軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

僕達がやるしかない

「そ、それならカイル。こんな所にいると危ないんじゃ」

「そうでもねえ」

「どういうこと?」

「そいつ等だよ」

言いながらカイルが指差したのは、オークやゴブリン達の死骸だ。

此処はダンジョンの中ではないので死体は消えないし、魔石も取れない。

故に放置されたままのそれを指差して、カイルは説明を始める。

「ゴブリン共が鳴子に引っかかって鳴らして、飛び出てきたのがオーク1体。これが何を意味してるかって話だ」

「……そんなに数は多くない、とか?」

「それも可能性としてはあるな。もう1つの可能性としては、さっき言った通り……何か守りたいものがある場合だな」

「守りたいもの……といっても、エンペラーは間違いなく死んでますよ?」

ドーマに言われてカイルは「そうだろうな」と頷く。

その辺りは、癪ではあるがステラの腕を信用している。

まさかステラがオークエンペラーを仕留めそこなうとは思えないし、そこに関しては確実だ。

ぶっちゃけた話で言えば、アースドラゴンを斬り殺すような奴がオークエンペラーをどうにか出来ないはずがない。

「可能性としては、そうだな……オークエンペラーの持ってた何か、だろうな」

そもそもオークエンパイアとは、文字通りオークによる帝国だ。

オークエンペラーによって統率される国は絶対帝政であり、トップであるエンペラーはどのオークよりも良い装備を身に纏う。

そして今回の場合、ヘンドリクソンとその配下が関わっている……かもしれない案件だ。

オークエンペラーにそれなりの装備が渡されている可能性も、充分に有る。

「それって……何か凄い価値のあるものってことですよね?」

「オークにとっては、っていう前提がつくがな」

「それでも、オークが守ろうとする程度には価値があるものですか」

「あるかもしれない、って程度だがな。ただのキラキラする石って可能性だって充分に有る」

そもそもカイルはオークにマトモな審美眼があるなどとは思っていない。

最悪、空の瓶を王笏として持っていたと聞かされても「そうだろうな」と頷くだろう。

人間にだって審美眼のある者は然程多くないのだ。オークであれば言うまでもない。

「しかしまあ……そうなると、一度戻って報告する必要があるよね」

「ええ、その方がいいと思いますが」

イストファとドーマがそう言って頷き合うが、ナタリアが「えー」と不満そうな声をあげる。

「それだと、たいした報酬にはならないわよ?」

「けど、安全な方が……」

「むー」

安全優先、とイストファに言われてしまえば純粋な戦闘要員ではないナタリアとしては何とも反論し辛いのだろう。それでも多少不満そうな様子が見える。

「ま、仕方ないかあ……欲張って殺されても丸損だし」

「損とか得とかはさておいて、俺は行ってみるべきだと思う」

「え。カ、カイル……?」

意外な人物からの意外な意見にイストファは驚いたような表情を見せるが、カイルとて戦果が欲しくて言っているのではないだろう事がその難しそうな表情からは見て取れた。

「今回のオークエンペラーの件はナタリア、お前も知ってるだろうが裏がある」

「……ま、ね。王都絡みだって程度の話は知ってるわ。それ以上はヤバい案件らしいんで首突っ込んでないけど」

そう、ナタリアもオークエンパイアの残党絡みなどという案件に対し下調べもなしに挑もうとしたわけではない。

トラップスミスギルドで金をかけてある程度の情報を買い、深く首を突っ込めば危険だが通常の冒険者としてやる分には報酬が期待できる案件だと理解した上でやっている。

「つまり、だ。オークエンペラーにはそれなりの武装が渡されてた可能性は充分に有る」

「……それを逃げたオーク達が持っていると?」

「たぶんな。オークエンペラー自身がつけてた装備はステラが回収してるだろうが、サブ武器の類があった……かもしれねえ」

それは「かもしれない」という可能性の話ではあるが、充分に有る話だとカイルは考えていた。

「しかし、それなら余計に戻るべきなのでは」

「さっき言ったよな。イストファが『ここに居て危なくないか』って聞いた時、そうでもねえって」

「はい。それが何か……?」

カイルが何を言おうとしているのか分からず首を傾げるドーマに、カイルは「つまり」と言いながら視線を遠くへと向ける。

「つまり……連中、逃げてる最中かもしれねえ」

「は!?」

「逃げてる!?」

「おう。さっきオークが1体で来たのは捨て駒。連中の頭の中で想定してる『敵』はステラ……どうしようもねえ強敵であって、俺等じゃねえってことだ」

そう、オークエンパイアの生き残りであればステラという「災害」の事は嫌というほどに理解しているはずだ。

彼等にとって「襲ってくる敵」というのはステラ基準であり、それはオークエンペラーであろうとオークエンパイア全体で挑もうと敵わぬ化け物なのだ。

「でもって、その生き残りが何かを守ろうとしてるっつーんなら……」

「逃げる……ってこと?」

「そういうこった。送った捨て駒が戻ってこねえ。となれば当然、ステラが来ると思って逃げる。そんな中で悠長に報告なんぞしてたら……」

逃げ切られる。そして逃げ切った先で、オークエンペラーが使うような武器を持ったオークが暴れ出す。

「ゾッとしねえ話だろ? なあに、オークエンペラーをやれってわけじゃねえんだ。俺が大魔法の1つでもぶち込んでやれば済むかもしれねえ」

「……行こう。確かに、僕達がやるしかないと思う」

イストファがそう宣言して、全員が頷く。

そう、これは覚悟を決めなければならない話だ。

そして……それに関しては、イストファ達は慣れている方であった。