軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

38.陛下にお会いしたいところです

グリフォンを離宮へと受け入れることになった私。

ナタリー様たちの使者も、持て余していたグリフォンが私に懐くのを見て、一安心したようだった。

「レティーシア様、グリフォンを引き取っていただきありがとうございます。おかげで私たちも、ナタリー様の望みを叶えることができそうです」

「あら、その言い方ですと、グリフォンを私の元に寄こしたのは、ナタリー様主導なのですか?」

「はい。グリフォンも敬愛できる主と暮らすのがよいだろうと、ナタリー様が直々に命令を下されました」

ナタリー様自らの指示かぁ。

今まではディアーズさん達の操り人形のような印象だったけど、人形使いが舞台を降りた今、ナタリー様も自らの意思で動き始めたのかもしれない。

ナタリー様の使者は、肩の荷を下ろしたような顔で帰っていった。

そしてぐー様も、どこか慌てた様子で森へと去っていく。

残されたのは鎖につながれたグリフォンと、ナタリー様の元でグリフォンの世話係を任されていた使用人が一人。

さっそく世話係から、グリフォンと接する際の注意点を聞いていくことにした。

「このグリフォン、頭に2房の飾り羽が見えるでしょう? オスの外見的特徴です。メスには飾り羽がないか、あってもごく小さく、短いものになっております」

グリフォンを見る。

後頭部から飛び出た飾り羽が、そよそよと風に揺れていた。

オスにのみ飾り羽があるとは、オスの方が派手な羽毛を持つことが多い鳥類を連想する特徴だ。

…………グリフォンって分類的には、鳥類なのか哺乳類なのか謎である。

頭部は猛禽そのものだし、繁殖方法も卵性と聞いているから、鳥類の特徴が優勢なのだろうか?

幻獣である以上、地球の生物学は当てにならないのだろうけど、地味に気になるのだった。

疑問を抱きつつ、グリフォンへと手を伸ばす。

驚かさないよう、そっと首筋を撫でてみると、真っ白な羽毛が掌をくすぐった。

精悍な外見に反して、撫で心地は柔らかで、さらふわとした優しい手触りだ。

狼のもふもふな毛皮と比べると、羽毛は空気をはらみ軽い撫で心地の気がする。

ふわふわと風にそよぐ羽毛は、日光に温められてほんのりと温かい。

グリフォンが少し頭を下げてくれたおかげで、両手で撫で心地を楽しむことができたのだった。

「ありがとう、優しいのね。この子、名前は何というんですか?」

「名前ですが、レティーシア様がお好きな名をつけていただいて大丈夫ですよ。主を見つけたグリフォンは、主から名前を与えられると喜びます」

名前を与えられると喜ぶってことは、しっかりばっちり、名前という概念を理解できてるってことか。

この前、夜に出会った時は狂暴だったけど、本来はとても賢い生き物のようだった。

「名前………オスのグリフォン………………………」

グリリ、だとぐー様と頭文字が被るので却下。

「グリフォン、グリフォン…………フォン。フォンでどうかしら?」

「きゅあぁっ!!」

グリフォン――――――改めフォンが、上機嫌に高い声で鳴いたのだった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

フォンにはとりあえず、入ってきた木箱の近くで過ごしてもらうことにした。

こちらの指示に素直に従い、翼を折りたたんでちょこんと木箱の中に座るフォン。

忠実なその姿は、犬小屋に収まったわんこのような愛らしさがあったけど、馬よりも一回り大きな巨体では少し窮屈そうだ。

できるだけ早く、フォンの新しい住処を作ってあげたいところだ。

魔術を駆使すれば、犬小屋ならぬグリフォン小屋作りはどうにかなりそうだけど…………。

「陛下に許可を取ってからの方がいいわね………」

フォンが入るサイズとなると、人間用の家並の大きさになるはずだ。

私に与えられた離宮とはいえ、陛下にも話を通しておいた方が良さそうだった。

グリフォン小屋の件以外にも、ナタリー様の処遇や、できたらシフォンケーキの感想など、陛下にはお聞きしたい話題が満載だ。

そんな風に思っていたところ――――――――

「レティーシア様、グレンリード陛下からお手紙が参りました」

その日の夕方、王家の紋章である、剣と狼の封蝋が押された手紙が届けられた。

明日の夕方にでも、一度王城にて話がしたいという文面だ。

以心伝心というわけではないだろうけど、渡りに船のお誘いだった。

幸い、明日の夕方なら空いている。

というか基本、夕方以降は基本的に私はフリータイムだ。

昼間は暇じゃないの?と言われるかもしれないが、狼たちをブラッシングする崇高な使命があったりなかったりするのである。

「それに明日の夕方なら、ちょうどいいわね」

明日の昼間には、ある予定があった。

それ即ち――――――――――――

「にゃにゃぁっ!!」

翌日の朝、私の自室にて。

『いざ出陣!!』

と言わんばかりのやる気に満ち溢れた姿で、庭師猫のいちごが鳴き声をあげている。

普段どちらかと言えばテンション低めで、丸まって日向ぼっこをしている様子とは大違いだった。

「なぅなぅな~~~~~~~っ」

「はいはい、いっちゃん、ちょっと待っててね?」

いっちゃん、というのはいちごのあだ名だ。

本名がいちごだから、いっちゃん。とても単純なあだ名のつけ方である。

早く早くと急かすいっちゃんに笑って返しつつ、小さなバスケットを手に立ち上がる。

向かう先はまず、窓辺にある鉢植えたち。

「いっちゃんのおかげで、綺麗に赤く育ったわね」

「にゃにゃっ‼」

その通りだ、と言わんばかりにいっちゃんが鳴き返す。

朝の光を浴び、真紅の宝石のような苺が、瑞々しく美味しそうに輝いている。

私といっちゃん待望の、苺狩りの開幕なのだった。