみれば、それはイストファからの心の距離であるように感じてしまうのだが、とにかく並んだ二人と……その後ろを歩くカイルとドーマという構図が出来上がる。

「……あの二人、どういう関係なんですか?」

「武具店の客と、武具店の親父の娘だろ」

「カイルに聞いた私が馬鹿でした」

「馬鹿を自覚するのはいい事だと思うぞ」

「はあ!?」

取っ組み合いを……いや、取っ組み合いと呼ぶにはドーマが一方的に有利だが、それはともかく。

「あ、ちょ……ドーマ! そこまで! そこまでで!」

「チッ、仕方ないですね」

カイルが絞め落とされる寸前でイストファが慌てて止めに入り、微妙な空気も霧散していく。

ゲホゲホと咳をするカイルは何とも自業自得な部分もあるが、イストファの呆れたような溜息に残った気合で睨んでくる。

「おいイストファ、もっと俺を心配すべきだろ」

「どうせカイルが怒らせたんでしょ?」

「よく分かってますね、イストファ」

胸を張るドーマと比べるとカイルは不満そうだが……あまり否定できないだけに「チッ」と舌打ちするに留める。

「でもドーマもダメだよ。仲良くしないと」

「まあ、それは……分かりますけど」

言われたドーマが少しバツが悪そうにして、カイルが「まったくだ」と頷くが……今度はドーマは軽く睨むだけに終わらせる。

「仲良いんだね、三人とも」

「あ、ごめんなさいケイさん」

「ううん、いいよ」

話の終わった頃を見計らって声をかけたケイは、言いながら再びイストファの手を握る。

「じゃあ、行こう?」

「はい」

そうしてケイに連れられてフリート武具店の前まで歩いていくと……店の扉を吹っ飛ばしながら誰かが転がり出てくる。

鋼の鎧を纏った剣士らしき男には、イストファにも見覚えがあった。

ステラと会ったあの日、イストファを罵倒した銀級冒険者の剣士だ。

「ぐ……この! 何しやがる!」

「うるせえ! テメエみてえな馬鹿はお呼びじゃねえんだ!」

すぐに起き上がり文句を言う男に罵声で返すのは、店の奥から出てきたフリートだ。

素手で鎧を纏った男を吹き飛ばしたのだろうか、その手には何も持ってはいない。

「なぁにが最強の剣を寄越せだ! そういう寝言は他の武器屋で言えってんだ!」

「くっ……!」

男は周囲に野次馬が出てきているのを見ると「後悔するぞ!」と捨て台詞を残して走り去っていく。

それを下らないものを見る目で見送ると、フリートはケイの姿を見つけ笑顔に変わり……すぐに手を繋いでいる、というより手を繋がれているイストファへと視線が移る。

「……イストファ、何度か言ったと思うけどよ。その場合は婿入りだからな」

「え。あ、いや。そういうわけじゃ」

慌てて手を離すイストファにフリートは「分かってるよ」と笑い、大股でイストファに近寄り革鎧の傷をチェックし始める。

「大分ザックリといってやがるな。怪我はしてねえみてえだが……ああ、いや、ヒールか?」

「はい。ドーマの……そこの神官と、あとモリスンっていって」

「あー、いい、いい。そういう細けぇ事はいいんだ。とりあえず無事に帰ってきたんだ。それでいいだろ!」

言いながらフリートはイストファの肩を叩き、中に入るように促す。

「イストファ君、またね」

「はい、また」

その間に買い物袋を抱えたケイが店の奥へと消えていくが……それを見送ると、フリートはイストファの背中をグイと押す。

「とにかく入れ。なんか成果物もあるみたいだしな」

「あ、そうなんです」

グイグイと押されながら店の中に入っていくイストファだが……やがてカウンターまで辿り着くと、布に包まれたゴブリンヒーローソードを置く。

「これ、なんですけど」

「どれどれ」

慣れた手つきで布を剥がしたフリートは剣を見ると同時にほう、と声をあげる。

「頑丈の能力つきのゴブリンヒーローソード……の劣化版か」

「はい」

「単純に鉄の剣として見りゃあ、並より少し上程度だが……能力を加味すりゃ、長く使える剣だ。こいつを売るのか?」

「僕が持ってても、能力を使えませんから……」

「魔力か。なるほどな」

言いながらフリートは剣に魔力を流し、古代文字を輝かせる。

「その一切を切断せよ、か。中々良いな、当たりだ」

「おいオッサン、その言い方だと複数あるみてえだが」

カイルのそんな疑問にフリートはアッサリと「あるぞ」と答える。

「俺の知ってる限りじゃあ、遠距離攻撃だとか障壁なんてのがある。くっだらねえのだと光るだけってのもあるがな」

「へえ……」

「まあ、全部魔力が必要なんだがな!」

ガハハと笑うフリートとは逆にイストファは落ち込んでしまうが……そんなイストファに「ま、気にすんな」とフリートは笑う。

「で、こいつだが……そうだな。んー……11万イエン、だな。どうだ?」

「どうだって……えっ」

イストファは思わずカイルとドーマへと振り向き、二人が頷くのを見てフリートへと向き直る。

「そ、そんなに高いんですか?」

「おう、能力の組み合わせがいいからな。どうする。買い取るか?」

「お願いします!」

「よし、んじゃコレで11万イエンだ」

目の前に置かれた11枚の1万イエン金貨を見て、イストファはゴクリと唾を呑み込む。

凄い。そんな感想しか、出て来なかった。