軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【2期】8話 「100年と、1000年と」

なぜかわからないが、最近、皆の様子がおかしい。

私は、緑の果物を澄ました顔でバリバリと口にする仲間たちを、困惑しながら眺めた。あれは確か、2時間しか寿命が伸びないから止めようって言ってたはずなのに……。

私も仲間外れは嫌なので口にしたが、やはり苦い。木の実の渋皮を生で食べた時の味がする。

次。みな、水車でギリギリと背中を伸ばされ、板に張り付けられてぐるぐると回される例の拷問を、顔色1つ変えずに受け始めた。さすがに連日は勘弁してほしかった私は、そばで見守ったり、ぴょんぴょんと跳ねたりして応援した。

命の大切さを知ったから、とか……? いや違うな。それにしては必死さの度合いが違う。

私は、勇者が板にはりつけになって、ぐるぐる回されているのを見ながら、現状の把握に努めた。いったい、何が起こってるの……?

私の隣で、白巫女様が、呆れたように呟いた。

『勇者様って頭いいと思ってたけどそうでもないのかな?』

『いやいや! 勇者様にも、頭がいい時くらいあるんですよ』

幼馴染があらぬ誤解を受けていたので、私はすかさず訂正した。すると、そこに、回され終わった勇者がやってきて、じろりとこちらを睨む。

「おう今こっちに分からないと思って悪口言ってただろ」

「私はフォローしたよ?」

「悪口言ってるじゃねーか」

ふう、と隣に腰を下ろしたので、私はストレートに聞いてみることにした。なぜ急に健康に気を遣い始めたのか。階段を昇るだけで息切れでもしだしたのか。

勇者は、呆れたようにこちらをちらりと見た後、まだぐるぐると回されている2人を遠い目で見て、溜息をついた。

「さーな。なんか、思うところでもあるんじゃねーの」

ぐるぐると回され終わったあと、王女様はどこかに外出し、剣士は神殿の庭で素振りを始めた。剣士の横では、白巫女さんが腕組みをしながら何かを指示している。なにあれ。

全体的に、いろいろ急すぎる。これは何かあったと見るべきでは。でも、健康に今更気を遣う理由なんて……。

ひょっとして。お医者さんにこれまでの不摂生を怒られたとか?

私の頭の中で、診療所でお医者さんに睨まれる剣士と、隣であわあわしている王女様の姿が思い浮かんだ。なぜか、私の中で健康に気を遣わない人として出てきたのは剣士だった。理由は分からない。

「剣士さん。『大丈夫だと思っていた』の典型例として、非常に分かりやすいです」

「うむ」

「うむ、じゃないです」

腕組みをして頷く剣士に、先生は冷たく言い放った。

「生活習慣の反省会を開くなら、議題はかなり豊富ですよ。とりあえず、板にはりつけてぐるぐる回しましょう」

……いや違うな。

うん、これは違う。なら……?

王女様は、最近ずっと部屋にこもっているか、出掛けていく。

剣士は白巫女さんの指示のもと、ひたすら素振り。

勇者は、本を読むことが多くなった。最近は、古代語を教えてほしいと言われたので私が一緒に見ている。ただ、遊びに行くたび、部屋に謎のグッズが増えている気がする。護符とかお守りとか。

みんながおかしくなったのは、私のことなのに私が入れてもらえなかった謎の話し合いの後からだ。何かあった?

あの時、「千年後なんてすごく先ね」みたいなことを王女様が言って……?

……いや、待って。ひょっとして……。

というわけで、勇者と2人で街へ遊びに来た際、ストレートに聞いてみた。

「みんな、まさか千年後まで生きようとしてる? 約束したから?」

ぶはっ! と勇者は口にしていたジュースを盛大に吐き出した。ごめん。あえてタイミングを見計らったわけではない。信じてほしい。

私は、さっきより甘い匂いを増した彼の服を、懸命に拭きながら考える。

ひょっとして、と思った。彼らが頑張っている理由。まさか、まさかなのだけど……と思いながらも、ぶつけてみた感じだと、当たりだったらしい。

それはともかく、うーん。

私の中では、人間が千年も生きないのは常識なわけで。だから、叶ったらいいな、くらいの気持ちだった。でも、どうも長生きの方法はなさそうだし……。みんな一緒にいられるなら、嬉しい、けれど。

それとも、せっかく記念の品を埋めたのに誰も掘り出さないんじゃつまらない、と思っているのかもしれないが、ここには私がいるし。

「千年後の浜辺には、私が行くよ。任せて!」

すると、勇者はくしゃくしゃっと顔をしかめた。目と鼻と口が全部顔の中心に集まった、みたいなすごい顔だった。その表情何。どういう気持ちなの。

「お前さ、人の気持ち、たまにわかんないよな」

「うん今ちょうどそう思ったとこ」

「はー。もうお前さんには困ったもんだわ」

むむ。そう言われるとちょっと釈然としない。理屈としては分かる。つまり、私が1人で約束の場所に行くのが寂しそうに見えるのだろう。

……私の中では、記憶が一緒にいるなら、寂しくはない、と思う。うん。だが、来なくていいよと言われるのも向こうからすると違うのか。

「じゃあ、来なかったら探しに行こうか?」

「待て待て。プレッシャーかけるのもやめろ」

さらに、ぽふんと勇者は私の頭に手を乗せて、ぐりぐりと抑えてきた。身長差が憎い。いきなり伸びてびっくりさせてやろうか。

「それ絶対あの2人の前で言うなよ」

「『俺の前ではいいんだよ』って言うその心は?」

「俺はお前があんま深く考えて喋ってないこと知ってるから。意味深なんだよいちいち」

「だからそんなに気にする必要ないんだけど……というかそろそろ手離してくれる?」

「反省するまでやめませーん」

「……このっ!!!」

ばきばきばきっ!!!!!!!

「うわっ!? いきなり伸びるな!」

その後も、私と勇者は並んで歩いた。

石畳の大通りは人であふれ、通りごとに違う市が開かれている。

「記録の市」の一角で、私は、ひときわ古めかしい机に並べられていた帳面に目をとめた。分厚い革表紙の中央には、古代文字が刻まれている。

なにやら意味ありげに見えるけれど、店主いわく「飾りです、雰囲気ですよ」とのこと。そういえば、日記帳の残りページ、少なかったよね。

試しに開いてみると、白紙の間から新しいページが湧き出すようにすうっと現れ、閉じても厚みは変わらなかった。

少し書き込んでみると、文字は淡い光に溶けて紙に沈んでいく。

うん、これ、いいかも。

一方、勇者は「護符の市」を見て回っていた。

小さな宝石や銀細工がひしめく屋台の前で、じっと何かを選んでいる。

やがて手に取ったのは、指先ほどの小さな青い石をはめ込んだ2組のペンダント。

念じれば、対となる持ち主の相手のいる方角を指し示すのだという。

「……ほら、やる。お揃いな」

照れ隠しのように言う声は、わずかに強張っていた気がした。

私が受け取ると、勇者はそれ以上何も言わなかった。ただ、ちゃんと首に掛けるかどうかだけは気になるらしく、妙にそわそわした目でこちらを見ている。

私はペンダントを首に掛け、軽く石を撫でてみた。

じんわりと、不思議な温もりが指先に残る。

「勇者なのによく迷うもんね。私が探しに行くこと多かったし」

「迷ってませんー。ちょっと広めに見回りに行ってただけですー。……な。だから、俺からのだって、忘れるなよ」

不意に真剣さを増した勇者の顔を見て、私は首を傾げた。

「意味深なんだよ」ってちょっと前に言われたばかりだけど、これは少し意味深では……。いやどういう意味だって言われると、はい。

どっち……? これはどっちの意味なの……? 正直、私にそういう経験がなさすぎて、どっちか全然わからない……。

私が考え込んでいると、勇者は、ぷはっと吹き出した。そして、やたらバシバシと私の背中を叩いてくる。……すっごく痛い。

「何考えこんでるんだよーほれほれ。100年早いっつーの!」

「100年前は生まれてすらなかったくせに……!」

もう怒った。よかろう。やったってことはやられる覚悟があるってことだよね? いや、当然ある。そうでないとおかしい。

私は、さっき買った日記帳で、そっと口元を隠した。小道具として丁度良かったからだ。そして、ゆっくりと目を細める。

「ねえ。私の1000年後が寂しいって言ってくれたけど……寂しくなくなる方法があると思わない?」

「な、なんだよいきなり。目が怖いぞ」

「あなたが子孫を作ればいいの。その子に、孫に、私が色んなお話をしてあげる。これまで見たもの、聞いたもの……。ほら、さっき買った日記帳は、いくらでもページがあるんだから、ちょうどいいよね? 何人いても大丈夫だよ?」

要は、私が勇者一族の守り神的な? 敷地の端っこに、ほこらでも建てさせてくれたら、私、ちょっと狭いところでも寝られるし。物語を聞きたくなったら呼んでくれたら、のそのそ這い出してくるから。

お嫁さんとしては、王女様とか……? あと、白巫女さんは意外に相性いいんじゃないかな。……私? 100年早いらしいので。はい。

私は、勇者に近寄った。耳元で囁こうと思ったらちょっと背が足りなかったので、微妙に伸びて。そして、同じくらいの目線で、そっと目を合わせる。

「ね。そろそろ子供……作っちゃおうか?」

その瞬間、勇者はバターン! と足をひっくり返して勢いよくぶっ倒れた。

覗き込むと、完全に目を回している。ぺちぺち頬を叩いたり、揺らしてみたりしたけど、全然反応がない。仕方がないので背負って連れて帰ろうとしたが、重くて無理だった。足を持って引きずってみたりもしたのだが、どうにもならない。

結局、その後、私が勇者を宿に持って帰るのに、3時間かかった。正確には2時間45分時点で剣士が探しに来てくれなかったら、もっとかかっただろう。彼の友情に、今は感謝したい。

* * * * * * * * * * * *

【7話】逃げる魔法使い実況スレ【永遠の隣を歩く】

231:風の名無しさん

「祭りの折、焼きたての平パンをたいそう喜ぶ」

↑かわいい

240:風の名無しさん

これもう長命種確定でええやろ

244:風の名無しさん

長命種ニキ

大 勝 利

249:風の名無しさん

おいおいおいおい

寿命問題解決で草ァ!

253:風の名無しさん

はい解散!!!!

257:風の名無しさん

前回まで曇ってたやつwwwww

262:風の名無しさん

魔法使いちゃん

寿命たっぷり

ノーダメ

勝ち

267:風の名無しさん

宴の時間だあああああああああああ

271:風の名無しさん

赤飯炊け!!!!!!!!

275:風の名無しさん

祝 寿命問題終了

280:風の名無しさん

これもう実質最終回でええやろ

284:風の名無しさん

王女も剣士も勇者も

安心して未来の話できるやんけ!

288:風の名無しさん

千年後?

余裕余裕www

292:風の名無しさん

曇らせ民

無事死亡

297:風の名無しさん

【速報】長命種ニキに国民栄誉賞授与

301:風の名無しさん

叩いてたやつら出てこいwww

306:風の名無しさん

いや私は最初から信じてましたが?

319:風の名無しさん

長命種なら魔法の寿命コストとか

あってないようなもんで草

無敵ですやん

323:風の名無しさん

もう誰も寿命で曇らなくていいんだ……!

327:風の名無しさん

ハッピーエンド当確でございます!

331:風の名無しさん

……ん?

あれ?

335:風の名無しさん

どうしたの?

339:風の名無しさん

千年後まで生きてるのって

魔法使いちゃんだけ?

348:風の名無しさん

……あっ

352:風の名無しさん

だって仲間みんな死ぬよね

356:風の名無しさん

さっきまでの宴返して

361:風の名無しさん

「宴の日」

365:風の名無しさん

寿命問題、解決どころか

本番開始では?

369:風の名無しさん

長命種だから安心

じゃなくて

長命種だから最後に一人残る

なんだぁ……

374:風の名無しさん

うわああああああああああ

378:風の名無しさん

祭り会場、一瞬で通夜

387:風の名無しさん

千年後の浜辺で魔法使いちゃんだけ立ってる姿.gif

391:風の名無しさん

おいやめろ

409:風の名無しさん

勇者たちの「ずっと一緒」

急に有限になっちゃった……

418:風の名無しさん

長命種確定で救われると思ったやつ

全員まとめて落とされてて草

422:風の名無しさん

王女様が即動くの解釈一致すぎる

426:風の名無しさん

剣士も勇者も別方向に走り出すの

ガチでどうにかする気で泣く

431:風の名無しさん

王女→研究

剣士→白巫女

勇者→世界樹

で全員ルート分岐するの熱い

466:風の名無しさん

この回だけで

ホラーアニメ

ハッピー回

曇らせ回

全部やるな

515:風の名無しさん

赤飯返せ

香典出せ

523:風の名無しさん

長命種ニキ

勝ったのに全然嬉しそうじゃなくて草

草じゃない

笑うな

532:風の名無しさん

いやきっと、解決するはず……!

いろんな方向試すんだろ?

1つくらい成功するだろたぶん!

542:風の名無しさん

3つ成功しないと全員一緒にはいられないんですがそれは

【8話】 逃げる魔法使い実況スレ【100年と、1000年と】

1:風の名無しさん

前回あんな引きで終わっといて

開幕苦い実バリバリは草

5:風の名無しさん

寿命問題への回答が雑すぎる

9:風の名無しさん

2時間しか伸びない実に賭けるな

いやできること全部やるってことだろうが

17:風の名無しさん

魔法使いちゃんまで食ってて草

仲間外れ嫌で食ってるのかわいい

22:風の名無しさん

このPT

追い詰められると健康オタクになる模様

28:風の名無しさん

板に貼られてぐるぐる回される勇者

何回見ても絵面が面白い

39:風の名無しさん

寿命問題に対する人類の回答

苦い実

拷問器具

以上

76:風の名無しさん

で、急に様子のおかしさを真面目に考え始めるの好き

81:風の名無しさん

「みんな、まさか千年後まで生きようとしてる? 約束したから?」

するどい

87:風の名無しさん

勇者のジュース噴射、答え合わせとして満点

92:風の名無しさん

分かりやすすぎる男

103:風の名無しさん

そして魔法使いちゃん、善意で地雷を踏む

109:風の名無しさん

「千年後の浜辺には、私が行くよ! 大丈夫!」

いったい何が大丈夫なのか

120:風の名無しさん

勇者の顔

全部中心に寄ってて草

125:風の名無しさん

「お前さ、人の気持ち、たまにわかんないよな」

ぐう正論

131:風の名無しさん

「うん今ちょうどそう思ったとこ」

137:風の名無しさん

ここレスバだけ互角なの草

143:風の名無しさん

「来なかったら探しに行こうか?」

追撃やめろw

154:風の名無しさん

「それ絶対あの2人の前で言うなよ」

勇者の理解度が高すぎる

確かに絶対曇りそう

160:風の名無しさん

完全に地雷処理班

166:風の名無しさん

頭ぐりぐり

ばきばきばきっ!!!!!!!

急にホラーSE鳴らすな

172:風の名無しさん

勇者「うわっ!?」

視聴者「うわっ!?」

178:風の名無しさん

身長差への回答が物理で草

183:風の名無しさん

その使い方でええんかその能力

189:風の名無しさん

その後しれっと2人で街歩き続行するの好き

195:風の名無しさん

寿命問題の最中に市場デート回始まったんだが?

201:風の名無しさん

日記帳の店、絶対なんかあるやつやん

206:風の名無しさん

「飾りです、雰囲気ですよ」

店主の適当さ好き

212:風の名無しさん

無限日記帳とかいう終盤装備を

さらっと買うな

218:風の名無しさん

一方勇者

お揃いペンダント購入

223:風の名無しさん

「……ほら、やる。お揃いな」

不器用か

229:風の名無しさん

しかも相手の方角わかるやつ

重い重い重い

234:風の名無しさん

離れる前提のアイテム出すな

240:風の名無しさん

「俺からのだって、忘れるなよ」

あれ……なんか湿ってきたな……

246:風の名無しさん

魔法使いちゃんも

あれこれ意味あるやつ?って顔してて草

意味あるやつだよ!!

249:風の名無しさん

勇者がそのまま愛を伝えるのかと思ったら方向転換したの草

逃げるな! 戦え!

251:風の名無しさん

「100年早いっつーの!」

「100年前は生まれてすらなかったくせに……!」

ここ2人の幼馴染感が出てて好き

257:風の名無しさん

口元を帳面で隠して目を細めるの

完全に悪役ムーブでかわいい

263:風の名無しさん

で、何言うかと思ったら

268:風の名無しさん

「あなたが子孫を作ればいいの」

273:風の名無しさん

ど、どういう意味?

まさかそういう……?

いやそんなはず……

クソボケ長命種だし……

307:風の名無しさん

ちょっと伸びて目線合わせるの反則だろ

318:風の名無しさん

「ね。そろそろ子供……作っちゃおうか?」

323:風の名無しさん

!!!!!!!!!!!!

325:風の名無しさん

言い方ぁ!!

329:風の名無しさん

「そろそろ」!?

336:風の名無しさん

伸びてもう大人アピールも忘れない模様

340:風の名無しさん

完全にプロポーズ兼お誘いですやん

381:風の名無しさん

勇者死亡確認

そらそうよ

408:風の名無しさん

前回の

「千年後、一人にしない」

から今回の

「苦い実」「ぐるぐる」「子供作ろう」

情緒ジェットコースターすぎるんよ

444:風の名無しさん

というか今更だが

王女様って国ずっと空けてるけど大丈夫なんすかね……?