軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

035_結果発表

授業終了のチャイムが辺りに鳴り響く。

「ふぅ、終わりましたわね」

アンナマリーが額の汗を拭う。

何度か実戦を経験していたとはいえ、長いこと気を張り続けたせいで、どっと疲れた。

おかげで、目的の闇角ウサギの角は袋いっぱいになっていたけれど。

「皆お疲れ様、優勝できているといいね」

「できるだけのことはしたはずだよ」

「あれだけ倒せば、さすがに大丈夫だろ」

この中で一番実戦慣れしているはずのステファンとセオも、さすがに今回は剣を振り続けて、腕が重そうだ。

一方、キアランは涼しい顔をしている。

補助が苦手な彼は、後半から闇角ウサギを拳で殴って倒すなんて離れ業をやってのけていたのに、どうやら体力はあるほうらしい。

「しかし、疲れましたわね」

「ちょっとみんな張り切りすぎ!」

ローズとデイジーは、さすがにバテ気味だ。

「兄との稽古に比べれば、たいしたことはない」

「さすがグンラム騎士隊長だ。しかし、闇角ウサギを武器で攻撃すると本当にドロップ率が上がったのか、あとでデータを取って検証するべきか。他の魔物でも統計を取ってみるべきだろう。まずは――――」

カルツはさすがに鍛え方が違うみたいだ。

そして、ヴィニシスは未だに武器攻撃でドロップし始めたのがよっぽど気になるらしい。

「よし、全チームいるな? もしチームでこの場にいない者がいたら名乗り出るように」

魔物スポットを出て、最初に集合した広場に行くと教師が待っていた。

どうやらアンナマリー達が最後みたいだ。

道中ほとんど他のチームに出くわさなかったので、一番奥まで行って闇角ウサギを倒していたからだろう。

「代表者は回収した角、こいつをもってこい」

教師は生徒が全員帰還したのを確認すると、見本として角を一本、全員から見えるように持ち上げる。

「アンナマリー、行ってきてくれる?」

「わたくしですか? 構いませんが……今回はリサのほうが相応しくありませんこと?」

メンバーを集めたり、作戦の指示を出したりしていたからそう思ったのだろう。

リサとしては、これ以上目立つのはできれば避けたいし、代表みたいなものは彼女のほうが似合う。

「代表はアンナマリーがいいな」

「リサがそう言われるのでしたら」

皆からも異論は出なかったので、リサはアンナマリーに角を入れた袋を手渡す。

「しばらく、その場で待機!」

各チームが教師に袋を手渡す。

しかし、実際のところ角を持っていかないチームのほうが多い。

武器で倒すことにたどり着かず、ドロップしなかったのだろう。

「優勝は二十五本、断トツでアンナマリーのチーム!」

目立つアンナマリーの効果もあって周囲から「おぉ」と声が上がる。

けれど、優勝は予想できた。

外から見ただけで、明らかにうちのチームの袋だけ角がたくさん入っているのが丸わかりだったからだ。

「代表として、アンナマリーへ杖を進呈する」

「はい!」

呼ばれたアンナマリーは再び前に進み出ると、教師から恭しく杖を受け取った。

リサが率先して拍手をすると、生徒達に広がっていく。

こうやって彼女の好感度を上げていく作戦だ。

チームの面々もどこか得意げだし、杖もアンナマリーに渡せたし、望んだとおりの結果になって大満足だった。

「やったわ!」

「アンナマリーさん、杖をよく見せて」

杖を掲げて見せるアンナマリーにデイジーとローズが声をかける。

「そうそう、せっかくだしポーズ取ってみてよ」

「こらっ、あとにしなさい」

リサもそれに加わって、アンナマリーを茶化す。

「アンナマリーには、その杖が似合うね」

「えっ!? ステファン……その……ありがとうございます」

真っ赤になるアンナマリーをいつものように温かい目で見守る。

「……?」

不意にその時、自分に視線が向けられた気がして、リサはパッと後ろを向いた。

「……見つけた」

小声で呟く。

木の上に隠れて、アンナマリーを見ているヒースクリフの姿がある。

見てたんだ、誇らしいよね。

微笑むと、それ以上は気づかないふりをして、アンナマリーを出迎えようとしたのだけれど、彼女を見ていたのはヒースクリフともう一人いた。

「きゃあっ!」

「えっ!? な、なに?」

最初にいきなり影が現れ、アンナマリーの悲鳴が聞こえたかと思うと、次にリサの身体がいきなりばっと浮いた。

「食べ頃に育ったかと思ってきてみたが、こっちの女も捨てがたい」

リサとアンナマリーが、何者かによって左右に抱えられていた。

しかもどうなっているのか、三人とも高い位置で宙に浮いている。

「馬鹿な……悪魔…………っ、なっ……存在して……」

驚いてこちらを見た教師が呟く。

えっ……悪魔!?

学園生活が始まったばかりなのに、中盤のイベントが、どうして……?

リサとアンナマリーを捕まえたのは、まるで人のようだけれど、人ではなかった。

翼があり、角があり、鋭い牙がある。

“マジラバ”の途中で突然現れる、エリオットとかいう魔王の右腕に違いない。

出番早いでしょう! 何、間違って出てきてるの?

「はなしなさいっ、このっ!」

アンナマリーの怒声でハッとする。

今は考え込んでいる場合ではない。リサも手足をばたつかせる。

「ひっ……」

二人が暴れても、気にした様子はない。

それどころかエリオットの顔がぬっとリサの手首に近づいてきた。

「この香りを早く食らいたくてな、極上の魔力の流れを感じる。ククククッ」

悦に入った表情でエリオットが笑う。

香りとは、稀な光属性ということを言っているのだろうか?

そんな設定はないはずだけれど……。

「思い出した、リサ! そのブレスレットを捨てろ! 魔力を悪魔が好む香りに変換する魔道具だ」

ヴィニシスの声が響く。

「ええっ!? 大事なプレゼントだから嫌です!」

「なっ……!」

リサは即答した。たとえヴィニシスの言っていることが本当でもヒースクリフからもらった物を捨てられるわけがない。

「アンナマリーをはなせっ!」

突然の悪魔の出現に、誰もが動けなくなっている中、ヒースクリフが共に広場に飛び出し、エリオットに叫ぶ。

そうだ、アンナマリーが危ない!

「光の矢<ライトアロー>」

アンナマリーを抱いているほうのエリオットの手に、魔法の照準を合わせて撃つ。

いつものように弓を引くポーズは取れないので、頭の中で強くイメージする。

「魔法など我には……ギッ!」

光魔法の強い衝撃に痙攣し、エリオットがアンナマリーを放した。

その際、彼女の手から杖が跳ね上がり、くるくる回って偶然リサの手の中に舞い込む。

「きゃぁぁ……」

悲鳴を上げてアンナマリーが地面に向かって落下していた。

「浮遊<フライ>」

ハッとしたローズがすぐに対象を浮かせる魔法を唱える。

落下速度が緩やかになり、素早くステファンがキャッチした。

「なっ……! ひ、光だと……!? お前は、存在してはならんっ」

リサが光属性の魔法を使えることを、エリオットは知らなかったらしい。

そのおかげで油断してアンナマリーを落としてくれたわけだけれど……リサとしては最悪の状況だった。

「きゃああっ!」

エリオットがリサを掴んでいる腕に力を込めてきて、拘束が強くなる。

同時にアンナマリーをはなした方の手に毒々しい黒い何かが集まっていく。

闇の力でリサに攻撃しようとしているに違いない。

レベル上げもしてないのに、中ボスなんて無理……!

下を見れば、ステファン、セオ、ヴィニシス、カルツ、キアランがそれぞれ悪魔の真下に移動していた。

リサを助けようとしているのだ。

違った意味で、この状況はまずいかも……。

前世のゲームの中では、エリオットが襲ってきた際、攻略対象に助けを求め、リサと二人で力を合わせて撃退する。

でも、それはルートがほぼ確定してしまうイベントだ。

つまり、助けられたら……。

せっかく、ヒースクリフに告白してキスされたのに、いきなりの大ピンチだった。