軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

040_勉強できない病

ヒースクリフにアドバイスされたとおり、翌日からアンナマリーにも勉強を教えてもらうことにした。

主な場所は、休み時間の教室だ。

「ですから、ここは魔法第一理論にしたがって、仮説を立てていくと簡単に答えにたどり着くようになっていますわ」

最初はアンナマリーとリサだけだったのだけれど、デイジーとローズが加わって、女子勉強会にランクアップしていた。

「わかりやすい! 解けた」

デイジーがアンナマリーのアドバイスで正解にたどり着く。

「リサさんは、どうですか?」

難しい顔をしたままのリサに、ローズが優しく尋ねてきた。

「うっ……かすむ、どころか、幻覚で分身してるみたいな……ごめんなさい」

何か悪化している!?

お友達とテスト勉強という幸せイベントなのに、理解ができなくて辛い、申し訳ない……。

一体、私どうしてしちゃったんだろう?

前世の勉強は一年先まで病室で難なくできていたから、そこまで勉強が苦手じゃないはず。

もしかして、これもヒロインだからだったり……しないよね?

ううん、何でもヒロインのせいにするのはよくない。

「よぅ! 落第しないようにお互い頑張ろうぜ」

気合を入れ直そうとしたところで、ふらっとキアランがやってくる。

リサの教科書をのぞき込んだ。

「んだよ、まだ、そんなところで詰まってんのかー? 俺はできたぞ。第一理論を使えば楽勝」

「えっ? ええっ!?」

キアランが口にすると妙に頭に響いてくる。

もう一度問題を読んだら、すぐに解き方がわかった。

なぜ今まで分からなかったのだろうと疑問に思うぐらいだ。

思わず、キアランの手をガシッとつかむ。

「わかった! わかったよ! これって――――」

「お、おい?」

いきなり手を握られて焦るキアランを横目に、頭の中で叫んだ。

異性に勉強を教えてもらうと上手くいくなんて生やさしいものじゃない!

今まで勉強ができなかったのは、ヒロインズスキルの弊害!

“攻略対象に教えてもらわないと勉強できない病!<ヒーローティーチミーシック>”だ。

※※※

勉強に関するリサ特有の障害が判明したので、翌日から毎回違う男性を捕まえては、ちょくちょく勉強を教えてもらうことにした。

同じ人に頼まないのは、変な噂が立たないようにするためだ。

テスト勉強で二人の距離が近づくなんて、鉄板中の鉄板。

その点に気をつけたまではよかったと思うんだけど――――。

テスト前日の昼休みも、リサは空き教室で勉強をしていた。

「ここまではわかる? だから、次の問いは――――」

左横に座るステファンが優しく説明して、答えを促してくる。

「二と二分の一ですか?」

「うん、大正解」

答えが合っていると自分の事のように喜んでくれるステファンは、やる気と集中力をくれる。

「次からはヒントはなしだ、甘えないでね」

ステファンのさらに横ではセオが座っていて、教え方が優しくなりすぎないように引き締める。

「ほら、やればできる。やらないだけだ」

チクチク責めてくるけれど、一応、セオも褒めてはくれる。

「……ふむ、筋はいいが、こんな問題できて当たり前だ」

「わ、わかってます」

前からリサを見張っていたヴィニシスは、かなりのスパルタだ。

浮かれていたリサを叱咤する。

「そうだな……応用して、こんな問題ならどうだ?」

ヴィニシスが、ささっと応用問題を書き出してリサに渡す。

彼の頭の回転の良さは抜群で、テスト対策としてはとても助かる。

「うっ、難しい……ちょ、ちょっと待って」

「さすがヴィニシスの問題、俺も一緒に解いてみるか」

右横に座るカルツは、一緒に勉強してくれるので何となく安心する。

「俺と最下位争いだと思ってたのに……なんかあんた覚えが早くなってないか?」

カルツの横でキアランも、負けじと勉強している。

時々出るツン褒めみたいなのが、わりと嬉しい。

まとめると――――リサは教室で五人の男性に囲まれて勉強していた。

こんな状況だと普通なら集中できないと思われるけれど、不思議と学んだことが次々頭に入ってくる。

きっと、ヒロインズスキルのおかげだ。

というか……贅沢ですみません!

そして、浮気じゃないんです。

これは同じ空間で生きるためであり、私はヒースクリフ一筋です。

頭の中で弁解しつつ、勉強を手伝ってくれる五人を見る。

でも……正直に言うと、ごめんなさい、わりと幸せです!

前世だとベッドの上で一人勉強がほとんどだったので、皆との勉強が楽しくてしかたない。

「リサ!」

ハーレムの幸せに浸っているとカツッと靴音を立てて、アンナマリーが来る。

後ろにはデイジーとローズもいた。

「……!」

思わずその様子にハッとする。

「しまった、悪役令嬢化しちゃうとか! ステファンを奪うなんて泥棒猫!? いい男達を侍らせて、いいご身分ねとか」

ステファンだけは断っておくべきだった。

もしくはアンナマリーも一緒に誘うべきだった。

「何言っているの貴女……この調子で頑張りなさい」

後悔していると、アンナマリーが怪訝そうな顔で労いの言葉をかけてくれた。

「落第とかハラハラさせないでよ、リサ!」

「よかったです、リサさん。心配してたんですよ」

「……みんな」

デイジーとローズも応援してくれている。

思わず感動してうるっとしてきてしまった。

「そうだ! その、アンナマリー……お兄様には、これ内緒にしてね?」

「わかりましたけど……」

特に含みがある様子もなく、アンナマリーが頷く。

そして、深いため息をついた。

「最近話していないから、その機会もありませんわ」

「そうなの?」

やはりヒースクリフとアンナマリーは兄妹喧嘩しているのだろうか。

「わたくしは、最近ますますお兄様がわからない……」

目を伏せて言うアンナマリーの様子に、ますます心配になる。

「会員制カジノに出入りしているところを、使用人が見たんだって」

あきれ顔でデイジーが付け加えた。

「放蕩貴族と揶揄されることが多かったのですが、カジノに出入りすることなど、今まではありませんでした」

アンナマリーはとても辛そうだ。

『ちょっと夜遊び。あとは、秘密』

リサはこの間部屋に突然ヒースクリフが来た時のことを思い出した。

言葉どおりに受けると、問題行動だけど……。

「お考えがあってのことかもしれませんよ」

ローズが、リサの思っていたことを口にしてくれる。

「うん! ヒースクリフはそんな秘密っぽいところが魅力、じゃなくて――――

フォローしようとして、思わず自分の気持ちを言ってしまい、慌てて訂正する。

「謎の行動はどうあれ、妹を失望させる人じゃないと思うよ!」

「でしょうか……」

リサとローズのフォローにも、アンナマリーは納得していない様子だった。

こうなると、彼女の学力テストが心配になってくる。

ヒースクリフのことが心配になって、魔力テストのように調子を崩しかねない。

「そうだ!」

さっき考えたように、アンナマリーも一緒に勉強すればいい。

しかも教えるのには格好の相手がいる。

「ステファン王子! アンナマリーがテストに集中できないって」

「ちょ、ちょっとリサ!」

アンナマリーは焦るけれど、ステファンがすぐに反応してくれる。

「それはよくない! アンナマリーも僕と一緒に勉強をしよう」

「ごっ、ご心配には及びませんわ」

照れてツンとするも、ステファンはそれを真に受けたりしない。

「貴方の心配は、僕の心配だよ」

「っ……はい」

ステファンに手を握られてそう言われては、アンナマリーは頬を染めて頷くしかなかった。

「じゃあ、放課後は、皆で図書室に集合ー!」

立ち上がって宣言すると、皆が頷いて了承してくれる。

学園生活、この中から誰一人として欠けさせないから!

よーし、みんなで勉強するぞー!

気合を入れたところで、ちょうど昼休みを終えるチャイムが辺りに響いた。