軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

細いな、とは思ってましたが……

「んじゃ、そろそろ行くか」

そんなカイルの声を合図にイストファ達は冒険者ギルドを出ていくが、その途中で何度も「頑張れよ!」という声と共に先輩冒険者達に背中を叩かれる。

「おい、やめろコラ!」

「ハハハ、頑張れ!」

その中でも抵抗するカイルが面白いのか集中的に何度も叩かれているが、イストファとしては何とも嬉しい気分だった。

冒険者ギルドの扉を潜ると、丁度昼を大分過ぎた頃。

ドーマのお腹がくぅ、と可愛らしい音をたてて思わず振り向くと……ドーマが顔を真っ赤にしていた。

「あ、これは……えーと。朝食べたっきりでしたから」

「あー、分かる。俺もペコペコだ」

グゥ、とドーマに比べるとやや派手な音がカイルのお腹から響いてくるが、そんな二人の視線はイストファへと向けられる。

「……なんか平気そうですね、イストファ」

「だな。キョトンとした顔しやがって」

「え、そんな事言われても……」

全く鳴らない自分のお腹をさすりながら、イストファは困った顔をする。

「ほら。僕、ご飯食べない事多かったから……なんか身体があんまり食べないのに慣れてるっていうか」

身体が食事をしない状態に適応してしまっているのだ。

勿論それが健康的であるわけもないが、イストファの身体は少量の食事で満足してしまうのだ。

これには普通であればそれなりの時間が解決に必要だろうが……。

「え、どういう事ですか」

「あー。コイツ、貧乏時代が長かったんだよ。こりゃ早めに下の階層行くべきだな」

ドーマの疑問にカイルはそう答え、小さく溜息をつく。

「僕の食事と下の階層行くのに何か関係あるの?」

「あるぞ。ダンジョンの魔力を吸収して強くなれば、自然と身体も強くなろうとするからな。飯の量は当然増える」

「増えたらお金が……」

「稼げばいいだろ」

「そだね……」

苦笑するイストファだが、ドーマがじっと自分を見つめている事に気付いて思わず一歩引いてしまう。

「な、何? ドーマ」

「いえ……そういえば、確かに……ちょっと失礼しますね」

そう言うが早いか、ドーマはイストファの腕や体をペタペタと触り始める。

「細いな、とは思ってましたが……そうですか、そういう……」

「え、えーと……?」

「いいでしょう」

「え、何が?」

「二階層への挑戦の話です。ゴブリンを倒していても成長の速度に限界があります。早めに行くべきでしょうね」

そんなドーマの言葉に気恥ずかしくなって、イストファはドーマに掴まれていない方の手で頬を掻く。

心配してくれている。それがよく理解できたのだ。

「え、えーっと……それより、何か食べようか」

「だな」

「ですね」

言いながら、三人は周囲を見回す。

冒険者ギルド周辺は冒険者目当ての露店も多く出るが、時間のせいか食べ物系の露店はちょっとした休憩をとっている所も多い。

やっている露店の中から選んでもいいだろうが、育ち盛りのカイルとドーマには少し不満なラインナップだ。

「うーん。あ、あの店とかどうかな?」

「いや待て。今ある露店で選ぶ必要もねえだろ」

「そうですよイストファ。よく考えてみれば、ゴブリンヒーローを倒したお祝いもしてませんし」

「え?」

「とりあえず荷物が邪魔だ。武器屋の親父のとこ行くぞ」

「え、でもお腹空いたんじゃ」

「いいんですよ。後で食堂に行きましょう」

「え、でもそういうお店って高いんじゃ」

カイルとドーマにグイグイと押されながら、イストファは声をあげる。

食堂。そういう店があるのはイストファも知っているが、入った事は無い。

落ちぶれ者が捨てられた残り物を漁っているのを見た事はあるが、その程度のものだ。

「高くねーよ。ほれほれ、行くぞ」

「う、うん……」

しかしまあ、たまにはいいのだろうか?

いや、本当にいいのだろうか?

なんだか悪い事をしているような気になるイストファの背中を二人が押して、やがてイストファも諦めたように自分で歩き出す。

フリート武具店のある職人通りの辺りに近づくにつれ、露店も減っていくが……そこでイストファは見知った顔を見つける。

「あ、イストファ君!」

しかしイストファが声をかける前にその知り合い……フリートの娘、ケイが声をかけてくる。

今日も食材がどっさりと入った袋を抱えているケイは嬉しそうな顔をして……しかし、すぐにギョッとした表情になり駆け寄ってくる。

「イ、イストファ君! ……あ、怪我はないんだね。でも、これ……」

ボロボロの革鎧を纏ったイストファの姿に思うところがあったのだろう、ペタペタとイストファの身体に触れ、心配そうな表情になる。

「大丈夫です、ちょっと怪我はしましたけど……ヒールをかけて貰いましたから」

「ちょっとした……ぐぅっ」

何かを言いかけたカイルがドーマに肘鉄をくらって悶絶するが、そこで初めてケイはドーマに気付いたようで、少し驚いたように視線を向ける。

「え、あれ。新しい仲間?」

「ドーマです。まだ正式なパーティとして登録したわけではありませんが」

「そうなんだ。私はケイ。よろしくね」

「はい。よろしくお願いします、ケイ」

和やかな雰囲気で握手をするケイとドーマだが、ケイはすぐにイストファに視線を戻す。

「……鎧、ボロボロだね」

「はい」

革鎧の傷をなぞりながら、ケイは表情を曇らせる。

冒険者はそういう職業だと分かっているし、イストファにその道しか無かったのも分かっている。

けれど、それが悲しくて。

「お店に来るんでしょ? 一緒に行こ?」

それでも、そのくらいしか言うことが出来ずに。

ケイは、イストファの手をとり歩き出す。