軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

手柄欲しい連中と協力とか

そして4人……いや、ナタリアとエリスを加えた6人が立っていたのは、迷宮都市エルトリアの近くに広がる森だった。

この森には特に名前はついてはいないが、それは迷宮都市エルトリアの住人が、この森に然程思い入れがないというのも関係している。

通常、森が近くにある都市は林業が盛んであったり、何らかの「森と共に生きる」生き方をしている事が多い。

例としては森から切り出した材木で建築を行ったり、そうした材木が他地域への輸出材料になったりするわけだが……「迷宮」そのものが巨大な鉱山のようなものとして機能しているエルトリアでは、わざわざ森から木を切り出して産業にする必要が無い。

とはいえ各種燃料などとしての木の需要がないわけではない……のだが、それも限定的だ。

その為、森は基本的に薬草や木の実などの「森の恵み」を得る為の探索などで一部の冒険者が入るだけに留まっているのだが……定期的に大規模なモンスターの掃討作戦も行われている。

それ故に一定の安全は確保されているはずの、いわば冒険者にとっては「あまり面白みのない」森は、今一番冒険者達が集まる場所と化していた。

「……」

「どうした、イストファ」

「うん。僕、武器を手に入れたらこの森で稼ごうかなって思った事もあったんだけど……結局来なかったなって」

そう、薬草採りをしていたイストファにとって森での探索は「一つ上の稼ぎ場所」であったのだが……結局、ダンジョンに潜る事で森には来ていなかったのだ。

そんな自分も、今は8階層に潜る冒険者になっている。それがイストファに、なんとなく自分が遠い場所にきてしまったような、そんな不可思議な気持ちを感じさせていたのだ。

「ま、確かに今更俺等がこの森で木の実拾いってのもアレだがな」

「あはは……」

成長、という言葉一つで片づけるにはあまりにも寂しいだろうが、事実そのような感じではある。

こんな事件でもなければ来なかったかもしれないと思うと、色々な感情が湧き出てくるのは仕方のない部分ではある。

「とにかく、えーと……エリス。期待してるぜ」

「は、はい! お任せください!」

「固ぇなあ……敬語とか要らねえぞ?」

「は、はあ……」

「私はいいんですよ。これが素ですから」

チラリとドーマを見るエリスに、ドーマは何でもないかのようにそう答えてみせる。

「まあ、そりゃなあ……今更ドーマから敬語が抜けても変な感じするけどよ」

「うん、僕もかな……」

「確かに……ですよねえ……」

カイルに続きイストファもミリィも同意し、ナタリアが状況を纏めるようにエリスの肩を叩く。

「ま、それは今度でいいっしょ。今日はエリスのお手並み拝見ってことで」

「頑張ります!」

グッと拳を握りしめたエリスを先頭に、イストファ達は森の中へと進み始める。

並び順としては、エリスが斥候として先頭に。

イストファが前衛としてその後に続き、カイルとミリィを中心にドーマが後衛、そして後方索敵役としてナタリアがその隣に立っている。

「あ、そこ気をつけてください。罠があります」

「えっ」

少しばかりふかっとした……掘り返した直後のような場所に、イストファは驚いたように視線を向ける。

先頭を歩くエリスはごく自然体で何も気にしていない風に歩いてはいるが、イストファは緊張しっぱなしなのだ。

「これ、罠なんだ……」

「何の罠かは調べなきゃですけど、埋め込み型だから足止めの罠でしょうね」

「なんでこんなとこに仕掛けてやがるんだ」

「たぶんですけど、モンスターが引っかかれば儲けものって感じでは……」

言いながら罠を避けるように奥へ進み……そうしていくと、周囲から怒号や戦闘音が聞こえ始めてくる。

「この音って……」

「あー、やってんな。こりゃ確かに出遅れたかもなあ」

言いながらカイルは小さく溜息をつく。どの程度オークが森の中に残っているかは知らないが、この調子では然程大手柄、というわけにもいかなさそうだ。

まあ、そもそもそんなものを目指してはいないから構わないのだが……。

「他の連中と鉢合わせても、つまらねー諍いになるからな。もう少し離れようぜ」

「え、協力するんじゃないの?」

「バカ言うな。手柄欲しい連中と協力とか、出来るわけねえだろ」

「そうかなあ」

「カイルの言う通りかなー。下手すると寄生がどうのこうのって言われるかも」

首を傾げていたイストファも、ナタリアにまでそう言われれば「そういうものなのかも」と思わざるを得ない。

「じゃあ、音のしない方に行けばいいのかな」

「そうなるな」

ちなみに寄生というのは実力のない者が実力のある者と同行してお零れを得る……言ってみれば、身の丈に合わない戦果を得ようとする行為全般を言う。

実力主義で生きている冒険者にとっては当然歓迎できる行為ではないわけだが……それはさておき。

そういうつもりではなくても「そういうつもりか」などと疑いをかけられるのは、イストファ達でなくとも面白いものではない。

怒号が響いているのは、そういう手柄の取り合いがあるのかもしれなかった。

「とすると、こっちの方角ですね……踏み荒らされた跡もありませんし」

そうしてイストファ達は、エリスの先導で森の奥へ、奥へと歩いていく。