軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第80話 「これは、エアハルトさんの設計なんですね」

立体映像を確認したところ、どうやらこの農作業ロボには自動で動く機能がいくつかあるらしかった。

中心付近には、核になる宝石が複数ある。

この宝石たちに、どんな魔法が込められているのかまではわからない。

だが、『故障品再生』スキルのおかげで何がどう動くのかはわかる。

「耕耘と、種蒔きと、水やりと、雑草の除去と、収穫ができるんですね。変形する部分は機械的で、この部品がいくつか壊れています。多分、壊れたときに何か衝撃を受けたんでしょうね。宝石にも傷が入っていて、魔法を発動できなくなっています」

箱の上半分は空洞で、種を入れたり雑草を入れたりできる籠がある。

「そうなのか。手紙には、畑の外れに魔物が出たときに壊れた、と書いてあったから、攻撃の余波を受けたのかもしれんな」

セリスの言うことに納得したカイは、立体映像を見ながらうなずいた。

立体映像を隅々まで確認して、カイは思わず頬を緩めた。

「これは、エアハルトさんの設計なんですね」

中にある金属の部品に、漢字で『春人』とサインが入っていた。

少し歪なので、本人が入れたのではなく、誰かが書き写したのだと思われる。

「ああ、そうだ。これ自体は五十年ほど前に作ったはずだ。やはり外で農作業に使うからか、壊れやすくてな。本当なら百年は使いたいところだ」

セリスはやれやれとばかりに肩をすくめたが、五十年も使えれば充分長持ちである。

百年使える道具は、エルフ仕様なのかもしれない。

「あ、でもこれは……」

動く機構が面白くて思わず使い方を確認していると、映像内に注釈のようなものが見えた。

文字で書かれているのではなく、使い方がわかる感じだ。

「どうした?」

「この魔道具は、エルフ専用ですね。ほかの種族では使えません」

カイは立体映像越しにセリスを見た。

感心したようにうなずいたセリスは、口角をあげた。

「それもわかるのか。実は、エアハルトはいくつか魔道具を作ったのだがな。どれもエルフにしか使えない物だった。いつだか魔道具職人に調べてもらったが、魔力が通らないと言っていたな」

「エアハルトさんは、魔道具を作るスキルをお持ちだったんですか?」

魔道具は、専門のスキルがないと作れないと聞いたことがある。

しかし、セリスは首を横に振った。

「いいや。あやつは、壊れた魔道具をどこかから手に入れて、すべて分解して仕組みを研究したんだ。だから、スキルなしで作っておった」

「えっ?!魔道具を手作りで?!本体部分はいいとして、核の宝石に魔法を込めるのってスキルじゃないと……」

少なくとも、カイにはできると思えない。

アウレリアのゴーレム部位を見せてもらったときにも、核が魔法を込めた宝石だということはわかったが、仕組みはまったくわからなかった。

「普通はそうだ。我もよくわからなんだが、あやつは『イメージでごり押したらできた』とか何とか言っておった」

「ごり押しですか。うーん、それでもできる気がしませんよ」

映像を拡大して見たが、修理の仕方ならともかく作り方などわかるはずもない。

「かなり魔力の効率は悪かったらしいが、当時の魔道具職人に『その方法は誰にも言わないでくれ』と頼み込まれていたぞ。だから、慣れれば誰でもできるのかもしれん。まあ、スキルなどそういうものだがな」

「まあ、スキルでできることって、時間をかけたらできるものもありますけど……。魔道具をスキルなしで作るなんて、やっぱり発明王はすごいですね」

カイは思わず息を吐いた。

「ああ、確かにすごい執念だった。結局、色々な魔道具を十ほど解体して、随分と散財していたほどだ」

「根っからの作り手だったんでしょうね」

クリエイター 気質(かたぎ) というか、オタクというか。

エアハルトは、とことん突き詰めるタイプだったのだろう。

それで成し遂げるのだから、実力に結果もついてくるタイプの変態だ。

「そうだな。だから、今でもあちこちにハルトの作った仕組みが生きている。旅をする中でどんどん見つけるものだから、不思議な気分だったよ」

「エアハルトさんが作ったものが、大陸中に広がったんですね」

発明王の作として有名なところだと、シリンダー式のドアの鍵、時計、からくり箱あたりだろうか。

懐中時計のような小さな時計は一部の貴族や王族しか手にできないほどの高級品だが、ツーレツト町のような大きめの町なら機械式の大きな時計が広場などにある。

からくり箱は、隣の国の特産品だ。

そもそも、歯車も発明王が発案し、瞬く間に広がったと聞いたことがある。

多分、カイが知らないだけで、エアハルトが考案したものは多いのだろう。

今回受け取った魔道具は、ロボと魔道具の合わせ技だ。

現状はただの箱に見えるが、動けば中の車輪が出てきたり、鍬が出てきたり、種まき用の筒が出たり、収穫用の鎌や鋏が出たりする。

タンクを上に乗せれば、種まきと同じ要領で水を撒ける。

変身、とまではいかないが、多少変形するのだ。

エアハルトは、こんなところで変形ロボの夢を一部叶えたらしい。

カイは、薪と鉄くずを材料に使って本体部分を補修した。

欠けや割れを直したので、からくり部分は動くはずだ。

エアハルトのこだわりなのか、設計が比較的シンプルで部品数も抑えられていたので、魔道具にしては魔力消費量がまあまあ低かった。

「あの、この宝石に魔法を込めるのはどなたがなさっているんですか?これも新しいものですよね」

「それはな、あやつがパパっと作った道具があるのだ。宝石を入れたら、勝手に魔法が込められる。エルフが稼働させないと動かないが、非常に便利だぞ」

それを聞いて、カイは思わず目を瞬いた。

「パパっと……。自動で魔道具の核を作る道具ってことですか?それは魔道具では」

「いや、仕組みはよくわからないのだが、宝石は使わないので魔道具ではないな。なんにせよ、あやつの魔道具はエルフにしか使えないから、エルフの村以外では役に立たん。それに、あの道具が壊れたらどうしようもなくなる」

エルフにしか使えない道具なら、一般には出回らない。

少なくとも、カイは聞いたことがなかった。

「エアハルトさんは、きっと後のことも考えて作られたんでしょうね」

「皆は絶賛しておったな。だが我は、あやつが無精しただけだと思う。毎度依頼されて魔法を込めるのは面倒だと言っておったのだ」

肩をすくめたセリスは、にやりと笑った。

「あはは。まあ、発明がしたいなら、同じものを何度も作るのは面倒でしょうね。だからって、自動化する道具を作るのも、すごい情熱ですけど」

わからないでもないが、本当にすごい熱量だ。

片手間に魔法を込める方が簡単な可能性まである。

「仕方あるまいて。あやつにしか作れんかったからな。そういえば、どこかの国の魔法研究員と親しくなってな、面白い発見をしておった。種族ごとに、魔力の質が少々違うらしい。特にエルフは独特で、他の種族と似たところがないと発表されていたぞ」

「それは聞いたことがあります。ヒト族と獣人族と魔人族も、ちょっとずつ違うんですよね」

両親の種族がバラバラの場合は、どちらかの特徴を持って生まれるらしい。

これは、隔世遺伝する場合もあるようだ。

「そうだ。普通は、見た目の種族と魔力の種族は同じになる。だが、ハルトは見た目はヒト族なのに、魔力はエルフだった。あやつが魔道具を作ったときに、他の種族では使えなくてな。調べた結果、ハルトは魔力の質だけがエルフだとわかったのだ」

「それで、エルフ専用の魔道具になったんですね」

不思議だが、それこそスキルなしで魔道具を作ったからかもしれない。