軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

少し面倒な話になるぞ

「ゴブリンがどれだけ馬鹿かってのは分かんねえけどよ」

ナタリアの呟きに反応したカイルが、戻ってくるイストファに視線を向けながら答える。

「コレがゴブリンが仕掛けたものじゃないとすると、少し面倒な話になるぞ」

「……オークかもってことよね?」

「そういうこった。連中はゴブリンより頭が良いってされてる。だとすると……」

先程ゴブリンが引っかかった時に、鳴子が鳴った。

もし仕掛けたのがゴブリンであったにせよオークであったにせよ、仕掛けた連中は恐らくすぐに来るだろう。

戻ってくるイストファを見ていたカイルは……次の瞬間、木々を薙ぎ倒しながら現れイストファを吹っ飛ばした巨体に目を見開く。

「イストファ!?」

灰色の、身長180cmはオーバーしているであろう筋肉質の身体。

獣の革で作ったのであろう服を纏い、鉄の斧を構えたオークは……しかし、吹き飛ばしたイストファが自分に向かって飛び込んでくるのを見て驚きに目を見開く。

「グゥ!?」

「でええりゃあああああ!」

叫ぶ。気合と共に跳び、跳んで一気に距離を詰め短剣を振るう。

オークとイストファでは、腕のリーチも違う。短剣で攻め込もうと思えば自然と懐に飛び込まざるをえず、それはオークの斧による致命の一撃を受ける可能性もこれ以上ないくらいにある事を覚悟せねばならない。

だが、それでもイストファは躊躇わない。オークの振るう斧を短剣で逸らす。

当然、容易いことではない。ギャリンと金属同士の擦れる音が響き、オークの一撃の重さにイストファの顔が僅かに歪む。それでも逸らす。逸らしきる。

その勢いのまま突っ込み斬り裂く。

「ガアアアアア!」

「まだ、まだあ!」

再度斬り裂き、心臓を狙うように刺し……ナイフを鞘から引き抜くと、斧持つオークの腕へと突き刺す。

手放された斧は、そのまま一歩下がったイストファの手へ。一瞬のためらいもなく投擲された斧が、オークの頭へと突き刺さる。

「ガッ……」

絶命したオークの身体から自分の短剣とナイフを引き抜くと、そこでようやくイストファは「ふう」と息を吐く。

「ちょっと危なかったかも……」

「ヒヤヒヤさせるんじゃねえよ……ちょっとビビったぞ」

「あはは、ごめん」

言いながらイストファは、今度こそ戻ってきてカイルに軽く胸元を叩かれる。

「しかし、やっぱり居やがったかって感じではあるが……」

「鉄の武器保有……ですか」

「むー……」

カイルの呟きに、ドーマとミリィが察したようにハッキリしない言葉を返す。

どう考えてもヘンドリクソンの件が浮かんでくるが、この場で大っぴらに言う事でもない。

「別に難しい話じゃないんじゃない?」

「あ?」

カイルがナタリアに訝しげな表情を向けると、ナタリアは軽く肩をすくめてみせる。

「アタシ達に必要なのは、それがどの程度の脅威なのかって話でしょ?」

「……まあな」

「そして現状、連中は棍棒の類だけじゃなくて、しっかりとした鉄の武器で武装していると分かった。それを何処で手に入れたかは、また別の話じゃない?」

確かにそうかもしれないとカイルは思う。

どうせ武器をオークやゴブリンにバラまいたのはテイマー、ひいてはその裏に居るであろうヘンドリクソンだとしても、彼等は現状には何の関係もしてこない。

となると、考えるだけ損というものだろう。

「……言う通りではあるな。となると、残る問題はあの武器をどうするかだが」

「荷物になるよね」

「放置して別のモンスターに拾われても面白くはねえが……許容するしかねえか?」

言いながらカイルはミリィに視線を向けるが、ミリィは「無理」と言いたげに首をフルフルと横に振る。

「なら私が持ちましょうか?」

「必要ねえ。しかし、こういう時はトランスポーターの重要性が身に染みるな」

「あんなの雇うのは相当余裕のあるパーティよ? トランスポーター自体は戦闘にほとんど役立たないんだし」

「あー、やっぱそうなのか」

「そりゃまあ、荷物持って動きは鈍いし。戦力にならないからトランスポーターやってるって言っていいくらいよ?」

「うーむ……」

悩み始めてしまったカイルの肩を、イストファがトンと叩く。

「カイル、そういうのはまた今度……」

「あ、おう。そうだな。こんなところで悩む話でもなかったか」

言いながら、カイルはオロオロとしていたエリスに視線を向ける。

「おい、エリス」

「は、はいぃ!?」

「たぶん、この周辺にオーク共が潜んでると思うんだが、どうだ?」

「え!? か、可能性はあると思います」

そんなカイルとエリスの会話に、イストファを含む全員が驚きの声をあげる。

「ど、どういうこと!?」

「そうですよ、説明してくださいカイル!」

「あー、簡単な話だよ」

そう言うと、カイルは壊れた鳴子を指差してみせる。

「アレだ」

「さっきの鳴子?」

「おう。アレを仕掛ける意味は『近づく奴への警戒』だ。つまり近づいてほしくない場所、守りたい場所が音の聞こえる範囲にあるってことだ」

そう、それはつまり。

「つまり……この近くに、例のエンパイア騒動と関係あるかないかは分からねえが……たぶん、オークの集団が居る」