軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

そういえば、なんだが

「うむ……それを聞けただけでも、君達を呼んだ甲斐があった」

王は頷くと、置かれたお茶を一口飲む。

「実を言うとな、君以外の2人もすでに此処に呼んでいる」

「えっ」

ドーマとミリィの事だろうとイストファはすぐに気づき、何とも言えない視線を王へと向ける。

その視線の意味をどう捉えたかは分からないが……王は楽しげな笑みを浮かべてみせる。

「先程の話とは違うが、あの2人にも褒美を与えねばならなくてな。その問いを投げてみたのだ」

「褒美……ですか」

「うむ。元々その件で呼んでいたからな。中々に面白い答えだった」

「そ、そうなんですか」

「うむ。どちらも自分の為ではなく、人の為に褒美の権利を使いたいと言ってきた。その詳細までは言えんがね」

ドーマについてはよく分からないが、ミリィのことについてはよく分かる。

というか、今まで気づかなかった自分に気付き、イストファは「あっ」と声をあげる。

「まさか、ミリィは……」

「安心しなさい、とだけ言っておこう」

「は、はい」

頷くイストファに頷き返すと、王は小さく笑う。

「むしろ自分が気付いて言うべきだった……そんな顔だな?」

「……はい。僕はミリィの友達なのに……今、言われるまで気づきませんでした」

「そこまで聖人であるべきとは思わんがね。君がそこまでの域にその年で達しているようであれば、本当に人であるかどうか疑ってしまう」

「せ、聖人!?」

「ああ。友を思う気持ちは美しいものではあるが……ふむ」

王はそこで言葉を切ると、イストファをじっと見る。

「イストファ。儂は是が非でも君に何か与えたくなってきたぞ」

「え、ええ!? こ、困ります……」

「うむ。カイラスの友人であるからなどという理由ではなくだな、君は儂から褒美を受け取らねばならんのだよ」

受け取らなければならない。その言葉にイストファは混乱するが、その様子を見て王は笑う。

「ハハハ、言っただろう? あの2人にも聞いたと。君は此処にどういう用事で来たか忘れたかね?」

「え? あ、えっと……そっか。オークの……あれ? でも僕達はステラさんの」

「それは口実だ。オークテイマーとやらの件については報告を受けている」

王はそう言うと、至極真面目な……王としての表情へと切り替わる。

「……感謝する。あんなものを放置していては、この国の存亡に関わっただろう」

イストファは、それに黙って頷く。確かに恐ろしい敵だった。

もう1度相対したとして、確実に勝てるという保証はない。

「人間をもテイムするオーク。そんなものが国内で生まれたというこの事実は、放置するわけにも隠蔽するわけにもいかん。恐らくは……しばらく、世界中が騒がしくなるだろう」

言いながら、王は机を指で叩く。

「それ故に、君達への注目度も否応なく上がる。ステラ殿の名前で君達を呼んだのは……まあ、『ステラ殿のおまけ』とすることで注目度を減らす策といったところだな」

「な、なるほどです……」

「しかしだなあ……このステラ殿がまた難物でな。儂が下賜できる物など欲しがりもしないだろう。国宝ですら鼻で笑いそうなところがある」

「あ、あはは……」

かなり明確に想像出来て、イストファは思わず苦笑してしまう。

「まあ、しかし……君と話すことで方向性は見えた気がする」

「そ、そう……なんですか?」

「ああ。ん……そういえば、なんだが」

「はい」

「君は結婚を約束した相手や恋人などは居るかね?」

「へ!? い、居ませんけど……」

正確には結婚を申し込まれた相手なら居るが、言う事でもないだろうとイストファは思う。

そもそも、1度断ってしまってもいる。

……無論、それでステラが諦めたかどうかは全く別の話ではあるのだが。

「これから、君にはそういう話が舞い込む可能性があるとだけ言っておこう」

「え! ど、どうしてですか?」

「簡単だ。大々的にはやらないようにするが、今回の件は貴族の間でも広まっていく。そうした際に、君は将来有望な若者として見られるということだ」

しかも儂のお気に入りだ、と言う王にイストファは冷や汗を流す。

ダンジョン探索を始める時、「一流の冒険者」という目標を定めたことがある。

しかし、こういう問題が絡んでくるようになるとは……まったく、想像すらしていなかったのだ。

「無論、儂も可能な限りどうにか出来ないか気を配ってはみるが……」

難しいな、と言いながら王は「おお、そうだ」と声をあげる。

「あのミリィという子と婚約してみるというのはどうだ? すでにそういう相手がいるとなれば、多少は減らせよう」

「え? ……あっ」

そういえばその辺の話を王様は知らないんだっけ……とイストファは気付くが、どう訂正すればいいか分からない。

「ん? どうした? 問題があるのか?」

「えっと……あの、ですね」

「うむ」

「そ、そういう関係じゃ……ないので」

イストファとしては、そう言うのが精一杯だった。

ミリィの事情とかそういうのを全部さておいても、まずその事を完全に忘れていた。

その事実に、イストファは「ミリィ……ごめん」と心の中だけで呟いていた。