軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

でも、僕一人の頑張りってわけじゃなくて

「あ、はい……なんで分かったんですか?」

「なんでって……」

ケイの指先が傷ついたイストファの革鎧に触れて、イストファは「あっ」と声をあげる。

そういえばゴブリンファイターに軽く傷つけられたし、肩鎧にもゴブリンアーチャーの矢が刺さった跡がある。

「頑張ってるんだね」

「……はい。でも、僕一人の頑張りってわけじゃなくて」

言いながらイストファがカイルに視線を向けると、カイルはふんぞり返るように胸を張る。

「ま、今のところ俺様は頭脳労働担当だがな」

「そうなの?」

「えーっと……はい。でも居てくれて助かってます」

下手なフォローを入れてもカイルは怒りそうだな……と思ったイストファはそうケイに答えるが、どうやら正解だったようでカイルは満足そうに頷いている。

「イストファ、私は?」

「あ、えっと。勿論です。ステラさんのおかげで僕は今こうしてますし」

「そう? 嬉しいわ」

ぎゅっと背後から抱きしめてくるステラにイストファは照れたように笑って、ケイがちょっと困惑したような笑みを浮かべる。

「えっと……お師匠様、なんだよね?」

「そうね、今は」

イストファが何かを言う前にステラがそう答え、ケイから「へえ……」という返答が返ってくる。

なんだか微妙に気温が下がったかのような妙な悪寒を感じながらも、イストファは「あの」と声をあげる。

「ケイさん。良かったら荷物持ちますから、一緒に行きませんか?」

「いいの?」

「はい」

遠慮がちに差し出してくるケイから袋を受け取ると、イストファは先頭を歩き出す。

勿論、そうする必要などないのだが……なんとなく昨夜の事も今の事もあったせいか、ケイを一人にするのに僅かな不安が沸き上がったからだ。

あるいは、行く場所が同じだからというのもあるだろう。

一言で言えば「心配だから」と、ただそれだけの話だ。特に不思議な事でもない。

ないが……ケイからすれば、それは少し驚きの変化ではあった。

イストファが、誰かの心配をする余裕を持つことが出来ている。

それがどれだけ凄い変化であるのかは、ケイにはよく分かっている。

それを自分ではない人間がもたらす事が出来た事実を少し悔しくも……けれど、嬉しくも思えるのだ。

「ねえ、イストファ君」

「はい」

「よかったね」

「? はい」

少し疑問に思いながらも頷くイストファにケイは微笑んで、そのまま並んで歩く。

そして、そんな二人の蚊帳の外のカイルとステラは……二人の後ろを歩きながら小さく囁き合う。

「……どういう関係なんだ、あの二人は」

「お世話になった武具店の娘さんと客でしょ?」

「うーむ」

「ちょっと、どうしたの二人とも」

振り返ったイストファに二人は「なんでもない」と首を横に振って、ケイはクスクスと笑う。

「ほら、着いたよ」

「ん? ケイか。お帰り」

「ただいま、お父さん。あ、イストファ君、ありがとっ」

店の前に立っていたフリートを見つけると、ケイはイストファから袋を受け取って店の奥へと入っていく。

自然とフリートとイストファの視線が合い……フリートは、ジロリとイストファを睨む。

「……言っとくが、その時は婿入りして継いでもらうからな」

「え?」

「ちょっとドワーフ。妙な事言わないでくれるかしら」

「なんだ、居たのかエルフ」

サッとイストファを背後から奪取するように抱き寄せるステラに、フリートが嫌そうな顔で息を吐く。

……が、その横から顔を出したカイルを見つけると「ん?」と声をあげる。

「あ、えっと。友達のカイルです」

「未来の大魔法士、カイルだ。イストファの友人だ」

自信満々に髪をかきあげるカイルにフリートは「ほおー」と声をあげる。

「中々いい装備だな。そこまでのもんは久々に見たぜ」

「だろう?」

「ああ。ま、中に入りな」

促し店の中に入っていくフリートの後を追うようにイストファ達もフリート武具店へと入っていくと……店のレイアウトが少し変わっている事に気付く。

店の入り口付近においてあった安い武器を雑多に入れた樽が店の奥の方へと移動しており、軽い武器は棚の少し取りにくい位置へと移動させてあるのだ。

「あれって……」

「ん? おう。昨夜、どこぞの店から奪われた武器で事件が起こったみたいでな。衛兵連中がある程度の自己対策を頼むって回ってたんだよ。それで、一応な」

手に取りやすい位置に重たい武器があったところで、持って素早く逃げるのは難しい。

軽い武器を持って逃げるにも、手に取りにくい位置にあれば怪しい人間だと判断した時点でフリートが声をかけられるし、場合によっては店の外まで殴り飛ばせる。

つまりは、そういうことなのだ。

「お前等も気を付けろよ」

「つーか、俺達だぞ襲われたのは」

「何っ!?」

あっさりとバラすカイルに、フリートが驚いたようにイストファへと視線を向ける。

「……そうなのか?」

「はい、一応。でも」

怪我もしてませんし、と言おうとしたイストファの両肩を叩き何かを確かめるようにすると、フリートはふうと安堵の息を吐く。

「怪我はしてねえみたいだな」

「あ、えっと、はい」

「むしろ今ので怪我したんじゃないかしら」

「あはは……」

確かにフリートの今の打撃はちょっと痛かったな……などと思いながらイストファが苦笑していると、フリートはケッと悪態をつく。

「まったく、よりによってイストファを襲うたあな。俺がその場に居りゃ全員再起不能にしてやったのによ」

「い、いやそこまでは……」

「フン。どうせ五体満足でもまともな事しねえんだ。どうなったって変わりゃしねえよ」

言いながら、フリートはイストファの鎧の傷を確かめていく。

「それなりの硬革鎧を渡したはずなんだが……結構ザックリいってやがるな。ゴブリンの特殊個体でも相手にしたのか?」