軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

向こうさんも気が早くてね

その後の話をしよう。

まず、グラートとローゼとはそのまま別れた。

元々違うパーティでもあり、彼等には彼等の目標がある。

そしてエリスだが……しばらくはナタリアと行動を共にするらしい。

「お子様が立ち入るには少々ヘビーな問題」とはナタリアの言葉だが……それでも、「こっちに任せといて」といったナタリアをイストファ達は信じる事にしていた。

……最後に、全体依頼の話だ。

結果として、森林地帯の調査とオークの撃滅は相当に上手くいった……らしい。

イストファがオークテイマーを討ったタイミングでだろうか、オークやモンスターの統率が急激に乱れた……らしい。

らしい、というのはあの後イストファ達は証拠品を担いで早々に帰ったからだが……それは驚きと共に迎えられた。

明らかに強力な装備を纏うオークナイト、そしてオークナイトの護衛をしていた「謎のオーク」。

これがテイマーであったという事実は一職員に取り扱えるようなレベルの話ではなく、カイルとギルド支部長の話し合いによって王都へと話が送られたらしい。

カイルとしては秘すべき話かとも考えたのだが、何処かのテイマーが今回の事件を見れば気付くかもしれない。

そこから話が妙な風に広がっていく前に手を打っておくべき……と判断せざるをえなかったのだ。

それで全てはカイルの、そしてイストファ達の手を離れ……1か月が経過した。

「あああああああああー!」

ダンジョンの入り口で叫ぶのはカイルであり、その周囲にはボロボロのイストファ達がいる。

「どうしろってんだ、あんなん!」

「あ、あはは……ちょっと、かなりキツいよね」

「こっちの攻撃が一切通用しませんからね……やはりもっと弱点のようなものを見つけませんと」

「ボクは生きて帰れただけでも儲けものだって思います……」

巨獣達は、とにかく強くてとにかく大きい。

デカさは強さだが、タフネスの証拠でもある。ちょっと斬ったり焼いたりした程度では不快になる程度で、それは巨獣達の力の入れ具合として還元されてくる。

隙のない強さだったミノタウロスとは違い、単純に強すぎるのだ。

「こりゃ、マトモに倒してクリアしようってのが間違ってるのかもしれねえぞ……」

「あ、それは僕も思ったかも。でも、ステラさんなら斬れるかもな……とも思った」

「お前の師匠を並べるんじゃねえ。アレはマジでやりかねんぞ」

「そりゃ出来るけど。流石にあのサイズを普通に斬るのは手間かしらね」

「うわあっ!?」

突如背後に現れたステラにカイルが飛び退き、イストファが「あ、ステラさん」と顔を明るくする。

「はあい、イストファ……と、その友達の皆」

「……否定はしませんけど」

「カイルと似てますね」

「似てねえぞ」

ドーマとミリィにカイルが即座に突っ込み、ステラは軽くスルーする。

「でも、やっぱりステラさんは出来るんですね」

「まあ、本物に挑みに行った事もあるわね。けど、デカいってのは有利なばっかりじゃないわよ」

「そうなんですか?」

「そうよ。たとえば……」

言いながら、ステラの指がイストファの足元を指差す。

「虫……?」

そう、そこでは小さな虫がテコテコとイストファの足元を通り過ぎていくところだった。

「私に言われなきゃ、気付かなかったでしょう?」

「はい。えっと……」

「ふふふ、別に責めてなんか居ないわよ。足元の無害な虫にまで反応して生きてるようじゃ、行く末が心配になるもの」

足元を指していた指を上げると、ステラは指揮棒を振るかのように指を軽く振ってみせる。

「大切なのは、私達も連中も、生き物としての根本的なところは同じってことね」

「同じ……」

イストファは、いや……人間は、足元の無害な虫までは気にしない。

巨獣もそれと同じであるならば。

「あれ、でも僕達……何もしないうちから襲われてたような」

「それはそうよ。イストファだって明らかに刺してきそうな虫を見たら警戒するでしょ?」

「……あっ」

誰とはなしに、そう口にする。

もしかして、そういうことなのかと……誰もが理解したのだ。

「ちょっとヒントあげすぎたけど……ま、このくらいはご褒美よね」

「ありがとうございます、ステラさん! ……カイル!」

「おう、早速準備を」

「でも、そこまで!」

ステラはそう言うと、イストファを軽く抱き寄せる。

「え? ス、ステラさん?」

「おいステラ。どういうつもりだ?」

「どういうつもりも何も、つまりはこういう事よ」

言いながらステラが取り出したのは、一枚の便箋だ。

封蝋を破られた跡があるが……カイルはそれを見て軽く目を細める。

見慣れた封蝋……王家のものだ。

「……エンパイアの件で、か」

「そうよ。私を通じて、貴方達にもご招待がきてるわ。優秀な弟子と、そのパーティメンバーも是非……ってね」

「そういうことか……」

王家の言う「是非」は「必ず」と同義だ。

断れば、何があるか分かったものではない。

「……てことは、俺のせいか」

「そういうわけでもないと思うわよ? ま、貴方の思ってる方向とは違うって意味でだけど」

「ああ?」

疑問符を浮かべるカイルに、ステラは意味ありげに笑ってみせる。

「……ま、ご招待にあずかるとしましょ。私もあまり行きたい場所じゃないけどね」

別に断れないわけではない。王家がそれでステラを敵視するなら、いくらでもかかってくればいいとすら思っている。

しかし、今回ばかりは話を受けてもいいと。ステラはそう思っていたのだ。

「向こうさんも気が早くてねー。迎えの馬車まで寄越してるのよ」

今大騒ぎよ、と。ステラは呆れたようにそんな事を口にした。