軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

見間違いだったのかな

「ミ、ミリィ!?」

「魔力を一気に使い過ぎた影響だな、こりゃ。使い慣れてない頃にはよくある事だが……」

「だが……?」

「とりあえずイストファ、そいつドーマに渡しとけ。さっさと此処抜けないと俺が倒れる」

「あ、うん」

マントを着込んだって、顔面に吹き付ける吹雪を防げるわけではない。

寒さも体を蝕んでいくし、此処に留まって良いことは1つもない。

イストファは壊れ物を扱うようにドーマにミリィを渡すが……ドーマの苦笑するような表情に疑問符を浮かべる。

「そりゃこんな格好してますけどミリィは一応……いえ、いいんですけどね」

言いながらドーマはミリィを担ぎ、再びイストファ達は進んでいく。

幸いにも再びモンスターが登場する事はなく猛吹雪地帯を抜け、今度は雪の積もっていない晴れた場所へと辿り着く。

気温が低いのは変わらないが、吹雪いていないというだけで大分楽になるのを感じる。

「はーっ……死ぬかと思ったぜ」

「そうだね。ちょっと辛かったかも」

「あまり長居するような場所ではないですね。早く通り抜けたいですが」

寝かせたミリィの様子を見ながら、ドーマも同意する。

この4階層は、あまりにもモンスター以外の「死」が近すぎる。

崖の近くの山道や吊り橋もそうだが、崖から離れた山の真ん中を進む時も積雪や吹雪が行く手を阻む。

「結局ドラゴンだかなんだかってのも居ねえしな」

「見間違いだったのかな?」

「有り得ますね。ワイバーンもどきは居たみたいですし」

「もどき?」

「ほら、イストファが踏んだアレですよ」

ドーマが言っているのはバイトワイバーンのことだ。

あの空飛ぶワニのようなモンスターはワイバーンと名がついてはいるが、「ワイバーンっぽい」というだけであってワイバーンではなかったりする。

そもそもワイバーンが何かをザックリと語れと言われたなら大体の人間は空飛ぶトカゲと答えるのだが……それはさておき。

「う……っ」

「あ、目が覚めましたね」

「大丈夫? ミリィ」

「ミリィ……? あ、そっか」

誰を呼んでいるのかと一瞬考えてしまったミリィは、頭を振りながら起き上がる。

「すみません、迷惑をかけたみたいで……」

「大丈夫です。それより体調の方はいかがですか? カイルは魔力の使い過ぎって言ってましたが」

「えっと……はい。ボクも正直信じられないんですが、イストファさんにあんまり魔力の通りが良すぎて、つい流し込み過ぎたみたいで……」

「なるほど」

「あー」

ミリィの言葉にドーマとカイルが納得したように頷くが、イストファには何のことか分からない。

「え、え? どういうこと?」

「どうもこうもねえよ。イストファ、お前魔力ゼロだろ? だからだろうな、魔力を流しやすい体質なんだってことだろ。たぶんな」

「なるほど。イストファ自体が魔力媒体みたいなものですね」

「外に出せない媒体とか、意味ねえけどな」

「え……ごめん。意味が分からないんだけど」

首を傾げるイストファに、カイルは肩を竦めてみせる。

「前にも言ったろ? お前は魔法にかかりやすい体質なんだよ」

「その結果、ミリィの……あの視覚共有とかいう魔法に『かかりすぎた』んでしょうね」

「ふうん」

ようやく納得したようにイストファは頷くが、カイルは座ったまま膝を叩く。

「ま、それについてはいい。難所は抜けたんだ……この後は楽に行けると考えたいもんだな」

「だね。ミリィも起きたし、早速進む?」

「そうすっか」

「ですね」

「えっと……はい」

まだミリィと呼ばれているのに慣れない様子のミリィだが、慣れなければどうしようもない。

小さく溜息をつきながらも隊列に加わり、そうしてイストファ達は進んでいく。

幸いにもあの猛吹雪のような難所は少なく、しかし崖に張り付いて進まなければならないような場所は存在し……しかし、ミリィの呪法でアッサリと鳥型モンスター達は崖下へと落下していく。

そうして4人は本人達が思っていたよりもずっと速く進めていく。

それほどまでに、この4階層と呪法という力は相性が良かったのだ。

「凄いよ、ミリィ!」

「ああ、かなりのもんだな」

「頼りになりますね」

「そ、そうですか? ふふっ」

照れたような仕草をするミリィだが、控えめな仕草は女の子そのもので……ドーマはちょっと微妙な顔をしながらイストファに囁く。

「……ホントに男なんですよね?」

「あ、うん。聞いた限りでは」

「そうですか……」

「何か気になるの?」

「そういうわけではないんですが……」

なんとも言えない顔をするドーマだったが、それ以上は何も言わない。

「つーか、そんな事はどうでもいいんだ。問題は、ここまであまり消耗もなく進めたってことだな」

「いい事なんじゃないの?」

「普通はな。ただ、地図によると……この先は4階層の守護者がいる」

守護者。その言葉に全員の表情が引き締まる。

どの階層の守護者も、その名に足る相手だったが……この階層の守護者についての話は、まだカイルから聞いていなかったのだ。

「ギルドから買った情報によれば、この階層の守護者はパラダイスバード。火、風、光、電雷の4種の属性の魔法を使う中距離殲滅型の鳥……だそうだ」