軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

まあ、色々あったんだよ

「どうだ、今回の準備は万全か?」

「うん。食料も多めに持ってきたしね」

荷物袋を示すイストファに、ノーツは頷いてみせる。

「飯は大事だからな。しかしまあ、改めて見てみると……」

言いながらノーツは全員を順繰りに見ていく。

「剣士に魔法士、神官戦士に呪法士、か。見事に攻撃に偏重してるな」

「そ、そうかな」

「おう。その組み合わせじゃ、イストファが倒れた時点でキツくなるだろ」

「ええっと……」

答えに窮して振り返るイストファに、カイルが仕方なさそうに口を開く。

「そうさせない為の仲間だろ」

「そうだな。それで? 今まで目論見通りにイストファが倒れず進んでくる事が出来たのか?」

「それは……」

出来た、と言えば嘘になる。ミノタウロスの時も、結果だけで言えばイストファは倒れていた。

ミリィの捨て身の呪法で隙を作らなければ、そしてイストファが再び立ち上がらなければ、あるいは全員で6階層に辿り着く事は無かったかもしれない。

もし他にモンスターが5階層にいたら、もしカイルが帰還の宝珠を持っていなかったら。

そんなIFを想像すれば、ゾッとするのも確かだ。だが……それでも言えることはある。

「それが出来てる、とは言わねえ。イストファに頼ってるのも事実だし、今実際に、お前がいて助かってるのも純然たる事実だ。だが……イストファに頼りねえと思われねえ程度の事をしている自覚は、俺等にもあるぜ」

「僕はそんな事思わないけど……」

「んな事ぁ知ってんだよ。ちょっと黙ってろ」

困ったように言うイストファを手で遠ざけると、カイルはノーツと向き合う。

「何より俺はイストファと親友で、こいつらもイストファと俺の友人だ。コレは利害関係で組んでる連中にはねえメリットだ」

「なるほどなあ……」

「……今、何気にイストファと私達で差をつけましたね」

「前から思ってたんですけど、カイルって独占欲強めですよね」

「うるせえなあ、悪かったよ! お前等も親友だと思ってるよ!」

背後でヒソヒソと囁き合うドーマとミリィにカイルが叫ぶと、ノーツはクックッ、と楽しそうに笑う。

「いいねえ、友情か。ああ、いいぜ。そういうのは確かに強いからな」

「そうかよ」

「ああ。そうなるとアレだな……イストファ、お前はやっぱり、俺の技を覚えていく必要があるな」

「え?」

自分の話題に戻ってきたイストファが驚いたように返すが、それにカイルが聞こうと思って聞いていなかった疑問を投げかける。

「そうだ、ソレだ。ずっと聞こうと思ってたけどよ……お前のあの技、どう考えても此処でくすぶってる奴が使うものじゃねえだろ。お前、なんでこの階層に居るんだ?」

レアモンスターである「魔撃のラーハルト」ですら一撃の元に葬ったノーツの剣技は、明らかにこの階層で苦戦するようなものではない。もっと言えば、とっくに先の階層に進んでいていいはずなのだ。なのに、何故此処に居るのか。それがカイルには理解できなかった。

「此処での依頼を受けて何か探してるのかとも思ったが、そんな様子もねえしな」

「そいつは買い被りだな」

「ああ?」

肩をすくめるノーツに、カイルは思わず不機嫌な表情になってしまうが……ノーツは涼しげな表情のままだ。

「俺はこの階層にいる程度の強さだよ。それに間違いはねえ。そして今の俺の目的は、イストファに俺の技を伝える事だ。そこに疑問の余地が?」

「……いや、ねえな」

「なら、俺がお前等の不利になるように立ち回ってるように見えたか?」

「見えねえな」

「なら何が問題だ?」

「強いて言うならお前自身がなんか気に入らねえ。俺と永遠に相容れない予感がある」

「ちょ、カイル……!」

「それはちょっと」

「ええ、どうかと思いますけど」

イストファを含む3人が思わずといった様子でカイルを止めようとするが、ノーツは楽しそうに笑みを浮かべてみせる。

「ああ、そりゃ同感だ。俺もお前とは永遠に相容れないって気がするよ」

「ちょっと、ノーツまで……」

「まあ、止めるなよイストファ。こういうのは早いうちに出しといた方がいいんだ」

笑顔のまま言うと、ノーツはカイルの前に立つ。

「ハッキリ言うとな、俺は魔法士が大嫌いだ。プライドは高ぇし傲慢だし、体力も全然ねえときてやがる。自分達こそ最強って粋がってるツラ見ると、張り飛ばしたくなる」

「そうかい。俺はそんな風に粋がった覚えはねえし、お前みたいに選民主義的な思想を持ってもいねえな」

「ああ、それは分かる」

「あ?」

アッサリと頷くノーツに、カイルは一瞬呆気にとられたような顔になる。

「これは単純に俺の好き嫌いの問題だ。言ってみれば魔法士アレルギーみたいなもんで、魔法士であるってだけで嫌いになれる自信がある」

「あー……えっとだな」

「だからお前の事も当然嫌いだし、たぶん良い奴なんだろうと頭で理解できても身体は理解しねえ。当然態度にも出るから、お前が俺と仲良くなれねえと思うのは当然だな。俺も仲良くしたくねえ」

「おい、頭でも理解してねえじゃねえか」

「おお、そうだな。だがまあ許容しろ。嫌だって言ってもしばらくお前等に付き纏うんだしな」

そんな事をしれっと言うノーツにカイルは何か言いたげな表情になった後……大きな溜息をつく。

「……そうかよ。まあ、これ以上は俺も何も言わねえ。頼りになるのは事実だしな」

「おう、そうか」

頷くノーツとカイルの話が終わったと判断したイストファは、ノーツにふと感じた疑問を口にする。

「そんなに魔法士が嫌いって……何かあったの?」

「ん? んん……そうだな」

どう説明したものか迷うような表情のノーツは、やがて曖昧な答えを口にする。

「……まあ、色々あったんだよ」

詳しく説明する気もなさそうだし、言いたくもなさそうだ。

そう感じたイストファ達は、それ以上聞く事無く……今日の探索が始まる。