軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ここぞという所でお願いします

そうして始まった探索は、この日も「極めて好調」の一言だった。

イストファとノーツによる前衛コンビは幻影人達を一切寄せ付けず、後衛のミリィやカイルへと襲い掛かってくる時にはドーマが対処するより前にイストファかノーツのどちらかが助けに入る。

まさに鉄壁としか言いようがない状況であり、それがノーツの立ち回りにある事は手持ち無沙汰になりつつあるドーマにもよく分かった。

「任せていいな!」

「うん、ノーツ!」

正面から襲ってくる幻影人をイストファに任せ、ノーツが跳ぶ。

狙いは屋根の上にいる弓持ちの幻影人で、あっという間に辿り着き斬り捨てる。

「調子ニ乗ルナヨ! モウ衛兵ヲ呼ンデイル!」

「だってよ! ……お、早速か!」

屋根の上から周囲を見回すノーツは、後方に出現した幻影衛兵達を見ると屋根の上を走り幻影衛兵達の眼前へと舞い降りる。

「全員、カカレ!」

「はっ、来いやあ!」

叫ぶノーツは幻影衛兵達に斬りかかり、それでも圧倒する。

それはドーマが助太刀を躊躇うほどの暴れっぷりであり……自然とドーマは自分のやるべきことを探し周囲を確認する。

……そう、ノーツは一見本能のままに暴れているようにみえるが、実際には周囲にこれ以上ないくらいに目を向けて状況を的確に判断している。

今も幻影衛兵相手では自分が動くのが適切と判断し飛び掛かっている。

カイルは魔法でイストファの援護をし、ミリィはノーツの手助けをしようとして杖を構えた瞬間に「無用!」と叫ばれている。

……ならば、自分が今すべきことはとドーマは考えて……。

「!?」

ほとんど反射的に構えた丸盾が、何かを弾く音が響く。

「バトルクレスト!」

そこに突然現れたようにも見える「敵」を視認したドーマは叫び、丸盾で敵を殴りつける。

「幻影暗殺者……!? いえ、これは……!」

そこに立つのは、黒装束と黒く塗った鎧を纏った……全身黒一色の幻影人。

その手に持つのは、やはり黒く塗られたシミター。暗殺者が持つには多少大振りなように見えるソレは……しかしドーマに、1人の歴史上の人物を想起させる。

「……サラディア八剣……暗剣のジュデルカ……!」

サラディア八剣の七、暗剣のジュデルカ。

暗殺者じみた動きをする彼が得意とするのは、やはり暗闇での戦闘であり、夜襲を好んでいたとも言われている。

つまり今の「昼」で彼が得意とする戦闘はできないはずだが……それでも、ただそれだけでサラディア八剣などと呼ばれるはずもない。

強い、と。ドーマは先程の一撃で充分以上に悟っていた。

受け止めた腕の僅かな痛みが伝えてくるのは、ジュデルカの攻撃の重さ。

使っているシミターは同じ曲刀としてはイストファのファルシオン程の打撃力はないはずだが……切れ味だけで見た場合、決して劣るものではない。

つまるところ、一撃とてまともに受けるわけにはいかないという事実に変わりはない。

メイスと丸盾を構えるドーマが素早く周囲を見回せば、イストファもノーツも手が全く空いていない事が見て取れる。

カイルはイストファの援護で手いっぱい……となると頼りはミリィだが、サラディア八剣の幻影人のようなレアモンスター相手に何処までミリィの呪いが通用するか。

じりじりと距離を測りながら、ドーマは冷や汗を流す。

「ド、ドーマさん……」

「ここぞという所でお願いします。まずは……私が!」

叫び、先制するべくドーマは一気に距離を詰める。

メイスを振りかざし、風切り音をたてながら振り下ろす。ファイターズクレストとバトルクレストで強化された速さをジュデルカはあっさりと見抜き躱すと、そのまま掬い上げるようにシミターを振るう。

ガイン、と。凄まじい音を立てながらドーマの丸盾がシミターを弾き、そのまましゃがんだドーマの足払いをジュデルカが跳んで回避……するに留まらず、そのまま空中で回し蹴りを繰り出してドーマの顔面を蹴り飛ばす。

「がっ……!」

そのまま踏みつけに移行しようとしたジュデルカの足をドーマが掴んで地面に叩きつけ、素早く態勢を立て直すジュデルカの蹴りが再びドーマの顔面に命中する。

「こ、この……!」

視界に星が飛びそうな一撃を二度も受けたドーマは思わずフラつきながらも立ち上がる。

頭部への攻撃が危険なのは言うまでもないが、その中でも顔面への攻撃は思った以上に有効だ。

視界を塞ぎ、相手の行動阻害の要因となる様々な追加効果も見込める。

卑怯であるという事に目を瞑れば、これほどまでに有効な攻撃も中々にないだろう。

「ドーマさん!」

「まだです!」

今にも呪法を放ちそうなミリィに叫び、ドーマはメイスを構えジュデルカと打ち合う。

ミリィの呪法は強力だが、弾かれればミリィにダイレクトに反動が来る。

更に今までの経験上、一定以上に強力な敵に対してはミリィの行動阻害系の呪いは長時間はもたない。そしてそれは、目の前のジュデルカも同じだろうという確信がドーマにはあった。

……だからこそ、ミリィの呪法を使うべき時は「ここぞ」という一瞬。

それによってドーマが会心の一撃をきめられると確信できる時だ。