軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

つーか俺よりお前だろ

そうして机の上に並べられたのは、空揚げの載った大皿とサラダの皿。そしてスープや小皿、果実水が人数分。

各自で好きな分だけ取り分けるとカイルが肉に偏る為、ドーマが取り分けてカイルに嫌な顔をされているが……それはさておき。

「おいドーマ、そんなにサラダを盛るんじゃねえよ」

「何言ってるんですか。しっかり身体を作らないといけないでしょう、貴方は」

「だから肉食ってるだろ」

「野菜を食べなさい」

問答無用でサラダを盛りカイルの前に置くドーマだが、その指は無言でイストファを指す。

「え? な、何?」

そこにはサラダを嬉しそうに食べているイストファの姿があり……カイルは仕方なさそうな顔をしてサラダを食べ始める。

「……え、えーと……?」

「イストファは偉いって話ですよ」

「よく分かんないけど……美味しいよ?」

「カイルはまだまだ子供なんですよ」

「反論しにくい事言うんじゃねえよ……」

そんな会話をしながらイストファ達は比較的どうでもいい話を重ねていく。

「そういえばカイルの服ってそれ、やっぱり凄いの?」

「凄いか凄くないかって基準が何処にあるかにもよるけどよ。まあ、良いモノだとは思うぜ」

「ミリィの服もかなりのものですけどね」

「あ、あはは……おかげさまで……」

ドーマの何気ない台詞がミリィを遠い目にさせてしまったが、空揚げをもぐもぐと食べているので元気ではあるようだ。

「つーか俺よりお前だろ、イストファ」

「え? 僕?」

「その鎧。まだオッサンに見せてねえだろ」

「あー、うん。そうだね」

まだ鋼鉄装備となった鎧をフリートに見せていない。

定期的に見せると約束した以上、此処が見せに行く時なのだろうとイストファも思う。

「でもそうなると、明日の探索はどうするの?」

「休みでいいだろ。そのくらいの余裕は許されるはずだ」

「確かに……あの暑さの対策もしたいですしね」

「その辺は帰ってからな。さ、飯食っちまおう」

言いながらカイルは空揚げを口にする。ジューシーな空揚げの味はカイルに僅かな幸せをもたらし……けれど、響いてきた罵声がそれを台無しにする。

「なんだあテメエ! 俺等とは組めねえってのか!」

「だからァ、アタシはもうパーティ組んでるんだってば」

何処かで聞いたその声に、イストファ達の視線は自然とそのテーブルへと向く。

そこに居たのは、トラップスミスのナタリアで……どうやら3人の男達に絡まれているようだった。

「ちょっと行ってくるね」

「おう」

「私も行きますよ」

立ち上がったイストファを追うようにドーマも立ち上がり、ナタリアのいるテーブルへと向かう。

そして、男がナタリアに掴みかかろうとした、その瞬間。ナタリアの蹴ったテーブルが男の腹に突き刺さる。

「うおっ……!?」

鉄の鎧をつけていた男には通用しなかったようだが……それでも衝撃で一瞬身体が固まって。

その隙にナタリアは立ち上がるとテーブルを踏み台に男の顎に膝を入れる。

「げうっ!」

「あ、て、テメエ!」

「うっさい!」

顎を蹴った男を踏み台に跳び蹴りをもう1人の男に叩きこむと、そのまま地面を転がるようにしながら態勢を立て直す。それは丁度イストファのすぐ近くで……ナタリアは「あっ」と声をあげる。

「あ、なんか久しぶり? 今取り込み中だからちょっと待ってね」

「え、えーと……」

思わぬナタリアの身のこなしにイストファもドーマも絶句するが……残った1人の男が杖を抜いたのを見てハッとした表情になる。

「冗談じゃ済まねえぞ、女ァ! ボルトォ!」

「この!」

即座に短剣を抜き放ったイストファが男の放った電撃を斬り飛ばして。電撃を放った男は、思わず杖を取り落とす。

「な、なあ……?」

ケンカを眺めていた他の冒険者達も、思わず食事の手も止まり静寂が訪れていた。

魔法を短剣で斬り裂いた。それが何を意味するか……それぞれがそれぞれの答えを思い浮かべる。

「魔法剣士か……?」

「いや、柄の石が光ってる。ありゃ魔法剣だ」

「あんなガキが……」

ボソボソと呟かれる声に、ナタリアが「あー……」と頬を掻く。

少し悩むような様子を見せた後、ガンッと机を叩く。

「ボソボソ言ってんじゃないよ! 何そのクソみてえな目は! どいつもこいつも顔も分からねえド新人共が! 余所じゃどうやってたか知らないけどねえ! 此処を管理する迷宮伯様は無法は許されないお方だからね!」

睨みまわせば全員がサッと顔を背け……それを見てナタリアはフン、と毒づく。

「ごめんね。なぁんか巻き込んじゃってさ」

「い、いえ……」

「私もそっちのテーブル、行っていい?」

カイル達が微妙な顔をしているのを見つけたのだろう。笑顔でそう言うナタリアにイストファは「えーっと……はい」と答えるが……視界の隅で魔法を放った男が店員達に取り押さえられ縛られているのが見えてなんとも会話に集中できない。

「ああ、アレ? 店内で魔法ぶっぱなすバカだからね。あのまま牢獄行きだね」

なるほど、確かにそれは安心の治安だが……何を言っていいか分からなくなってしまっているイストファの代わりに、ドーマが「あー……」と声をあげる。

「あの、えーと……コード、でしたっけ? お仲間は今日はどうされたんですか?」

「コードの馬鹿? あんにゃろう、なんか護衛で行った街でゴタゴタに巻き込まれて帰還が延期になったとかでさ。たぶんもうすぐ帰ってくると思うんだけど……」

イストファもドーマもコードの顔は段々うろ覚えになってきているが、どうにも元気にやっているらしい。

その後ナタリアの愚痴を4人で聞かされながら、イストファはぼんやりとそんな事を考えていた。

……ちなみにだが、当然8階層の話などその後出来るはずもなく……部屋に戻ったイストファ達は、各々ぐったりとベッドで寝てしまった事は言うまでもない。