軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

そうですね。素敵だと思います

そうして親睦会代わりの昼食中に、イストファ達はナタリアから色々と話を聞いていた。

「え? それじゃあもう、出発してる人もいるんですか?」

「そりゃそうよ。多少準備不足でも先んじれば手柄を得るかもしれない。そう考えるのは当然の理屈でしょ?」

そう答えるナタリアにカイルも「そうだな」と肯定してみせる。

「残りカスっていっても、エンパイアの残りカスだ。相当数が残っていたとしてもおかしくはねえ」

「なるほど、その中に大きめの手柄があると?」

「おう。つーかドーマ、その辺はお前の方が詳しいんじゃねえか? 現場に居たろ」

「え、居たの?」

「私に分かるわけないじゃないですか。生き残るだけで手一杯でしたよ」

肩をすくめるドーマにカイルが「そりゃそうか」と頷き、興味津々のナタリアに「色々あるんだよ」と返す。

「その色々の内訳が聞きたいんだけど」

「トラップスミスギルドの商品を提供する気はねえぞ」

「ありゃ、その辺も知ってる系?」

「まあな」

カイルとナタリアはしばらく見合った後、ナタリアの方が肩をすくめてみせる。

「……ま、今のアタシの信用はそんなもんよね」

「僕はナタリアさんのこと、信用してますけど……」

「お、流石イストファ!」

「おいイストファ、簡単に他人信用してんじゃねーよ」

「簡単にじゃないけど……」

カイルに睨まれてイストファは困ったように頬を掻くが、ドーマが「それはともかく」と言いながら咳払いする。

「私達の場合、慌てて出るよりもしっかり準備をした方がいいのは間違いないでしょう。違いますか?」

「うん、僕もそう思う。衛兵の人達にも、森は準備してから入れよって言われてたし」

「いや、それはたぶん意味が違うな……」

「え、そうなの?」

「話が脱線するのでカイルはちょっと黙っててください」

机をコンコンと指で叩き始めたドーマにカイルが「お、おう……」と気圧されながらも頷いたのを見て、ドーマは小さく息を吐く。

「とりあえず、現状ギルドからの依頼を見る限りでは森の中の状況については『不明』としか言いようがありません」

「だからボク達で調査って話なんですよね?」

「その通りです。だからこそ殲滅なんていう要素もくっつけているんでしょうけど……」

冒険者ギルドとしても本当に困っている。

そんな叫びが染み出てくるような依頼内容だとドーマは考えていた。

オークエンパイアの件自体はステラが解決したといえど、それで「めでたし」となるほど楽観的になれないのは当然とも言える。

「ま、ギルド側は今の状況にキリキリしてるのは確かだろうけど。その辺の冒険者連中はハッスルしてるわよね」

「そりゃまあ、名前を売るチャンスですし当然では……?」

「違う違う。ここ最近、急速に名前を売ってる連中居るでしょ?」

言われてドーマだけではなくイストファも「えっ」と声をあげる。

「もしかして、僕達……?」

「勿論。ミノタウロスを倒し、その先の階層までの快進撃。6階層から姿が消えたってんで、また話題になってたわよ?」

「あー……なるほどな」

言われてカイルもその事実にようやく気付く。

6階層「追憶の幻影都市」は多数の冒険者が溜まっている階層だ。

その運任せな部分もある性質上、互いの互助のようなものが機能している場所でもあり、自然と顔見知りになる確率が上がるわけだ。

そこに顔を出さなくなった者が居るとすれば死んだか諦めたか、突破したかの三択になる。

そして元気にギルドに魔石を売りに来ているともなれば「突破した」という事実が知れ渡るのは当然とも言えた。

「その辺全く気にしてなかったからな……」

「カイルって、そういうとこありますよね」

「ていうか淡白ですよね、基本的に」

「そ、そんな事ないよ。カイルは良い人だよ?」

「イストファ絡みだけですから。基本イストファにカッコつけてるだけだと思いますけど」

「あー……ボクもそれは薄々……」

「うるせえなあ、もう! 親友の前で善人ぶって何が悪いってんだ!」

「私達だって親友ですからね!?」

「ボクもです」

「おう、そいつは悪ィと思ってるよ!」

「あ、あはは……」

困ったように……どうしていいか分からず本気で困ったように笑うイストファは、今まで黙っていたエリスと偶然目が合う。

目が合ったエリスはちょっとオドオドとした様子で目を逸らし……それではマズいと思ったのか視線をイストファへと戻し、けれどすぐに目が泳いでしまう。

「え、えーと……」

そんなエリス相手にどうしていいか分からず、イストファはかけるべき言葉を探すが……意外にもエリスの方から意を決したような声があがる。

「そ、その!」

「え、はい!」

「な、仲がいいん……ですね」

言っている途中でやはり目が泳ぐエリスだが、言われたイストファは……恐らく、今日一番の笑顔で頷いてみせる。

「はい。僕の自慢の仲間で親友です!」

「……!」

一切の虚飾も照れもない、そんな言葉にエリスはイストファを驚いたような目で見つめ……「いいなあ」と小さく呟く。

「そういうの……素敵ですよね」

「素敵……」

普段使わない単語に、イストファはそれがどういう意味だったかと思い返し……やがて、納得したような表情になる。

「そうですね。素敵だと思います」

素敵。

あまり馴染みのない単語ながら、凄くしっくりくる言葉だと。

イストファは、そんな事を考えながら果実ジュースを口に含んだ。