軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

034_勝負開始!

いつになく騒がしい昼休みを終えて、席に集まった皆で移動する。

課外授業は、事前に学園のすぐ近くの森で行うと連絡があった。

「課外授業の一回目を始める。皆来ているな? 遅れた者は失格になるから、」

服装は教師共通の灰色のマントを身についているけど、魔法使いというより、騎士のような大柄の教師が学園から聞こえてくるチャイムと同時に授業開始を告げる。

前世でいけば、体育教師みたいだ。

「チームはできているな。これから学園が訓練用に管理する魔物スポットの森で、実戦も踏まえた勝負をしてもらう」

教師は集まった生徒をさっと見渡すと、有無をいわさずにチーム編成を終わらせてしまった。

「最初の授業なのに勝負!?」

「気合入れていかないとね」

隣にいるアンナマリーの呟きにリサも反応する。

「勝負! いいじゃん、一番になってやる!」

「実力者が集まっているけれど、ご令嬢達もいるし、安全を優先して行こう」

ステファンが釘を刺すと、キアランが少しむっとした顔をする。

「女性陣の護衛はオレに任せてくれればいい」

「頼りにしているよ、セオ」

考えてみると、我ながら良いバランスのチームだ。

前衛の水のステファンと地のカルツ。

後衛火力の火のキアランとアンナマリー。

補助も攻撃も使える光のリサと水のヴィニシス。

それと、機動力のある中衛の風のセオ。

ローズとデイジーも前衛後衛どちらも立ち回れる風と地属性で、実力もそれなりにある。

他のチームに申し訳なくなるレベルだ。

「放課後、順に魔物スポットを経験したはずだが、お前達はそれから何が重要だと感じとった?」

教師がそこで説明を止める。

どうやら生徒に答えを求めているみたいだ。

「度胸だろ。魔法が使えても度胸がないと、使い物になんねぇし」

「冷静さですわ。冷静さがないと、戦闘では魔法を使うこともままなりません」

キアランとアンナマリーが立て続けるに声を上げる。

二人の答えは似たようなものだった。さすが同じ火属性同士だ。

「知識だ。正確な知識があって、効率の良い行動ができる」

「体力がなければ、何もできません。身体を鍛えてこそです」

ヴィニシスとカルツも自分なりの答えを口にする。

そこで満足したように教師がうんうんと頷いた。

「どれも重要だ。だが、俺の答えは違う。実戦で必要なのは“速度”だ。魔物に苦しんでいる人々のために、素早く駆けつけて討伐すること」

「リサの浄化の光<プリズムライト>は別ですけど……」

ローズが耳打ちしてきたので、苦笑いで返した。

あれは唱えれば魔物スポットが消えるので討伐するには最速だけれど、希少な光属性の者しか使えない特別な魔法。

今だとリサしか使えない、いわゆるチートというやつだ。

「よって、今回の課外授業は各チームは闇角ウサギのレアドロップである角を集めることを課題とする。とにかく、数をこなせ。最も集めたチームを優勝とする」

教師の言葉に戸惑う。

「前はあんなに沢山倒したのに、落とさなかったけれど……」

「百分の一ほどの確率だ。角は加工すれば魔道具の杖となる」

前世のゲームではドロップアイテムについての掘り下げられた情報はなかったので、リサも知らない。

さすが知識では誰にも引けをとらないヴィニシスだ。

「杖!? いいな、早く持ちたーい」

「一年生が持つのは、確か禁止されていたはずだよ」

デイジーが目を輝かせるも、次のセオの言葉で肩を落とす。

すると、教師がマントの中から何を取り出した。

「いい反応だ! 今回優勝チームには、一本の杖が贈られる、魔法機関の試作品だが、いい杖だ」

皆に掲げてみせる。

それは小ぶりの綺麗な杖だった。

長さは手を広げて二つ分ぐらいの棒状に削り取った木製で、先端と側面に綺麗な宝石を三つはめ込んである。

生徒達から羨望の声が一斉に上がった。

「そっ、それは、持つ権利もということですの!?」

アンナマリーが珍しく興奮しながら教師に尋ねる。

杖は希少な宝石や魔物のドロップ品を使うので、高価だし、入手するのはかなり困難だ。一年目でいきなりそれを所持できるのは、ステータスに違いない。

「当然である。わかったのなら、競って闇角ウサギを狩れっ、制限時間は二時間」

いきなりスタートの合図だったけれど、テンションが高まったところだったので、その場の皆が一斉に「はい!」と答える。

こうして、勝負の幕が切って落とされた。

※※※

全員が駆け足で魔物スポットに入ると、さっそく闇角ウサギを狩っていく。

「前方に二匹、来たよ」

ステファンが声を上げる。

「遠い方をアンナマリー、近い方をキアランおねがい」

「わかりましたわ!」

「任せとけ!」

リサの合図で、アンナマリーとキアランが詠唱を開始する。

「火の矢<フレイムアロー>」

「火の玉<ファイアボール>」

実力はあるけれど、その分個性も強いメンバーなので、下手したらお互いが邪魔になってしまう。

リサは指示役に回ることにした。

索敵はステファンと、風属性のセオ、ローズに任せてある。

風魔法が使えれば、移動が素早いからだ。

「ちょっと、爆風で見えないわ」

「ちゃんとそっちも倒してるじゃん。こっちの方が効率がいいんだって!」

二匹を瞬殺したけれど、アンナマリーとキアランが言い争いをする。

「角が落ちなきゃ一緒だね。おっと、もう一匹飛び出してきた」

魔物の焦げ跡を確認したセオが隠れていたもう一匹に気づく。

「セオはカルツと交代!」

「交代の風<リプレイス>」

指示を出すと、間髪入れずにセオが魔法を唱える。前にドントタッチミープリンスでローズに使ってもらったものだ。

セオとカルツの位置が瞬時に入れ替わる。

「っ……石つぶて<ロック>!」

突進してきたカルツが盾で見事に受け流すと、すかさず攻撃魔法を唱えた。

石つぶて<ロック>は地の初級魔法で、作り出した石片を対象に飛ばしてダメージを与えるというもの。

そのまま逃げようとした闇角ウサギにカルツの魔法が襲った。

リサも追撃の準備をしていたけれど、必要なさそうだ。

「はずれか」

魔物の倒れたところには、やはり何も残っていない。

「右側の開けた場所に、たくさんいます」

今度は風魔法で身体を浮かせて木の上から索敵してくれていたローズから連絡が入る。

「えっと……」

「俺に任せてくれ」

全員で向かおうと思ったけれど、それをヴィニシスが制する。

頷くと、彼も魔法の詠唱に入った。

「毒の雨<アシッドレイン>」

この魔法は毒の矢をいくつも作り、対象の頭上から矢の雨を降らせて攻撃させるもの。仲間を巻き込むので使いどころが難しいけれど、魔物が固まっている場合には有効だ。

魔物の幾つもの絶命の声がここまで聞こえてくる。

「すごいね、同じ水魔法でも僕とは違う」

「ふん……」

ヴィニシスの魔法に、ステファンが純粋に驚くものの、ライバル視しているヴィニシスは冷たい反応しかしない。

まあ出会ったばかりなので、仕方がない。

「ローズ、ドロップどうかな?」

「うーん……だめみたい」

ヴィニシスの倒してくれた魔物が角を落としていないか確認してもらうも、出なかったようだ。

それにしても……皆でチームを組んで戦っている。

成果は未だに出ていないけれど、リサはわくわくしっぱなしだった。

模擬戦のようなものとはいえ、主要メンバー全員がチームを組んで戦うなんて、前世のゲームではなかった展開だ。

元はパーティメンバーの数と合計レベルが決まっていたので、組みたくても組めなかった。

リサの知らない学園生活が今後もたくさんあると思うと、楽しみでしかたない。

アンナマリーにあの杖、似合うだろうな……絶対欲しいよね。

そのためにも皆でなんとか優勝したい!

「前方に一匹見つけたよ」

「ちょっと、私が実験するから皆は手を出さないで」

さっそく攻撃しようとしたアンナマリーとキアランに言うと、自ら魔法を唱える。

「眩忘の光<ニフライト>」

元々は忘却の魔法で、魔物を退散させたり、短い記憶を消したりする魔法だけれど、弱い魔物は消える。

「光魔法での消滅でもダメみたい」

しかし、やはり魔物が消えた跡には何も残らなかった。

これはこれで宝探しみたいで楽しくなってきた。

ドロップさせるには、特定の条件があるのか、もしくは確率がとても低いか。

「うーん……」

「こっちに一匹来るから倒すぞ」

考え込んでいると、カルツのところに一匹出たらしい。

今度は魔法ではなく、剣で闇角ウサギに斬りかかる。どうせドロップしないだろうけれど、放置しておくのは危ない。

「出たーっ!」

カルツの声に、他のメンバー全員が「えっ?」驚く。

「魔法ではなく、武器で倒すとドロップするのか? いや、そんな話は聞いたことない」

ヴィニシスが口元に手をやり、視線を落として考え込む。

「ゲン担ぎでも、偶然でも、ひとまず、やってみない?」

「そう……ですね。出ればそれでラッキーですし」

ステファンの提案に賛成する。

「カルツとステファンは攻撃をお願いします。他のメンバーは、前衛の補助と索敵を中心に」

「オレも前衛でいける」

セオが腰に下げていた鞘から剣を抜いてみせる。

「ではセオもお願いします。とりあえず……光の防壁<ライトシールド>」

ステファン、カルツ、セオに防御力増加の魔法をかける。

「ステファンにはアンナマリーとローズが、カルツには――――」

あとはメンバーをぱぱっと三チームに分けて、それぞれが周囲の闇角ウサギを狩っていく。

「出たよ!」

「こっちもだね!」

しばらくすると、ステファンとセオからもドロップしたのがわかる。

百パーセントではないけれど、武器で倒せばかなりの確率で出るようだ。

「……偶然だと思うが、分母が少なければ往往にして数値は裏切るものだからな」

リサには呟きの意味がわからないけれど、ヴィニシスなりに納得したらしい。

「この作戦で行きましょう!」

リサが最後の指示を出すと、皆から賛同の意思が返ってくる。

「纏い火<アドフレイム>」

「迅速<スイフト>」

「重力操作<グラビティ>」

前衛が楽になる補助魔法を各々が考えて使い始める。

元が優秀なメンバーなので、討伐速度は一気に上がっていった。