軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ふんわりした要望出すんじゃねえよ

「と、いうわけで此処よ!」

「此処って……あ、こんにちはフリートさん」

「おう。今日は何か買いに来たのか?」

「その通りよ!」

辿り着いたフリート武具店でテンション高く叫ぶステラに、フリートが五月蠅そうに自分の片耳に手をあてる。

「なんだあ? 今日は随分元気だな、エルフ」

「そりゃそうよ。イストファってば、5階層のミノタウロスを倒したのよ?」

「ああ?」

「えーっと……僕だけじゃなくて皆の頑張りなんですけど」

自分だけの手柄じゃないと主張するイストファにフリートは「分かってるよ」と言うとイストファをじろじろと眺め回し始める。

「……武具の修復は済んでるって感じだな。だがミノタウロス相手ならソレじゃ不足だったはずだが」

「あ、はい。えーっと……最終的にはミリ……ミノタウロスの斧を奪ってやっつけました」

ミリィの呪術と言いかけて慌ててイストファはそう言うが、フリートは「ふーん」とだけ返す。

「ま、そうだろうな。黒鉄の武器が通用するとも思えねえ。正解だ」

「でも、いつまでもそういうのじゃ困るのよね」

「道理だな。扱いやすいのは確かだが、もう少し攻撃力が要るだろ」

「そういう事。で、ミノタウロス撃破なんて事できたお祝いに何かプレゼントしてあげようと思って」

「えっ」

驚いたようにステラを見るイストファに、ステラはウインクをしてみせる。

「で、でもステラさん。そんな……」

「今回は『色々』頑張ったでしょ?」

そう言って、フリートに聞こえないようにステラはイストファの耳元でそっと囁く。

「……アサシンの件も知ってるわ。事が事だから誰も貴方を称賛できない。でも、私は知ってる。そうした事も含めて、私は貴方の成長を祝いたいの」

「アレは……デュークさんが……」

「だとしても、よ。貴方は立ち向かって生き残った。それが全て……それともこう言おうかしら? ちゃんと受け取りなさい。師匠命令よ」

そう言われてしまうと、イストファとしては断る理由がなくなってしまう。

「はい」と、少し遠慮がちに言うイストファに笑うと、ステラはフリートに向き直る。

「というわけで、威力の高いやつがいいわね。何かある?」

「ふんわりした要望出すんじゃねえよボケ。威力だけを求めるなら魔剣や魔斧とかの類になるがよ。そういうのじゃねえんだろ?」

「当たり前でしょ、ナメてんの? 魔力無しで扱える武器を出せって言ってんのよ」

バチバチと睨み合うステラとフリートをどう止めようかとオロオロしていたイストファは、ふとステラの腰の短剣が目に入る。

イストファの持っているものとはまるで違うものを感じる短剣。

しかし先程の話からすると短剣だけでは不足のはずだが……とイストファは疑問に感じ、ステラの服の裾を軽く引っ張る。

「どしたの?」

「えっと……ステラさんは他に武器持ってるのかな……って」

「あ、なるほどね」

そう言うと、ステラは自分の短剣を軽く抜いてみせる。

キラリと光る刀身は美しく、イストファの持っている短剣とは段違いの輝きを放っている。

「コレはちょっとした魔剣の一種でね、私の魔力を通しやすく出来てるの」

「魔力を……」

「簡単に言うと剣でもあり杖でもあるってことなんだけど、魔法剣士である私にはコレ1本あれば事足りてしまうって事だけ理解してくれればいいわ」

魔法剣士。つまり魔法も剣も使えるという事だが……なるほど、それではイストファの武装の参考にはならないだろう。

「もっとも、何らかの理由で私が魔法を使えない状態であっても、コレ1本で事足りるのには変わらないんだけど」

「おいイストファ、そいつは参考にならねえぞ。鍛えすぎて別物になってる特例だからな」

「あら、分かった風に言うわね」

「見りゃ分かる」

そう言いながら、フリートは壁に武器を幾つか立てかける。

「何よ、安っぽいの持ってきたわね」

「合うか合わねえかを確かめないといけねえだろ。イストファ、持ってみろ」

「は、はい」

言われて、イストファは最初に一本の長剣を手に取る。

「長剣……ま、一般的なロングソードだな。人気の武器だし、大抵の剣術はロングソードを前提にしたものだ。短剣に比べると威力も高ぇし、慣れるのも早いだろ」

そして次に持ったのは、両刃の斧。ロングソードに比べるとズシリとした重さがあるが、ミノタウロスの斧ほどではない。

「バトルアックスってやつだな。小盾を持ったままでも扱えるし、威力も高い。問題はリーチだが……短剣使ってるなら気にするほどでもねえだろ」

その次は、ロングソードよりも大きく幅広の剣。片手で使えない事もなさそうだが、バトルアックスよりも更に重い。

「バスタードソードだ。持った感じどうだ?」

「えーっと……使えるとは思います」

「だろうな。しかし……んー……どうもしっくりこねえな」

「そうね。もうちょっと何かないの?」

「確か倉庫にブーメランブレードがあったが……いや、アレはダメだな。ダンジョンで使うようなもんじゃねえ」

なんだか気になる単語にワクワクしてしまうイストファだったが、フリートは店の中をウロウロすると壁にかかった巨大な斧を見つめる。

「いっそグレートアックス……いや、ダメだな。荷物になりすぎる」

「それだとダメなんですか?」

「ダメたあ言わねえがよ。お前のパーティで重たいもの持てるの、お前とあのドーマとかって神官戦士だけだろ? こんなデカいの持ち歩いてたら、いざって時に動けねえぞ」

「うっ……なるほど」

確かに、とイストファは思う。

こんなものを持ち歩いていたら、今までのようなスピードでは動けそうにない。

「重さってのは威力を決める要素だが、お前みたいな軽戦士の場合は扱いやすさも重視しねえと半端になるからな。んー……」

言いながらフリートが手に取ったのは、ロングソードと同じくらいか、少し短め。

けれど大分幅広の……刃側が僅かに湾曲した、いわゆる湾刀や曲刀と呼ばれるものに近い剣だった。

更にいうと、かなり分厚い……重たげな見た目をしていた。

「こいつはどうだ。威力だけなら両手剣にだって負けねえ。ちょいと違うんだが……まあ、ファルシオンタイプの剣だな」