軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

僕一人じゃ、そんなもの気付かなかったよ

「……む」

ゴブリンアーチャーの姿が消失したのを見て、カイルが声をあげる。

「速いな、もう消えたか」

「別にいいよ。とりあえずソードマンの方の魔石を取り出すね」

「ああ」

イストファがゴブリンソードマンの魔石を取り出すべく、その死骸に近づくと「ああっ!?」というカイルの驚いたような声が上がり、イストファは思わず戦闘態勢に入る。

「カイル!?」

まさか新手がきたのか。そう考え意識をも戦闘時のものに切り替え……しかし、蹲り何かを見ているカイルの姿に疑問符を浮かべた。

「えっと……カイル?」

「イストファ! これを見てみろ!」

「え?」

言われて、イストファは何事かとカイルの下へと歩いていき……キラリと輝く拳大のガラス玉のようなものが視界に入る。

「え、何それ。魔石……じゃないよね?」

「寝ぼけてるんじゃねえ。これは帰還の宝珠だ!」

「え!?」

確かそれはゴブリンスカウトから出るという話ではなかったのか。

そんな想いを込めた「え、でも……」というイストファの戸惑った言葉に「ああ」とカイルも頷く。

「……信じ難いが、未確認情報だ。俺達が新発見者だぞ、イストファ……!」

「そ、そうなの!?」

「ああ。真実だと認定されれば冒険者としての評価にも繋がるし報奨金も出る。ひょっとすると名前も記録されるかもしれんな」

「うわあ……凄いね! どのくらい出るのかな!?」

「知らん! だが、くくっ! 思わぬ幸運だ。これで帰れば凱旋ってやつだな!」

なんて夢のある話だろうとイストファもワクワクする心を抑えきれない。

冒険者としての評価。そんなものがあれば、一流の冒険者へと確かに近づくだろう。

「僕一人じゃ、そんなもの気付かなかったよ」

「おいおい、謙遜するなよ」

「いや、だって僕だったら魔石にしちゃってたし」

「ああ……そうか。そういやお前、ソードマンの魔石は取ったのか?」

「あっ」

言われてイストファは慌てて振り向くが、ゴブリンソードマンの死骸はすでに消えてしまっている。

「ああー……」

「すまんな。だがまあ、代わりに何か新発見が落ちてるかも分からんぞ?」

「だといいね……」

ちょっと気落ちしながら、イストファはゴブリンソードマンの死骸があった場所まで歩いていき……そこにキラリと光るナイフが落ちているのを見て拾い上げる。

「ナイフだ……」

特に装飾の類はない。シンプルなデザインで、刀身は鈍く光る鉄色。

新品のような輝きを放ってはいるが、前に持っていた鋼鉄のナイフと比べると輝きが多少鈍いようにもイストファには感じられた。

「ねえ、カイル。これって」

「ナイフか。よかったな、前に持ってたのは無くしたままだったろう」

「うん。で、これ何か分かる?」

「何って……ナイフだろ」

何言ってんだお前、と言いたげなカイルにイストファは「そうじゃなくて……」とナイフの柄の方をカイルへと向ける。

「これ、カイルならどんなナイフか分かるかなあって」

「あ?」

カイルは胡乱げな顔でナイフを受け取ると、まじまじと眺め始め……やがて、イストファがやったように柄の方をイストファへと向けて返してくる。

「知らん。少なくとも特殊な能力のあるナイフじゃないな。材質とかまでは知らん。俺は鍛冶師じゃないんだ」

「そっか。とりあえず普通のナイフってことだね」

「迷宮産のナイフを普通というかは知らんが……まあ、安物ではあるな」

「うん、でもあると助かるよ」

言いながらイストファはナイフを空になっていたナイフ用の鞘に納める。

「よし、じゃあ戻るか。忘れ物はないな!?」

「あえて言うなら無くしたナイフかな」

「それは諦めろ!」

冗談めかして言うイストファにカイルはキッパリとそう答え、二人は同時に笑う。

「それじゃあ、帰還の宝珠を使うが……」

「うん」

「どうする? 逃げる手段もあるし、ゴブリンガードに挑戦しとくか?」

そんな冗談を言うカイルに、イストファは苦笑で返す。

「やめとくよ。倒すより倒される方が速い気がする」

「……ま、確かに。お前の装備の更新は必須だな」

「カイルは?」

「俺か? 装備と頭脳は最高だ。魔力は成長を待て」

「期待しとくよ」

「おう、期待しとけ」

そんな話をしながら、カイルは帰還の宝珠を拾い上げる。

「正直、俺も使うのは初めてだ。俺をしっかり掴んどけ、イストファ」

「う、うん」

言われてイストファはカイルの腕を掴み、カイルは「よし」と頷く。

「帰還の宝珠よ、俺達を地上へと導け!」

そう叫ぶと同時に、二人の姿は宝珠から溢れた光に包まれていく。

「うわ……眩しい!?」

「離すなよイストファ!」

身体の中に何かが満ちていく感覚と共に、二人の視界は切り替わる。

「う、おお……」

「ううっ」

頭がグラグラする気持ち悪い感覚に襲われ、二人はその場にへたり込むように蹲る。

「ん? お前達は……イストファと、あと連絡にあった高そうな装備の子供か」

「うぷ……え?」

まだ気持ち悪い感覚を引きずりながらもイストファが振り向くと、そこには衛兵が立っていた。

周囲を見回すと、どうやら此処はダンジョンの入り口であり……今はもう夜であるらしい事が理解できた。

「此処って……外……?」

「その様子だと、帰還の宝珠を使ったか。あれは慣れてないと酔うからな」

「あ、はい……カイル、カイル。大丈夫?」

「うう……俺はもうダメだイストファ。世界が回っているし頭痛と倦怠感が酷い……これはきっと呪いだ……」

ぐったりとしているカイルの様子を見て、衛兵は慣れた事のように大笑いする。

「ハハハ、たまにそうなる奴はいるんだ! ま、そのうち酔いも収まるさ!」

「だといいんですが……」

心配そうにカイルの背をさするイストファだったが……結局カイルが復調するまでには、更に数分の時を必要としたのだった。