軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

そういうところですよ

「第三王子って……」

「俺の兄だな。母親は違うけどな」

「えっ」

「色々あるんだよ、王族には」

王の場合、王妃が五人いる事も珍しくはない。

その辺りは色々と政治的配慮があったりなかったりするらしいが……それはさておき。

「ったく、俺は王位には興味ねえって言ってんのにな」

「じゃあ……その、えっと……お兄さんがカイルを狙ってるの?」

「ああ。だがまあ、心配は要らねえだろうよ」

「なんで?」

キョトンとした顔のイストファに、カイルは「あー……」と説明する言葉を探すような表情になる。

「つまりな。暗殺者ならともかく、これ程の大事の隠蔽は無理だってことだよ」

これはあくまでカイルの想像だが、恐らく第三王子ヘンドリクソンはカイルの暗殺を企み、まずは暗殺者を送り込んできた。それがミリィに関わる騒動の裏にあったものだ。

それに失敗し、なおかつデュークが出張って来た事で焦ったのだろう。

手札として使える魔法士や、どうやって引き込んだかアースドラゴンをテイムしているテイマーを使ってオークの集落を育てた。

その辺りの細かい方法は想像するしかないが、恐らくはテイマーが活躍しただろう事は疑いようもない。

「モンスター災害という形で俺も始末して、ついでにソレをヘンドリクソンの奴の手下が上手く解決すれば……とか考えたんだろうな。そう上手くいくわけねえとも思うが、まあ少なくともオークエンパイアのなりかけまでは成功してたわけだ」

「それをステラが全て壊した……と」

「ああ。とはいえ、ステラが動いたのは王族の事情とかは関係なくて、単純にイストファの為だろうがな」

そう言われてイストファはなんだか嬉しいような申し訳ないような微妙な気持ちになってしまうが……その気持ちをひとまず置いておくと、とりあえずの疑問を口にする。

「でもそれが、なんで心配ないって話になるの? 隠蔽できないってのは分かったけど」

「犯人っつー証拠がいるからだよ。ステラが顔の判別がつかねえ程粉々にしてりゃ別だが、そんなヘマするとも思えねえしな。遠からずヘンドリクソンに辿り着くし、そうなりゃ奴は良くて幽閉だ。俺に手出しする力なんか、残りゃしねえよ」

「なるほど……しかし、何故今頃手出しする気になったのでしょうね? その気になれば、カイルが王宮にいるうちにどうにでも出来たのでは?」

ドーマの疑問に、カイルはフンと鼻を鳴らす。

「王宮にいる時の俺は魔力のねえ無能ってのが評価だったからな。俺がこっちに来て中々死なねえから焦ったんだろ。それでどうにかなるわけでもねえのにな」

カイルは王位には全く興味がなく、カイルを支持する貴族もいない。

カイルを気にかけているのはデュークくらいのもの……本当は王もなのだが、カイルは気付いていないのでさておいて、ともかくカイルが王になるには支持が足りないしやる気もない。

しかし、それで安心とはいかないのが人間心理なのだろうか。

「……ま、こっちの問題はステラが片付けてくれたんだ。あとは王都の連中で勝手にやらせときゃいい」

「私、王都はもっと煌びやかなものだと思ってたんですが」

ドーマが少し遠い目で言うのを見て、カイルはハッと笑う。

「煌びやかだぜ、見た目はな。中身はドロドロに腐りきってる。金と権力、策謀と罠。男も女も等しく力を振りかざして、それが唯一にして絶対の場所さ」

「……カイルは、王都が嫌いなんだね」

「ああ、大嫌いだね。あそこに浸かると、人間を誰も信用できなくなる」

言いながら、カイルはイストファに視線を向ける。

「だからよ、イストファ。お前に会えたのは俺の人生で最大の幸運だ。信じる気持ちってのを失わずに済んだ」

「うん、僕もカイルに会えて嬉しい。カイルが居なかったら、出来なかった事だらけだったもの」

そう言って微笑み合うイストファとカイルの間に、ミリィがヒョイと顔を突っ込む。

「あのー……ボク達の事忘れてます?」

「え、忘れてないよ」

「イストファはそうかもしれませんけど、カイルはちょいちょいボク達の事を忘れる気がします」

「忘れてねえよ」

「どうですかねえ……」

「なんだドーマまで」

ジト目のミリィとドーマに見られ、カイルは居心地悪そうに身体を揺らす。

「言っておきますけど、私だって皆に会えて嬉しいと思ってますからね!」

「ボクもです。皆に会えなかったら死んでましたし、なんならもっと前に会いたかったとも思ってますよ!」

「あ、その言い方はズルいですよミリィ!」

「ズルくないです!」

「ケンカすんじゃねえよ……」

「あ、あはは……」

あきれた様子のカイルとイストファだったが、やがて顔を見合わせると苦笑する。

「カイル」

「ん?」

「僕達、ずっと親友でいようね」

「当ったり前だろ」

拳をコツンと突き合わせる二人に、ドーマとミリィの視線が突き刺さる。

「ほらあ!」

「そういうところですよ!」

「え、ご、ごめん?」

ギャアギャアと騒がしくなったカイルの部屋。

けれど其処は暖かな空気に満ちていて……きっと、誰もが幸せだった。