作品タイトル不明
ちょっと無茶するから
それ以外は特に情報らしい情報はないから、イストファは全力で避けろくらいしか言いようがねえ。
そう言うカイルに全員が頷き、守護者の待つ場所へと進んでいく。
「……アレ、か」
「アレだな」
イストファの呟きにカイルも頷き、全員がその姿を確認する。
赤、白、そして微妙に色合いの異なる金色の羽根が2種。
合計4色の羽根を持つ人間の大人程の大きさの巨大な鳥が、出口らしき洞窟の上にとまっていた。
「……こうして見ると3色にも見えますね。そもそも光と電雷って同じじゃないんですか?」
「俺に言うんじゃねえ。だが光魔法と電雷魔法は確実に別物だからな。しかも電撃と雷撃でも違う。イストファは分かってるな? 俺が普段使ってんだからよ」
「う、うん」
ドーマからイストファへと視線を移動させたカイルに、イストファは「う、うん」と頷く。
確か電撃魔法はカイルでいえばサンダー。あまり使った事は無いが、相手を痺れされたり黒焦げにしたりする魔法だと聞いている。
そして雷撃魔法は電撃魔法のような効果はないが、文字通り光の速さで飛んでくるハンマーのようなものだ。
「……でも、違いは分かっても見分けはつかないよ?」
「ついてたまるか。どっちも避けりゃいいんだ」
「えっと……それよりあの鳥、ずっとボク達を見てますけど」
ミリィの言う通り、パラダイスバードは動かないまま……しかし、ずっとイストファ達に視線を向けている。
ミリィはそれが気になって仕方ないのだろうが、カイルはフンと鼻を鳴らす。
「問題ねえよ。守護者は動かない。こっちが侵略の動きを見せなきゃな」
「そういうもの、ですか」
「そういうものだ。よし、じゃあ全員準備はいいな?」
「僕がまず飛び出して」
「ボクが呪術で相手を縛るんですよね」
「それだ。3カウントでいくぞ! 3、2、1……いけ!」
カイルの声を合図に、イストファが短剣を構え飛び出して。パラダイスバードも迎え撃つように舞い上がる。
そうなれば、当然パラダイスバードにイストファの短剣など届きはしないが……続けて飛び出したミリィの呪法は別だ。
「その翼を許さない……! 麻痺の呪い!」
叫ぶと同時に紫色の輝きがパラダイスバードを包み……しかし、パラダイスバードはアッサリと振り払うかのように消し去ってしまう。
バキンッ、と音が響き……ミリィは弾かれたようによろめく。
「ミリィ!?」
「だ、大丈夫……呪いを弾かれただけです! あいつ、魔力がかなり高いです!」
「ならこいつだ! ファイアボール!」
カイルの杖から大き目の火球が放たれるが、それもパラダイスバードは回避すると音をたてて帯電を始める。
「やべっ……!」
一瞬の後に放たれた落雷の如き雷撃魔法は大地を叩き、しかし散らばったイストファ達はなんとか回避しきる。
「うわあ……これ、私は今回役に立ちませんね……」
少し離れた場所でいざという時の回復役として待機していたドーマは、恐ろしげに呟く。
神官戦士として重い鎧を着こんでいる今では、あの魔法は避けられない。
盾を構えたところで防げるわけでもなく、イストファ以上にどうしようもない状況だ。
空を飛ぶ手段を持たぬ者にとって、空というフィールドを駆け回られる事はそれ程までに不利をもたらし……ある意味で、このパラダイスバードこそが第4階層「天空の牢獄」の監守ともいえた。
「サンダー!」
「キイイイイ!」
カイルの放つ雷撃魔法は流石に避けられないのかパラダイスバードは同様に雷撃魔法で相殺するが、相殺直後に放った火炎放射のような魔法がカイルを襲い……イストファがタックルするように飛びついてカイルを効果範囲外へと連れていく。
地面に転がりながらもイストファ達は立ち上がり、今度は氷塊が飛んでくるその場所から慌てて離れていく。
「カイル! どうにかならないの!?」
「うーるせえ、やってんだよ! メガン級でどうにかなるならいいが、相殺されでもしたらマジで手がねえ! お前こそ、気合で跳んだら意外とイケたりしねえのか!」
「無茶だよ!」
「だろうな! うおおおお!?」
電撃魔法が一瞬前までカイルが居た場所を抉り、カイルはワタワタと走り回りながらボルトの魔法を放つ……が、それも相殺されてしまう。
「とにかくアイツ、抜群に魔法が上手ぇ! どうにかしねえと……!」
叫びながら、カイルは「もう1人の仲間」の事を思い浮かべる。
放たれる風魔法から「ひゃー!」と声をあげて逃げ惑っているミリィだが、正直に言えば今回の勝利の鍵はミリィだ。
あの麻痺の呪いさえ極まれば、パラダイスバードを地上に引きずり落とせる。
……だが、そう上手くはいかない。妨害のように放たれるパラダイスバードの魔法はミリィに呪法発動の為の集中をさせてくれないのだ。
「くそっ、どうする、どうする……!」
「僕がどうにかする!」
愚痴るカイルに答えるかのように、イストファが叫ぶ。
「は!? どうにかって、お前」
「ちょっと無茶するから……後はよろしく!」
そう叫ぶと、イストファはパラダイスバードの守る出口の存在する山壁へ向けて走り出す。
「キイイイイイ!」
無論、それを許すパラダイスバードではない。
怒涛の魔法がイストファ1人に向けて放たれ……カイル達は、すぐにその意味を悟る。
声を掛け合う必要すらなく、カイルとミリィは自分に出来る最大の魔法の構築を始め……ドーマはいつでもイストファを回収できるように走る態勢に入る。
そして……山壁へと辿り着いたイストファはその身体能力で壁を駆け上り……そして、跳ぶ。