軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

僕達の、勝ちだ

「うああああああああ!」

空へとその身を躍らせ、翼持たぬ身で天空の監守へと……パラダイスバードへと短剣を振るう。

「キイイイアアアアアア!?」

回避し、それでも羽根を僅かに斬り裂かれたパラダイスバードは風を巻き起こしてイストファを山壁へと叩きつけ……そのまま超高速でカイル達へと振り向き巨大な渦巻く風を叩きつける。

「メガン・ボルぐあっ!?」

丁度魔法を放とうとしていたカイルがその風に弾き飛ばされ、ミリィも、ドーマも同様に弾き飛ばされてしまう。

今までとはレベルの違う広範囲魔法……その正体をカイルは「メガン」級だと看破する。

何故今まで使わなかったのか。イストファに斬られ追い詰められたからなのか……それとも。

……いや。何より問題なのは、イストファが作った折角のチャンスを無駄にしたということ。

「まだだ……このくらいの魔法で……があああ!」

ダメ押しのように放たれた雷撃魔法が立ち上がろうとしたカイルを襲い、カイルは立ち上がれずに膝をつく。

視線の先では、パラダイスバードが次の魔法の準備を始めている。

溜め込んでいる魔力からみて……恐らくはメガン・サンダー。

中規模範囲に雷の雨を降らせる魔法……何としても防がねばならないが、相殺は難しい。

ならば……カイルがやるべき事は。

「クソ鳥があ……!」

そのカイルの声にパラダイスバードはピクリと反応するが、魔法の構築に集中し……だからこそ、気付かなかった。

背後からブーメランのように飛来した小盾が自分に命中する、その時まで。

「ギアッ!?」

ガヅン、と。激しい音をたててぶつかった小盾の衝撃にパラダイスバードの構築していた魔法は霧散し、驚きと怒りでパラダイスバードは岩壁に叩きつけたはずのイストファを探し……再び飛び掛かってきていたイストファを電撃魔法で大地へと叩き落とす。

「キイイアアアア!」

今度こそトドメを刺してやるとばかりに何度も電撃魔法をパラダイスバードはイストファへとぶつけていく。

許せない。パラダイスバードの中を満たしているのは、そんな感情。

空という自分のフィールドに二度も踏み込んできた「脱獄者」をパラダイスバードは魔法で打ち据え……けれど、その浅いプライドが全てを決めた。

「……この苦痛は、感染する。共有の呪い」

「キッ……!?」

突然自分を襲う痛みに、パラダイスバードは驚愕の声をあげる。

まるで全身を打ち据えられたかのような激しい痛み。

そんなものが何故、どうして。

振り向き……パラダイスバードは、見た。

自分を見据える瞳を。豪奢な杖を構え、呪いの言葉を唱えるミリィを。

「鳥の飛ぶ空を、自由なる空を、大地に縛られぬ権利を! その翼を……許さない!」

「キイイイイイイイイ!!」

自分の周囲に集まっていく何重もの紫の光を感じ、パラダイスバードは弾き飛ばそうと魔力を放出する。

だが、弾き飛ばせない。自分を拘束するかのように、収監するかのように紫の光は纏わりつく。

魔法を使い過ぎたのか、それとも……ミリィの込めている魔力が大きいのか。

紫の光は、パラダイスバードを少しずつ侵食していく。

「麻痺の呪い!」

紫の光が一気にパラダイスバードへと侵入し……その翼を不自由なものへと変えてしまう。

落ちる。

墜ちる。

堕ちる。

翼を奪われ、パラダイスバードが大地へ向けて落下する。

だが……その結末を、カイルが許さない。

「食らいやがれ……! ライト、ブレエエエエエイド!!」

輝く光の刃が放たれ、パラダイスバードを地面に落ちるその前に呑み込み霧散させる。

小さな音をたてて地面に落ち転がった魔石が倒れたイストファの手元まで転がっていき……それを見て、イストファが小さく笑う。

「……僕達の、勝ちだ」

「おう。完全勝利ってやつだな」

腕組みをしながらカイルも勝ち誇るが、その直後にミリィは糸が切れたように膝をつく。

「ふう、ふう……ふぅぅー……」

「お、おい大丈夫か? おいドーマ! って」

弾き飛ばされた時に頭でも打ったのか気絶してしまっているドーマを見て、カイルは頭を抱えてしまう。

「おい、まさか……今マトモに動けるの、俺だけか!?」

「ちょ、ちょっと待ってくれれば動けると思うから」

「イストファは寝てろ! あーっ、ったく! 見せろミリィ!」

冷や汗のようなものを流しているミリィを覗き込み、カイルは「ふむ」と呟く。

「魔力の使い過ぎか。お前もじっとしてろ。しばらく立てねえだろが、とりあえず命に別状はねえ」

通常、魔法というものは命に危険が無いように実力より上の魔法はマトモに発動できないように身体が勝手に調節してしまう。

カイルがその典型的な例で、イストファに会う頃までは大魔法の類を唱えられても魔力が足りずに「見せかけだけの魔法」になってしまっていた。

……が、どうにも呪法は違うらしい。恐らくは自分の限界を超える魔力をも絞り出せてしまうのだろう、ミリィの様子は魔力の枯渇した人間そのものだった。

かなり危険で使いどころを選ぶ。

カイルは即座にそう判断したが……ダンジョンで鍛えれば、その限界値も上がっていく。

先程パラダイスバードを倒した際の成長がまだ上手く反映されていないようだが、すぐにその影響で収まるはずだとカイルは結論付けてドーマの方へと向かう。

まずはドーマを起こす。そうしないとイストファに関してはどうしようもない。

頭を打った人間の対処法はどうだったか……そんな事を考えながら、カイルはしばらく疲れた体を引きずりながら奮闘するのだった。